新着お目汚しを避けるため、日付をさかのぼって公開しています、と言いつつなにこれ? 日付だけは追いついてしまった。たぶんまた遅れるだろうけど。
目次
(6) 第4景 旅の支度:本稿
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第4景と書いちゃったけど、場所は引き続きミドルボスのオフィスである。
第4景 旅の支度
中空に浮かんだコンテナハウス勉強部屋も、ぱっと消える。
ミドルボス「まずはナゾジャ市広報担当へ、取材依頼のメールを出さなければならない。それも猪飼くんの仕事だ」
ミチヒロ「ボクがやるんですか?」
ミチヒロ椅子の横に置いたランドセルがふわりと浮かび上がり、中からタブレットとキーボードが出てきて、応接セットのテーブルの上に設置される。
ミチヒロ「ああっ、学校と自宅以外でタブレットを出しちゃいけないのに」
ミドルボス「送信はうちのメアドを使うが、本文は取材者自身が書いた方がやりやすいだろう。例文は検索すればいくらでも出てくることは、知らないはずあるまい」
ミチヒロ「なんて書けばいいんですか? 学校が1夜にしてなくなっちゃうことなんて、あるんですかと単刀直入に書けばいいんですか?」
ミドルボス「いきなりそう書いたらヘンな奴だと思われるだろうから、ナゾジャ市の学校の統廃合の歴史を取材したいと、遠回しに書き始めたらどうかね?」
ミチヒロ、面白くない顔をしながらキーボードに向かう。
カーミィ「今の小学生はすごいね。タッチタイピングを当たり前にこなすのか」
ミチヒロ「低学年の頃からやってるから、みんなできますよ」
ミドルボス「そうそう、小学校の今と昔の違いも質問すると面白そうだね。ナゾジャ市では一人一台の端末がいつから始まったかとか、それに伴う授業内容の変化とか」
ミチヒロ「ミドルボス、まるで昨日のうちの授業を見ていたような口ぶりですね」
カーミィ「ますますすごい。今の学校は、年寄りの知らないことばっかりだ」
ミチヒロ「(タブレットを持ち上げ、読み上げる)拝啓、突然のメール失礼します。私は大中市立大中小学校6年の猪飼道大と申します。秘密結社の委託を受けて、取材の申し込みをしたくご連絡しました。以下の内容につき、ご対応いただくことは可能でしょうか? もし可能であれば。担当者さまのご都合のよい日時を何通りかご教示いただけましたら、誠に幸いに存じます…」
カーミィ「もうできてしまったのか!」
ミドルボス「秘書部門のチェックを経て送信するので、文書ファイルを共有フォルダーにドロップしてくれ」
ミチヒロ、タブレットを操作する。
カーミィ「いやはや、びっくりの連続だ。これは私たちも、猪飼くんにできるだけの力を貸してあげなければなるまい」
ミドルボス「もちろんです。君に3つのしもべを与えよう」
ミチヒロ「ものすごく古いマンガで、同じ名前のキャラクターが出てきたはずですが」
ミドルボス「他に思いつかなかった。数詞は一つ、二つしかありえないし」
ミチヒロのタブレットが宙に浮かぶ。
ミチヒロ「わわわ、壊しちゃいけないのに!」
タブレットが大小2つに分裂し、本体は四角だが羽の生えた小鳥のようなモノと、セサミストリートのクッキーモンスターの頭だけのようなモノに変化する。どちらもとぼけた眠そうな目つきをしている。
ミドルボス「あとで元に戻してあげるから心配するな。まずは秘書インコ」
小鳥のようなモノが、ミチヒロの周りを飛び回り、肩に止まる。
秘書インコ「初めまして。初めまして」
ミドルボス「普通の言葉で質問すれば、なんでも答えてくれる。ただし答えの内容が正しいとは限らないから注意が必要だ。それから電話やデジカメ、ビデオカメラ、録音機の機能も持っている」
ミチヒロ「スマホみたいなものですね」
カーミィとミドルボス、顔を見合わせて「あっさり言っちゃった」
ミドルボス「次にビスケットバッグ。ビスケットを与えると、いろいろ便利なものに変身する」
ミチヒロ「ビスケットって何ですか?」
ミドルボス「猪飼くんの元気のエネルギーだ。先に一つだけ、使い方を教えておこう。一時的に秘書インコと再合体させる必要があるのだが…」
ビスケットバッグ、人の目の高さに浮かび上がる。秘書インコ、ビスケットバッグの頭に止まる。そして真っ白でノッペラボウの、細身でのっぽのマネキンのような形に変化する。
ミドルボス「変身形態の一つ、ナナシャクさまだ」
ナナシャクさま「(うやうやしくミチヒロたちに一礼して)ナナシャクと申します。ナゾジャ市の案内を承ります」
ミチヒロ「ああ、どうもよろしく」
ナナシャクさま「機械ですから、お気遣いはご不要です」
ミチヒロ「チャットGPT相手にだって『ありがとう』くらい言ってますよ」
カーミィとミドルボス「また言っちゃった」
ナナシャクさま、分裂して秘書インコとビスケットバッグに戻る。
ミチヒロ「秘書インコとビスケットバッグ、それにナナシャクさまで3つですか?」
ミドルボス「ナナシャクさまは変身だからノーカンだ。もう一つ、『みじかいりゅう』が君たちをナゾジャ市に連れて行ってくれる。だが みじかいりゅう はオフィスには入れない。ビルの表で待ってもらっている」
秘書インコ「ナゾジャ市広報部から返信! ナゾジャ市広報部から返信」
ミドルボス「早いね(ビスケットバッグに)タブレットに戻りなさい」
ミチヒロ「もうっ、他人に使わせちゃいけないのに」
ミドルボス「(タブレットを見ながら)明日の午前中にも取材を受けてくれるそうだ。今晩ナゾジャ市に一泊するということで、これから出発してくれないかね? 宿は秘密結社で手配する」
ミチヒロ「学校から帰ってるかもしれない近所の友だちのところに行くのはどうなったんですか?」
ミドルボス「それはいつでもできるだろう」
ミチヒロ「じゃあ、せめてお母さんに電話だけさせてください」
タブレットが再びビスケットバッグと秘書インコに分裂する。ミチヒロ、秘書インコを握って自宅に電話する。
ミチヒロ「もしもし、お母さん? ミチヒロだけど急な出張が決まったから、今夜は帰れないけどいい? 出張? ボクは何を言ってるんだろう? お母さん、あっさり『いい』って」
ミドルボス「では みじかいりゅう のところに行ってもらおう。猪飼くんの元気のエネルギーで動くのは他のしもべたちと同じだが、消費エネルギーが桁違いだから気をつけるんだぞ」
ミチヒロ「気をつけるって、どう気をつければいいんですか?」
ミドルボス「元気のエネルギーを使い果たしたら、バテバテになって動けなくなってしまうからな」
追記:
続きです。
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