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くっそNHK『新プロジェクトX』「初音ミク誕生秘話」を観て感動してしまったことが、なんか悔しい

身近に起きたことを順番にエントリーにしていたら遅くなってしまったが、放送は4月19日(土)だった。普段観てない『新プロジェクトX』の「情熱の連鎖が生んだ音楽革命 〜初音ミク 誕生秘話〜」という回をたまたま観て、感動してしまった。それがなんか悔しかった。

今回は敬称略で失礼します。

2000年代初め、さまざまな音響素材を扱っていた札幌のクリプトン・フューチャー・メディア株式会社(以下クリプトン社)に、歌声合成ソフトいわゆるボーカロイドの企画が持ち込まれたことから話が始まる。

当初のボーカロイドは子音が聞き取りづらいという難点があったそうだが、何か月かをかけた改良の結果、子音と母音の波形の間に短い空白を差し挟むことにより、聞きやすさが大幅に改良されたという。

新シリーズになってからは全然見てなかったが、旧『プロジェクトX』が得意とした創意工夫のエピソードだと思った。実はそれで何かがわかるわけではないが、わかった気にさせるところが巧いよね、昔から。

 

クリプトン社は改良された技術を用いた女声ボーカロイド「MEIKO」を2004年に、男声「KAITO」を2006年に売り出した。だがそれぞれ数百部ほどしか売れず、また音楽業界誌には「幼児が歌っているようだ」と酷評さたとのことだった。

オンエアされた初代パッケージ(だと思う)がAmazonにあったので、ブログカード貼らせていただきます。

VOCALOID MEIKO

VOCALOID MEIKO

  • クリプトン・フューチャー・メディア
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VOCALOID KAITO

VOCALOID KAITO

  • クリプトン・フューチャー・メディア
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現在は(たぶん)後述の改良を施されたV3というのが主力と思われる。

MEIKO V3

MEIKO V3

  • クリプトン・フューチャー・メディア
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KAITO V3

KAITO V3

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クリプトン社は、技術と営業の両面で次の手を打ったという。

技術的には、幼児のようだと酷評されたたどたどしさの改良には、人間らしい「息継ぎ」が大きな効果が期待できることがわかったそうだ。

そこで新製品のモデル声優に起用した藤田咲には、現実にはあまり発音されることのない音の組み合わせ300種以上の録音を要請したとのことだった。

ここも、わかった気にさせてくれるが実はぜんぜんわかってないパターンだけど。

 

営業的には、2000年代中盤から急速に普及した動画共有サービスに着目したそうだ。MEIKOの売上が一時的に激増したことがあり、理由をさぐると動画共有サービスにMEIKOを使用した楽曲がアップされたことがきっかけらしいことをつきとめたことによる。

MEIKO、KAITOのキャラクターはアニメ風だが、新製品のキャラは未来風、アンドロイド風を志向したという。技術的には人間に近づけ、営業的にはあえて人間から遠ざかることを目指したことが好対照とのことだった。

 

順番は前後するが、キャラたちの権利に関しては「ピアプロ・キャラクター・ライセンス」(PCL)を制定し、二次創作物の作成と公開を幅広く認めたという。

piapro.jp

 

かくして2007年に発売された「初音ミク」は、各種動画共有サービスを舞台に、爆発的なヒットを見せたという。

TV画面には「初音ミク=ネギ」を定着させたIevan Polkka〔イエヴァン ポルッカ〕のカバーであるとか…

www.youtube.com

 

どんなプロモーションよりプロモ効果高かったんじゃないかと思われる「みんなみくみくにしてあげる♪」であるとか…

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驚異の再生数を記録した「千本桜」であるとか、他にも聴き覚えのある曲、かなり聴いた曲が、次々とTV画面に登場した。

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唐突に私事を差し挟むが、一時期個人的に見入った『護法少女ソワカちゃん』シリーズや…

www.nicovideo.jp

 

やはり、かつて入りびたった緑の国ことpya!の住人さんたちの力作『ニコニコ動画流星群』は登場しなかった。残念!

www.nicovideo.jp

何が言いたかったかというと、限られた放送時間で画面に流れた作品は、ごくごく一部に違いないということである。

 

そして、ボカロP(ボーカロイド・プロデューサー)として世に出たDECO*27、やはりボカロPとしてキャリアをスタートした米津玄師、多くのボーカロイド曲のカバーを持つAdoらビッグネームが、次々と紹介された。

 

これは、あれじゃないか! 個人的な呼称で一般には通じないが「チルドレン譚」ではないか! 

