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目次
(3) 第2景 学校なくなっちゃった!:本稿
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第2景 学校なくなっちゃった!
ミチヒロのナレーションあるいは独白:次の朝、思った通り寝坊した
ミチヒロ、ダイニングに駆け込んでくる。
ミチヒロ「おはよう。遅刻しちゃう! ロールパン1つだけちょうだい」
ミチヒロ母「遅刻って、どこに行くの?」
ミチヒロ「学校に決まってるだろ。いつも遅刻するなってうるさいのに」
ミチヒロ父「きょうは1人かい?」
ミチヒロ「あれ、お父さんまだいるの? いつも早く出ていくのに。それに1人って何? うち一人っ子だよ」
ミチヒロ、通学路を小走りに駆ける。
ミチヒロの独白:ギリギリ遅刻しないで済むかな? あれ、今朝はシャッターの下りてる店が多いな。どこのシャッターもなんだか古ぼけてるな。こんなだったっけ? あれれ、自販機の商品、見たことのないものばかりだ。空き地まである。あっ、また空き地。まあいいや、気にしていたら間に合わない。
ミチヒロ、ショッピングモールの広い駐車場の前に出る。
ミチヒロ「ここ、どこ?」
ミチヒロ、一瞬ぽかんと目と口を開ける。そして振り返る。
ミチヒロ「道を間違えた? そんなはずない」
駐車場のほうにゆっくり歩きだす。車はほとんど停まってない。
ショッピングモールの建物に駆けよる。
ミチヒロ「『開店、10:00a.m.から』」
ショッピングモールの自動ドア前に立つ。ドアは開かない。ドアをちょっと手で動かしてみる。びくともしない。
建物に沿って歩く。建物は大きい。
ミチヒロ「このへんは町工場と倉庫があったはずなのに…ということは、やっぱり学校はここだったんだ。学校、なくなっちゃった?」
駐車場の隅に守衛ボックスがあり、人がいるのを見つける。ミチヒロ、守衛ボックスに駆けよる。
ミチヒロ「すみません、ここに小学校ありませんでしたか?」
守衛、うさん臭げにミチヒロを見る「なんだいそれは?」
ミチヒロ「大中中央小学校! 大中市立大中中央小学校」
守衛「ここは10年前からこうだよ」
ミチヒロ「10年前?」
守衛はミチヒロから視線を外し、以後、無言である。
ミチヒロ、やるかたなくいっときそこに佇み、やがて自宅にきびすを返す。
ミチヒロの独白:学校、1晩でなくなっちゃった! 厚森くんは、アルフォンスくんは、斉木さんは、町田さんは、クラスのみんなは、どこに行っちゃったんだろう? 東島先生は、どうしているんだろう?
大中小学校が、なかったわけないよね。低学年の頃は「おなかしょうがっこう」と呼んでいた。中学年になると「だいちゅうしょう」なんて呼ぶようになった。いまは飽きたからそんな呼び方はしない。ロッカーにタブレットの充電器の設置工事をやってたことも、覚えている。そうそう、タブレット返さなきゃいけないのに!
ミチヒロ、自宅のリビングに駆け込む。
ミチヒロ「お母さん、学校なくなっちゃった! 学校なくなっちゃった!」
ミチヒロの母「どうしたの? 真っ青じゃない」
ミチヒロ「学校が一晩でなくなっちゃうなんてこと、あっていいの?」
ミチヒロ母「そんなこと、あるわけないでしょ」
ミチヒロ「3階建ての建物と運動場と体育館とプールがあって、1年生から6年生までの生徒と先生と職員が全部で400人もいる小学校が、いきなりなくなるなんてこと、あるわけないよね」
ミチヒロ母「何を言ってるの?」
ミチヒロ「ああ、どうしたらいいんだろう? 先生はどこにいるんだろう? 友だちは今どうしてるんだろう?」
ミチヒロ母「ミドルボスにでも訊いてみたら?」
ミチヒロ「ミドルボス?」
ミチヒロ母「あんたが最近よく『ラスボスじゃないからミドルボスだ』って言ってる人」
ミチヒロ独白:ああ、なんだかそんな人がいたような気がした。だけど彼に会いに行くには、電車に乗らなきゃいけなかったはずだ。
ミチヒロ母「交通系カードくらい持ってるでしょ」
ミチヒロ独白:あれ、なんで知られちゃったの? 声に出したかな。
ミチヒロ、ポケットをさぐり財布を取り出す。2つ折りコンパクトだが大人持ちの黒い皮財布だ。
ミチヒロ独白:あった! なにこれ、お金もいっぱい入ってる。こんなに! お母さんに知られると取り上げられたらイヤだから、黙ってようっと。
ミチヒロ「じゃ、ちょっとそのミドルボスのところに行ってくる」
ミチヒロ独白:ランドセルどうしよう? 持っていこう!
(この項つづく)
追記:
続きです
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