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【創作】学校なくなっちゃった!(16)終景「真相」(その2:完結)

このシリーズでは「新着お目汚しを避けるため、日付をさかのぼって公開しています」というのを決まり文句にしていますが、前回は手違いでリアルタイムで公開してしまいました。つか未完成稿を公開してしまいました(今は直ってます)。大変失礼しました。目次、作成しました。過去記事にさかのぼって反映させてます。

目次

前口上&(1) 第1景 通学路と朝の教室

(2) 第1景 通学路と朝の教室」承前

(3) 第2景 学校なくなっちゃった!

(4) 第3景 ミドルボスのオフィスにて(その1)

(5) 第3景 ミドルボスのオフィスにて(その2)

(6) 第4景 旅の支度

(7) 第5景 謎の友だちと謎の都市へ

(8) 第6景 謎の都市ナゾジャ到着

(9) 第7景 ナゾジャ市広報担当ヤマシマ(その1)

(10) 第7景 ナゾジャ市広報担当ヤマシマ(その2)

(11) 第7景 ナゾジャ市広報担当ヤマシマ(その3)

(12) 第7景 ナゾジャ市広報担当ヤマシマ(その4)

(13) 第7景 ナゾジャ市広報担当ヤマシマ(その5)

(14) 第8景 帰途〔かえりみち〕

(15) 終景 真相(その1)

(16) 終景 真相(その2:完結):本稿

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終景 真相(その2)

契約書の交換が終わる。

裵デスク「これからもよろしく」

道大「こちらこそです」

裵デスク「しかし、この際だから言わせてもらうが、私がモデルと思われる、このミドルボスってキャラ、ひどいね。スポンサーにペコペコと、まるで米つきバッタだ」

道大「失礼しました。キャラは立てなきゃならないので。実物は、もっとひどいです」

裵デスク「こらっ」

真琴「私も言っちゃおっと。『第8景 帰途〔かえりみち〕』ラストの『マコトの姿を見たのは、これが最後だった』って、ウソだよね」

道大「ウソじゃないさ。夢の中のマコトの姿を見たのは、本当にこれが最後だったんだ。言いたかっただけだけど」

真琴「言いたかったと言えば、そのちょっと前の『ボクからも、ちょっとだけ言っていい?』ってのも、本当に私に言いたかったことなんでしょ」

真琴、皮肉っぽく笑いながら…

真琴「言ってやる~! 寝ぐせ直せ! パジャマは脱いだら畳め! 歯は3分以上かけてぜんぶ磨け! 箸くらい、ちゃんと持て~!」

道大「熟年離婚してやる」

裵デスク「はいはい『仲よき事は美しき哉』。仲むつまじいのはいいけど、うちに帰ってからやってくれ」

 

場面変わって、株式会社秘密結社の入っているビルの出口。ドアガラスに貼ってある文字は『株式会社 秘密結社』。『株式会社』が付け加わっているところだけ、夢の中と違っている。

真琴「『株式会社 秘密結社』ってヘンな名前」

道大「大手出版社は、よく考えるとヘンな名前のところが多いよ」

真琴「受付に戦闘員いないじゃん」

道大「いるかそんなもん。どこもインターホンが置いてあるだけだ」

真琴「なんだつまんない」

道大「現実ではないファンタジーゾーンに足を踏み入れたことを最初に示す、ボクの中ではわりと重要なシーンだったんだ」

真琴「あ、怪人が出てきた」

道大「えっ、どこ?」

真琴「うそぴょん」

道大「ヘンなヤツさ加減では、絶対人のこと言えないぞ」

 

道大と真琴、ビルの前のパーキングに停めてある自家用車に乗り込む。車体のカラーは みじかいりゅう と同じで、ヘッドライトの形状が みじかいりゅう の目の形とそっくりである。

真琴「これは私たちのマイカーだけど、みじかいりゅう はレンタカー、秘書インコと秘書ブンチョウはスマホ、ビスケットバッグはノートパソコン、か」

道大「伏線の回収してるし」

真琴「伏線って言葉は今どきありふれてるけど、物語の中で伏線って言っちゃっていいの?」

道大「いいんじゃない? ところで伏線といえば、どうしても回収しておかなければならない伏線が、もう一つあるんだ。真琴の出番はないけど、いいよね」

真琴「ん。私、そこまで出しゃばりじゃないよ」

 

場面が変わる。バーティ―会場の入り口。『大中中央小学校 同窓会 様』の立て札が立っている。

大人の姿になった厚森「よう、猪飼」

道大「厚森くん、幹事をやってくれたみんな、ありがとう。ボクのわがままで同窓会をやるんだから、本来だったら言い出しっペのボクが幹事を買って出なきゃならないのに」

大人になった同級生1「猪飼が大中中央小学校を題材に小説を書いてくれて、それがきっかけで同窓会をやることが決まったんだから、猪飼が主賓みたいなものだ。気にするな」

道大「そう言ってもらえると気が楽になるよ」

大人になった同級生2「そのかわりスピーチ頼むぜ」

パーティー会場。演壇に道大が立つ。

道大「それでは大中中央小学校同窓会を始めます。こんなに集まってくれて、本当にありがとう。学校の統廃合計画は、実はボクたちの在学中から進行していたことは、卒業してから初めて知りました。みんな知ってた? 学校はボクらの卒業後ほどなくなくなっちゃたけど、跡地はショッピングセンターになっちゃったけど、大中中央小学校の姿はボクたちの記憶の中で、いつまでも昔のままでありつづけると信じています。それでは乾杯のご用意を…」

