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【創作】学校なくなっちゃった!(2)第1景「通学路と朝の教室」承前

新着お目汚しを避けるため、日付をさかのぼって公開しています。つかガンガン手直しをする予定です。現にそうしていますし。前回。

目次

前口上&(1) 第1景 通学路と朝の教室

(2) 第1景 通学路と朝の教室 承前:本稿

(3) 第2景 学校なくなっちゃった!

(4) 第3景 ミドルボスのオフィスにて(その1)

(5) 第3景 ミドルボスのオフィスにて(その2)

(6) 第4景 旅の支度

(7) 第5景 謎の友だちと謎の都市へ

(8) 第6景 謎の都市ナゾジャ到着

(9) 第7景 ナゾジャ市広報担当ヤマシマ(その1)

(10) 第7景 ナゾジャ市広報担当ヤマシマ(その2)

(11) 第7景 ナゾジャ市広報担当ヤマシマ(その3)

(12) 第7景 ナゾジャ市広報担当ヤマシマ(その4)

(13) 第7景 ナゾジャ市広報担当ヤマシマ(その5)

(14) 第8景 帰途〔かえりみち〕

(15) 終景 真相(その1)

(16) 終景 真相(その2:完結)

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第1景 通学路と朝の教室(承前)

東島先生「1時間目は国語だ。先週まで芥川龍之介の『杜子春』を読んできた。みんなには何でもいいから芥川龍之介の別の小説を1つ読んで、あらすじをスライドショーにまとめてくるよう宿題を出した。やってきたね?」

生徒たち「はーい」

東島先生「それでは班に分かれて、これから各自5分ずつ発表と質疑応答だ。宿題をやってこなかった子は、こっそり他人の発表を聞くように」

生徒たち(笑)

主人公ミチヒロのナレーション:昔と今の学校の違いは、1人1台タブレットがあるだけじゃないんだ。『主体的・対話的で深い学び』と言って、授業の主体は生徒同士のディスカッションになり、先生の役割はアドバイザーとして議論のテーマを投げたり議論がヘンな方向に行っちゃったときに軌道修正したりすることになったんだって。

ミチヒロ「…ということで、僕は『鼻』を読みました。質問をお願いします」

ミチヒロのナレーション:必ず質問を訊くように言われている。

アルフォンス「イラストがたくさん出てきましたが、生成AIですか?」

ミチヒロ「ネットにフリー素材があったんで使わせてもらいました」

ミチヒロのナレーション:同じ班のアルフォンス君。ご両親が南米出身だけど日本語は僕よりうまいくらいだ。

斉木「小説の内容について質問しなさいよ」

ミチヒロのナレーション:同じ班の斉木さん。

アルフォンス「質問を批判するのはエヌジーだろ?」

斉木「NGなのは意見が出るのをふさぐことでしょ」

ミチヒロ「僕の感想だけど、『杜子春』とこの『鼻』は物語の構造が似てる気がするんだ。『杜子春』は、峨眉山と地獄を巡って元いた洛陽に戻ってくる。『鼻』の禅智内供〔ぜんちないぐ〕というお坊さんは、ヘンな手術で鼻を短くしたけど、けっきょく元の長さに戻ってよかったとなった」

斉木「新海アニメやジブリのアニメにも、そういうの多いよね。世界が大混乱したり、登場人物に呪いがかけられたりして、それを元にもどそうとするの」

アルフォンス「アニメは関係ないだろ」

斉木「あんただって批判してるじゃん」

東島先生「物語の構造とは、面白いところに気がついたね」

ミチヒロのナレーション:各班を回っていた東島先生が口を挟んだ。

東島先生「物語を構造で分類しようという試みは昔から行われているけど、ギリシャ神話の帰国譚というのに始まって、登場人物が冒険の旅に出たり呪いや魔法を元に戻そうとしたりする類型には、実に多くの物語があてはまるんだ」

アルフォンス「僕は『竜』という短編を読んで発表したんですけど、奈良の猿沢池から竜が出て飛び去ってしまうというだけの話でした。解説によると原作の『宇治拾遺物語』では竜は現れなかったというラストだったけど、芥川が改変したって」

東島先生「芥川の独創になる部分はいろんな作品にみられるけど、『竜』に関してはパターンを変えようと試行錯誤したのかも知れない」

町田「私が読んだ『馬の脚』という作品なんですけど」

ミチヒロのナレーション:ここまで静かに聞いていた町田さんが話し始めた。

町田「主人公は戦前の中国にあった日本の商社の社員なんですが、あの世の役人の手違いで一旦死んでしまい、生き返らせてはもらえるのですが、足だけを馬のものと取り換えられてしまうんです」

東島先生「珍しい小説を選んだね。芥川は大人向けの小説もいっぱい書いてるけど、その一つだね」

町田「主人公はその足になじめなくて、不快なことがいっぱいあって、どんどん追いつめられるようにしておかしくなってしまうんですけど、最後に元に戻れるかなと思って読んでいたら、けっきょく奥さんに最後の挨拶を1度だけして行方不明になってしまうんです。とても後味の悪い物語でした」

東島先生「カフカの『変身』という有名な小説があって、それと似ていると言う人が多いね。『変身』は今はちょっと難しいかも知れないけど、そのうち機会があったらぜひ手に取ってみてほしい」

ミチヒロ「元に戻れない物語か。『馬の脚』僕もダウンロードして読んでみてもいいですか?」

東島先生「もちろんだとも! そうやって興味を持った作品があったら、読みっこして感想をぶつけあってほしい。そういうことが、この授業の目的の一つなんだから」

ミチヒロのナレーション:その日、僕は小説をダウンロードしたタブレットを持って帰った。

ミチヒロ母「タブレットをベッドに持っていっちゃダメでしょ。眠れなくなっちゃうじゃない」

ミチヒロ「夜更かししないから心配しないで」

ミチヒロのナレーション:お母さんにはそう言っちゃったけど、僕は遅くまでかけて『馬の脚』を読んだ。ゾクゾクと不安になる物語だった。主人公の奥さんも気の毒だった。芥川って人は、どうしてこんな小説を書いたんだろう?

(この項続く)

追記:

文科省のYouTube貼っていいのかな? 貼っちゃえ!

www.youtube.com

 

『主体的・対話的で深い学び』に関する文科省PDFスライドショー資料へのリンクも貼っちゃえ!

主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善(pdf)

 

芥川龍之介『馬の脚』青空文庫とYouTube朗読、以前も貼ったことあるけどまた貼る。

青空文庫 芥川龍之介 馬の脚

【おやすみ前に聴く朗読】芥川龍之介『馬の脚』 - YouTube

 

続きです。

watto.hatenablog.com

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