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【創作】学校なくなっちゃった!(4)第3景「ミドルボスのオフィスにて」(その1)

新着お目汚しを避けるため、日付をさかのぼって公開しています。

目次

前口上&(1) 第1景 通学路と朝の教室

(2) 第1景 通学路と朝の教室 承前

(3) 第2景 学校なくなっちゃった!

(4) 第3景 ミドルボスのオフィスにて(その1):本稿

(5) 第3景 ミドルボスのオフィスにて(その2)

(6) 第4景 旅の支度

(7) 第5景 謎の友だちと謎の都市へ

(8) 第6景 謎の都市ナゾジャ到着

(9) 第7景 ナゾジャ市広報担当ヤマシマ(その1)

(10) 第7景 ナゾジャ市広報担当ヤマシマ(その2)

(11) 第7景 ナゾジャ市広報担当ヤマシマ(その3)

(12) 第7景 ナゾジャ市広報担当ヤマシマ(その4)

(13) 第7景 ナゾジャ市広報担当ヤマシマ(その5)

(14) 第8景 帰途〔かえりみち〕

(15) 終景 真相(その1)

(16) 終景 真相(その2:完結)

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第3景 ミドルボスのオフィスにて(その1)

ミチヒロの独白:ミドルボスと会ったって、なんとかなりそうな気はぜんぜんしないけど、何かしないではいられなかった。いてもたってもいられない、というやつだ。

ミチヒロ、電車に乗り都心の駅で降りる。大きなビルに歩み入り、ドアガラスに「秘密結社」という社名フィルムの貼ってあるフロアに入っていく。

ミチヒロ「(社名をチラ見しながら独白)公然と『秘密結社』と名乗るってヘンだよね」

ミチヒロ「(受付に)おはようございます。ミドルボスに会いたいんですが」

受付はニチアサ敵組織の戦闘員のような覆面をかぶっているが、対応はいたって丁寧である。

受付「猪飼先生おはようございます。何時からのアポイントですか?」

ミチヒロ「えっ、なんでボクの名前を知ってるの? それにボク先生じゃない。生徒だよ。アポ、とってないです」

受付「少しお待ちください」

受付、内線の受話器を取り、話をする。

受付「会えるそうなので、オフィスにお越しください」

ミチヒロ「ありがとう」

エレベーターに乗りフロアを移動する。

ミチヒロ「(ドアの前で)猪飼ミチヒロです」

ミドルボス「開いてるよ。入りたまえ」

オフィスの応接コーナーに招かれる。スーツ姿の中年男であるミドルボスと、もう一人サンタクロースとピエロを混ぜたような奇妙な格好をした人物がいる。

ミドルボス「ちょうどよかった。大事なお客さんのカーミィ・サッマーと話をしていたところだ」

ミチヒロ「カーミィ・サッマー? 神様なの?」

ミドルボス「そんなようなものだ。失礼のないように」

カーミィ「神様なんかであるものか」

ミチヒロ「初めまして、猪飼ミチヒロと言います。大中市立大中中央小学校の6年生です」

カーミィ「猪飼くんか。よろしく」

カーミィ、名刺を出そうとする。

ミチヒロ「(あわてて)名刺持ってないんです、ごめんなさい」

ミドルボス「駆け出しだがなかなか才能のある子なので、私がじきじきに担当しています」

ミチヒロ「(独白)才能があるって言われちゃった。照れるなぁ。でも何の才能なんだ?」

だがミチヒロの独白はカーミィとミドルボスに見え透いていて、2人は「なんだこいつ?」という視線をミチヒロに向ける。

ミチヒロ「あっ、すみませんでした! 実はミドルボスに相談したいことがあって…お邪魔でしたか?」

カーミィ「(ミドルボスに)まあ椅子くらい勧めてあげて」

ミドルボス「そうでした。猪飼くん、掛けて」

ミチヒロ、応接セットの空いている椅子に座る。

ミドルボス「好きなものを食べなさい」

