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(11) 第7景 ナゾジャ市広報担当ヤマシマ(その3):本稿
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(11)第7景 ナゾジャ市広報担当ヤマシマ(その3)
ヤマシマ広報担当「『情報教育』『教科指導における情報通信技術の活用』『校務の情報化』、いずれも具体的テーマは多岐にわたり詳しい内容に立ち入る余裕はありませんが、ご参考のため一つだけ『教科指導における情報通信技術の活用』に関してSAMR〔セイマー〕モデルという考え方をご紹介します」
ヤマシマ、ディスプレイに表を映し出す。画面を4分割して上から順に…
R:Redefinition〔リディフィニション〕:再定義
M:Modification〔モディフィケーション〕:変形
A:Augumentation〔オーギュメンテーション〕:拡大
S:Substitution〔サブスティテューション〕:代替
と、書かれている。
ヤマシマ「授業でICTを活用するのにあたって、『S:代替』は従来ツールの単に置き換えを、『A:拡大』は新たな機能をつけ加えることを意味します」
ミチヒロ「英語やってると言っちゃったけど、さすがについていけないや」
ヤマシマ「ごめんなさい、英単語は聞き流してください。代替というのは、例えば昔ながらのOHPの代わりにディスプレイを使うようなことですね。拡大とは、OHPではできなかったデジタルデータとしての保存や他のメディアからや他のメディアへのコピー&ペーストです。さらに進んで『M:変形』となると、例えば生徒がリアルタイムで画像や動画を貼り付けたカードを共同編集できるようになることです。ナゾジャ市ではロイロノートというツールを使っています」
マコト「うちもロイロノートです」
ヤマシマ「最後の『R:再定義』は、それまで全くできなかったことが新たにできるようになることで、例えば各種遠隔会議ソフトにより、学校の垣根を超え他校と合同授業をしたり、専門家に問い合わせたりできるようになることでしょうか。ナゾジャ市ではMicrosoft Teams〔マイクロソフト・チームス〕を使っています」
ミチヒロ「TeamsとZoom〔ズーム〕を使ったことがあるけど、あんまり意識したことなかったです」
ヤマシマ「この機会に、行政という仕事の特殊性について、ぜひ説明させていただきたく存じます。行政は全体の奉仕者で、多数者と少数者の両方の満足を追求しなければなりません」
ミチヒロ「営利を目的とする民間企業のような『うちの顧客ではない』という切り捨てはできない、ということでしょうか」
マコト「逆に少数者の支援・救済を目的とするNGO、NPOとも違うということですね」
ヤマシマ「そうです。そして、多数者と少数者に割く予算やマンパワー、まとめてリソースと呼ばせていただきますが、それを一人当たりに換算すると、圧倒的な差が出てしまうのです」
ミチヒロ「だけどボクたち私たちの誰もが、いつも多数者であるわけでなく、ある属性では多数者であっても別の属性では少数者であることが、ほとんどなんですよね」
ヤマシマ「そうです。そこで行政においてはユニバーサルデザインということが、とりわけよく言われます。少数者に配慮することによって、多数者も不利益を被らないということです。ICTに話を戻すと、ウェブデザインで色覚障害を持つ方、昔の言葉で言う『色盲』や『色弱』の方に配慮して、彩度すなわち色合いではなく明度すなわち明暗によって文字やデザインを区別することは、正常な色覚を持つ人にとっても不利益にはなりません。またそのような配慮を行うことが、リソースの節約にも直結します」
マコト「ユニバーサルデザインは、ICTだけでなく街角の表示や標識にも適用されているんですね」
ヤマシマ「その通りです。色覚障害者は日本人では男性の20人に1 人、女性では500人に1人の割合でいるそうです。ナゾジャ市のような人口の多い都市では、無視できる数字になりません」
ミチヒロ「(秘書インコに)計算して。人口200万人、男女同数として、男性の20 人に1人、女性の500人に1人だと合計何人?
秘書インコ「5万2千人! 5万2千人!」
ミチヒロ「地方都市と変わらない!」
ヤマシマ「『多数者の利便と少数者への配慮の両立』と『誰もがときに多数者でときに少数者』を示す事例として、教育とICTから離れますが、アイタタ県警の取り組みも紹介したいと思います。アイタタ県では交通事故死者2003年から2018年まで16年連続全国都道府県ワーストという不名誉な記録を解消するため、さまざまな取り組みを行ってきました。その1つとしてナゾジャ市内では青信号の代わりに直進信号↑と右折信号→を点灯させる『右折分離信号』を増やしています」
ミチヒロ「なんのために、そんなことをするんですか?」
ヤマシマ「通常の青信号では対向車がいないとき右折できますが、車の切れ目に急いで右折した先の横断歩道にたまたま歩行者がいたとき、歩行者をはねる事故が少なくありませんでした。そこで直進信号点灯中は右折を禁じ、右折側道路の歩行者信号が赤になった時だけ右折信号で右折できるようにすることにより、事故数を減らすことを試みているのです」
ミチヒロ「ああ、なるほど」
ヤマシマ「ただし待ち時間が長くなるため、渋滞が若干増えたというデータもあります。このほか左折時の歩行者巻き込みを予防するため、直進可と左折可のタイミングをずらすことも試みられています。これらの場合、多数者とはほとんどの通行車や歩行者で、少数者とはタイミング悪く加害者や被害者になる可能性のあった方々です」
マコト「確かにそうですね」
ヤマシマ「少数者と言いながら、もっと大きな割合になる人たちは、他にもいます。ここからは、性教育や児童虐待などデリケートな話題になります。もしご希望でなければ、ここで中断することもできますが」
ミチヒロ「続けてください、お願い。マコトは?」
マコト「もちろん続けて」
ヤマシマ「この何十年かで世の中で生じた劇的な変化はたくさんありますが、性的少数者、LGBTの方々の存在が社会的に認知されたことは、特筆すべきことだと思います。性的少数者の割合は調査によって大きな差がありますが、10人に1人というデータが多いです」
ミチヒロ「左利きの人の割合とほぼ変わらないと聞いたことがあります」
ヤマシマ「性的少数者の人権も性的多数者の人権と同様に配慮されなければならないことは、現代の価値基準においては当然のことですが、そのような考えが定着したのは最近の数十年にすぎず、それ以前は性的少数者は奇異の目や嘲笑の対象となってきたというつらい現実がありました」
マコト「昔を回顧したテレビ番組が炎上したことがありましたね」
ヤマシマ「これも一例ですが性的少数者自身の望まぬそれの暴露、いわゆるアウティングは、社会人のみならず学校においても、当事者を深く傷つけ場合によっては自死に至らしめる深刻な事態を生じかねません。SNSが身近になったことを考えると、なおさらです。そのような事態を未然に防ぐため、適切な指導・教育を行うことは、喫緊の課題と言えます」
ミチヒロ「それっていじめ、虐待以外の何ものでもないです」
ヤマシマ「虐待といえば、やはり近年明らかになった、恐るべき現実があります」
追記:
参考サイト
「SAMRモデル」とは?【知っておきたい教育用語】|みんなの教育技術
「右折分離」信号 愛知で急増中 9→21に [愛知県]:朝日新聞デジタル
アウティングとは?意味・事例・カミングアウトとの違い・問題点・行為者の法的責任などを分かりやすく解説!|契約ウォッチ
続きです。
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