新しい話題の対象が出てくるたびに「あ、これ〇〇だろ? 〇〇じゃねーのか? 〇〇が出た!」と、ぜってー盛り上がる物語パターンである。

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弊ブログではかつて、武良布枝『ゲゲゲの女房』(実業之日本社) や…

watto.hatenablog.com

 

最相葉月『星新一―一〇〇一話をつくった人』(新潮社) について、マイ書評を書いたことがある。

watto.hatenablog.com

 

前者において青林堂「ガロ」編集長・長井勝一に見出され、「少年マガジン」編集長・内田勝によって人気マンガ家に押し上げられた水木しげるの許に、南伸坊、つげ義春、池上遼一、矢口高雄らが編集者として、助っ人として、アシスタントとして次々と現れる終盤が…

後者において編集長・矢野徹のSF専門誌「宇宙塵」でデビューし江戸川乱歩に認められた星新一が、後に共に日本SFクラブ会員となる小松左京、筒井康隆、半村良らと次々と出会うやはり終盤が、きわめて印象的だった。少なくとも私は、読んでいてメチャメチャに高揚した。

 

2017年の「24時間テレビ」がドラマ「時代をつくった男 阿久悠物語」というのを放送したとき、暴挙にもこの番組を全部は観ずしてエントリーを一本公開したことがあった。

watto.hatenablog.com

このとき「チルドレン譚」という言葉をでっちあげたのだった。

阿久悠が、萩本欽一を司会者に起用してプロデュースした「スター誕生」が、森昌子、桜田淳子、岩崎宏美、ピンクレディーらを生み出したことを指してである。

もちろん、そんな言葉はない。弊ブログのローカル造語である。

 

なんでブログタイトルに「なんか悔しい」と書いたかというと、理由の一つは、このチルドレン譚というのは、やればきっと盛り上がるという確信がありながら、自分でやるのがたいへん難しいという自覚があることである。

 

ネットのあちこちに書いているのだが、NHK大河ドラマは、紫式部や蔦屋重三郎ら文人を主人公にしたのだから、いつかぜひ夏目漱石を主人公にすべきだと思っている。

理由は熊本、松山、伊豆修善寺など大河の舞台として手薄な土地をカバーできること、『吾輩は猫である』『草枕』の日露戦争から『こころ』の明治天皇の死去と乃木希典の殉死まで、意外と時事ネタが多いこと、正岡子規、森鴎外など同時代の同志やライバルとの絡みが描けることなどいろいろあるが、いちばん描いてみたいのは漱石山房あるいは木曜会に参集したチルドレンの銘々伝である。「あ、こいつ寺田寅彦やろ!」「芥川龍之介!」「内田百閒が来た!!」ぜってー盛り上がるでしょ。

だが参考書として目を通しておくべき文献が膨大な量に及ぶし、何より漱石研究者は学者、評論家、作家、アマチュア問わず多数存在する。残念ながら私は適任者ではない。

 

『新プロジェクトX』「初音ミク誕生秘話」劈頭では、ボーカロイド開発がスタートした2000年代は、中央(東京)の音楽業界では小室哲哉がプロデュースした楽曲が人気の絶頂にあったことが紹介された。

小室チルドレン(小室ファミリー)をドラマに仕立てたら、ぜってーぜってー当たるよね。観月ありさ、篠原涼子、trf、hitomi、内田有紀、H Jungle with t、dos、globe、華原朋美、安室奈美恵…ウィキペからのコピペだけど。

小室ファミリー - Wikipedia

だが私は音楽業界にも芸能界にも、ぜんぜんの全くうとい。詳しい人、誰か書いてください。

 

「お前にできないことばっかりやん」という突っ込みが来そうだが、もし来たら「あったとしても今ここには書かない」と返しておこう。本当にあるのかないのかは、企業秘密である。

 

もう一つ「悔しい」と感じた理由は、『新プロジェクトX』という番組そのもののコンセプトに対する疑問である。元祖の『プロジェクトX』に対しても、どこか違和感を感じないではなかったが、日本経済の世界における地位が短期間にここまで凋落してしまった今日、この番組を復活させる意義は何だろうという疑念が拭えない。

だがこの話は始めると長くなるので、今回はやめておく。

日本経済の急速な衰退に関しては、論点も材料も膨大な数があり、何か書きたい、書かなくてはと思いながら論じきれる自信がない。

この機会に一言だけ書いておくとしたら『プロジェクトX』的なるものは、日本だけでなく各国にあったのだろう、そして、今あるのだろう。韓国にも、台湾にも、中国にも、ベトナムにも、インドネシアにも、あらゆる国に…

 

ところであの印象的な初代初音ミクのブログカードに限って、Amazonアソシエイトになかった。サムネイルに貼りたかったのだが、残念!

ちょっと「不気味の谷」的違和感があったところが、よかったのだ。

初音ミク V4X (incl. ENGLISH)

初音ミク V4X (incl. ENGLISH)

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