ミチヒロの周りに、市販のお菓子のパッケージが降ってくる。

ミチヒロ「(驚く)わっ!」

ミドルボス「昔だったら女子社員にお茶を出してもらうところだが、今どきは世間の受けがよくないから変わりつつあるのでね」

ミチヒロ「ボクは子どもだから嬉しいですけど、大人はいいんですか?」

ミドルボス「大人だってお菓子は好きさ。今はお菓子ストッカーというのが置いてあるオフィスが増えている」

ミチヒロ「じゃ、このチョコバー貰います」

チョコバーを手に取る。他のお菓子は、一旦中空に浮かんで消える。ミチヒロ、ちょっと左右を見て、おずおずとチョコバーを剥いて食べる。

ミドルボス「猪飼くんの相談というのはすぐあとで受けるとして、まずはカーミィ・サッマーの要望を聞いてくれるかね」

ミチヒロ「はい」

カーミィ「ナゾジャ市というところを知っているかね? わがカーミィ王国の本拠地が、そこにある」

ミチヒロ「もちろん知ってますよ。日本の真ん中にある人口200万の大都市ですから」

ミドルボス「(小声で)生意気な口を利かないように」

ミチヒロ「ナゾジャ市を知らないほうがおかしいでしょ」

カーミィ「ところが『謎の都市ナゾジャ』と言われている。文化的発信力が弱いからだ」

ミチヒロ「なんですかそれ?」

カーミィ「ナゾジャには、めぼしいご当地ソングがない。ナゾジャを舞台とした有名なドラマも、思いつかない」

ミチヒロ「(興味なさそうに)はぁ」

カーミィ「ナゾジャ市のあるアイタタ県全域に広げても、事情はあまり変わらない。隣のギャフ県には、なんとかブルースとかなんとか慕情とか全国的なヒット曲があるのに」

ミチヒロ「すごく古い話をしてませんか?」

カーミィ「アニメの聖地もない。ギャフ県にはきみのかたちとかこえのなわとかひょうか高いものがいっぱいあってな」

ミチヒロ「少し新しくなったけど、小学生にはつらいです」

オフィスとつぜん暗くなり、ミラーボールが回転し始める。

中空からカラオケ機材が現れ、カーミィ・サッマーの前にセットされる。

カーミィ・サッマー、マイクを握り、わけのわからない歌を熱唱し始める。

「ヨコハマの たそがれは 歌になるけれど

 ナゾジャの たそがれは 歌にならない

 オオサカの海は 悲しい 色やけど

 ナゾジャの ガーデン埠頭には ゴミが浮いてる」

ミチヒロの独白:「聞いたことのあるメロディーと聞いたことのないメロディーが混じってる」

「なぜかナゾジャには  歌がない

 ニャンニャンニャンだが知らないけれども 歌がない

 たまにあっても 東京がだめなら  ナゾジャがあるさと

 いうやつばかり」

ミチヒロの独白:「なんだこの転調を繰り返すコード進行?」

「ひじょ~にさびしい うた~を作ろう

 そしてできたのが この歌♪」

ミドルボス「(小声で)拍手をせんか」

ミチヒロ、げんなりした顔で拍手をする。

カーミィ・サッマー2コーラス目を謳い続ける。

ミチヒロ「(独白)続くんですか」

「キョウト 大原三千院 恋に疲れた女がいるけど

 ナゾジャの 大須観音には おばあちゃんがいる

 ナガサキから船に乗って コウベに着くけど

 ナゾジャから船に乗ったら ヒマナ島に着いた

 なぜかナゾジャには 歌がない

 ニャンニャンニャンニャン泣いても 歌がない

 たまにあっても トーキョーはまーあかん汚れとるとろくさい病気が流行っとる

 誰も知~らない~」

ミチヒロ「つボイノリオさんのファンが怒りますよ」

「ひじょ~に悲しい うた~を作ろう

 そしてできたのが この歌♪」

ミドルボス「だがヒットしなかった」

ミチヒロ「(再びげんなりした顔で拍手をしながら)努力の方向が間違ってるような気がするんですが…」

(この項つづく)

追記:

続きです

www.watto.nagoya

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