出席者、乾杯の用意をする。

道大「乾杯」

出席者たち「乾杯」

談笑が始まる。

道大「アルフォンスくん、斉木さん、お久しぶり。結婚したんだってね」

アルフォンス「ずいぶん前だよ。道大のところも、別姓だって?」

道大「うん、選べるようになったら、自然に別姓を選んだ」

斉木「うちは選べるようになる前だったんだけど、日本国籍者と外国籍者が結婚する場合は、もともと民法で同姓・別姓が選べるようになっていたんだよ。それがおかしい、法の下の平等に反するから日本人どうしても別姓を選べるようにすべきだという裁判があったんだけど、最高裁まで行ってなぜか負けちゃった」

アルフォンス「もっとおかしいことは、ブラジルは2023年まで国籍離脱を認めていなかったんだ。ということは、ブラジル出身者が日本国籍を取得したら、自動的に2重国籍になっていたということだ。日本国籍者と2重国籍者が結婚したら、同姓を強制する条文と別姓を認める条文の、どちらが適用されても矛盾にならないか?」

道大「世の中あっという間に変わることと、いつまでたっても変わらないことがあるよね」

斉木「ところで猪飼さんのお子さんの姓は?」

道大「上の子がボクの姓、下の子が妻の姓。適当に決めた。成人のときに好きな方を選んでもらう予定」

アルフォンス「もうずいぶん大きいんだろ」

道大「そろそろ大中中央小学校が廃校になった時の学年に近づきつつある。よく子どもが生まれると、特に学校に入ると、自分の人生をリピートしているようだと言われるけど、世の中の変化が激しくて面食らうことばっかりだ」

アルフォンス「まったく。俺たちが小さい頃は、カセットテープが現役だったしスマホやタブレットはまだなかった」

道大「(スマホをちょっといじって)初代iPodが2001年、iPhoneが2007年、iPadは2010年だって。ボクは時間の自由がきく職業だから、授業参観はできるだけ出るようにして、先生方ともお話するよう心がけてきたけど、いちばん大変なのは先生方だと思うよ。教室にスマホ充電器とWi-Fiを設置する工事が始まったのは、うちの子たちが低学年のときだったし」

町田「東島先生は偉かったよね」

道大「あの頃から、どんなに世の中が変わっても、人間を人間にしているのは言葉なんだと、繰り返し教えてくれたよね」

町田「それが猪飼くんの本の、もう一つの主題だと私は思ったよ」

道大、無言でうなづく。

視線の先に、モノクロの東島先生の遺影。

その前に、花束や『学校なくなっちゃった!』や、いろんなものが供えられている。

何人かの同級生が集まってくる。

同級生1「スキルス性胃がん。早期発見が困難だそうだ」

同級生2「40代だって。早すぎるよね」

誰かが遺影の前のコップにビールをつぐ。

アルフォンス「もうすぐ俺たちの年、追いついちまうじゃないか!」 

アルフォンス、すすり泣き始める。

同級生たちも、泣き始める。

道大「会えなくなる人、なくなってしまう物は、あるんだよねやっぱり」

道大、流れる涙を静かに拭う。本編で道大が見せる、最初で最後の涙である。

 

エンディング

エンドロールに重なって、疾走する道大の車が映し出される。

運転席に道大が、助手席に小学5年生のマコトにそっくりな少女が乗っている。

車はとあるビルの駐車場に停まる。道大と少女が下車する。

後部座席から真琴と、小学校6年生のミチヒロにそっくりな少年が下りる。

手をつないだ少年と少女を、道大と真琴が両側からかばうように寄り添って、ビルに入っていく。

4人は『『学校なくなっちゃった!』試写会場』の張り紙のある部屋に入っていき、着席する。

エンディングテーマ『街の子のノスタルジー』

街をふたつに分ける 線路の向こうは 外国 そこに行けば

先生も 同級生も 違う言葉 話してるみたい

遊び場はいつだって 近くの校庭 そこへ 行くときは

通学路と 別の道を なぜかいつも 選んでた

世界は 果てもなく 続いてる 家並みと

世界の 終わりに 工場が 並ぶ

青い山澄んだ水 絵ハガキみたいな田舎の

思い出は ないけれど わからないけど

いくつになったって どこで暮らしたって どんなに離れたって

Ah 街の子のノスタルジー

 

高架の下のコンクリート 果てしないキャンバス 雨の日

教室から 持ち出した チョークがあれば いつまででも 絵を描いてた

ショッピングセンターは お気に入りのラビリンス 裏口

行き来してる 段ボール 見つめていると なぜか悲しい気分になった

立ち並ぶ 建物が どんなに 変わっても

故郷の 面影は 必ず 見つけられる

この街に生きてきた 喜び悲しみ そして 今この時が

あるならば ある限り

いくつになったって どこで暮らしたって どんなに離れたって

Ah 街の子のノスタルジー

 

スタッフロールが終了したスクリーンの手前から、猪飼一家の後姿がせり上がる。

後姿は横顔に変わる。

道大「(少年に)面白かった?」

少年「まあまあかな」

真琴「(少女に)面白かった?」

少女「(満面の笑み)面白かった~!」

(終)

追記:

周知の通り、選択的夫婦別姓制度はリアルではいまだ実現していません。

参考サイト

新しい夫婦別姓訴訟と4人の村 | 弁護士作花知志のブログ

サイボウズ社長が提訴へ「夫婦別姓」は今度こそ実現する? 弁護士に聞いてみた | ハフポスト NEWS

憲法改正第131号によるブラジル憲法の改正 – Advocacia Yasuyuki Nagai – 永井康之法律事務所

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