滅多にないことなので「今週のはてなブログランキング」に2記事が同時ランクインするたびに、お礼のエントリーを書くことにしています。前回はこちらでした。
本日(7/14)公開された「今週のはてなブログランキング〔2025年7月第2週〕」の…
9位に7月9日付のこの拙記事が…
14位に12日付のこの拙記事が、それぞれランクインしていました。
ブックマークしていただいた皆さん、はてなスターをつけてくれた皆さん、閲覧してくれた皆さんにお礼を申し上げます。ありがとうございました!
もともと2記事のトップ30同時ランクイン自体、数えるほどしかないのですが、今回の特徴はどちらも政治ネタだったということです。こんなこと過去に一度もなかったんじゃないかな。
しかし特に今次の参院選に関しては、書きたい材料が無数にあって、しかも毎日新しい材料が出てきて、やや途方に暮れている部分がある。
一件だけ、参政党党首の神谷宗幣氏が12日の選挙演説で、治安維持法に肯定的に言及したというニュースについて書いちゃえ。
もともと神谷氏はじめ参政党関係者は「前言をやすやすと撤回する」「過去に発言したこと自体を否定する」「ウソと事実を微妙に混ぜる」「ウソの部分を指摘すると、事実の部分を盾にとって反撃というより逆ギレする」というレトリックを駆使する特徴があった。
そのあたりも自分でまとめようかなと思っていたら、J-CASTニュースさんの記事が出た。
同党ホームページに書いてある「国民主権の記述の削除」「神社を国有化」は神谷氏によると「犯罪レベル」のデマであり、街頭演説の動画が出回っている「メロンパン1個食べて翌日死んだ人はたくさん見てます」発言は、吉川里奈衆院議員によると「メロンパン、ちょっと古い」、梅村みずほ氏によると「デマの流布にご注意くださいませ」とのこと。
記事にはないが、ジャンボタニシも参政党的にはなかったことにされている。
やはり同記事には間に合わなかったのが、治安維持法に関する弁明である。
X旧ツイッターのブログカード、貼れるかな?
私が治安維持法に賛同していると拡散されている方がいますが、明らかなウソです。
— 神谷宗幣【参政党】 (@jinkamiya) 2025年7月13日
治安維持法は1925年に普通選挙法と同時に制定されました。
國體の破壊や天皇の存在を否定、私有財産制度の破壊を目的とする共産主義運動に対する警戒が強く、社会の安定を守るために作られた経緯があります。…
ウソつくんじゃねーよウソつき!
元発言の動画は、哲学系ゆーちゅーばーじゅんちゃん さんのYouTubeチャンネルを貼らせて頂きます。著作権対策の関係上、画像と音声に加工が入っています。
ひどいねこれは。
神谷氏は能弁家だから、次から次へと話題を繰り出す。しかしよく聞くと、相互の脈略は薄く事実誤認も多数含まれる。聞き手に考える時間を与えないマルチのトーク、詐欺師のトークである。
ほんの断片だが、旧ソ連が共産主義というのは否定しないとしても(事実)、アメリカ、イギリス、中国(中華民国)って共産主義なのか? グローバリズム=共産主義なのか? いいえ違います(ウソ)。
そして、じゅんちゃん さんも指摘している通り、神谷氏ははっきり治安維持法を肯定している。ウソにまみれて実体ワケわからなくなった「共産主義」から、「國體」とやらを守るためと称してだ。それ以外に解釈の余地はない。
じゅんちゃん さんは小林多喜二の拷問死、戸坂潤、三木清の獄死、滝川事件、大本教への弾圧に言及している。中央公論社が出てくるのはwikipedia:横浜事件だな。
それでも、これらの人々の名前を挙げても「彼らはインテリだから」「一般庶民には関係ない」と響かない人がいるかも知れない。
壷井栄『二十四の瞳』を思い出した。この書名を思い出した経緯も個人的にはちょっと面白かったのだが、今は端折る。
『二十四の瞳』に実は小豆島という地名が一度も出てこないことは有名だが、同書に「治安維持法」という言葉は何度か出てくる。
以下、青空文庫 https://www.aozora.gr.jp/cards/001875/files/57856_63624.html より。ルビと傍点を省略しています。
そして、もうすぐ六年生に進級するという三月はじめであった。春は目の前にきていながら珍しく雪の降ふる中を、ひとバスおくれた大石先生は、学校前の停留所から傘もささずに走って、職員室にとびこんだとたん、異様な室内の空気に思わず立ちどまり、だれに話しかけようかというふうに十五人の先生たちを見まわした。みんな心配そうな、こわばった顔をしていた。
「どうしたの?」
同僚の田村先生にきくと、しっ というような顔で田村先生は奥まった校長室に、あごをふった。そして小さな声で、
「片岡先生が、警察にひっぱられた」
「えっ!」
<中略>
教頭が出てきての説明では、片岡先生のは、ただ参考人というだけのことで、いま校長がもらいさげにいったから、すぐ帰ってくるだろうといった。問題の中心は片岡先生ではなく、近くの町の小学校の稲川という教師が、受けもちの生徒に反戦思想を吹きこんだという、それだった。稲川先生が片岡先生とは師範学校の同級生だというので、一おうしらべられたのだが、なんの関係もないことがわかったというのである。つまり、証拠になるものが出てこなかったのだ。そのさがしている証拠品というのは、稲川先生が受けもっている六年生の文集『草の実』だというのである。それが、片岡先生の自宅にも、学校の机にもなかったのだ。
「あら、『草の実』なら見たことあるわ、わたし。でも、どうしてあれが、あかの証拠」
大石先生はふしぎに思ってきいたのだったが、教頭は笑って、
「だから、正直者が馬鹿みるんですよ。そんなこと警察に聞かれたら、大石先生だってあかにせられるよ」
「あら、へんなの。だってわたし、『草の実』の中の綴方を、感心して、うちの組に読んで聞かしたりしたわ。『麦刈』だの、『醤油屋の煙突』なんていうの、うまかった」
「あぶない、あぶない。あんたそれ(『草の実』)稲川くんにもらったの」
「ちがう。学校あておくってきたのを見たのよ」
教頭はきゅうにあわてた声で、
「それ、今どこにある?」
「わたしの教室に」
「とってきてください」
謄写版の『草の実』は、すぐ火鉢にくべられた。まるで、ペスト菌でもまぶれついているかのように、あわてて焼かれた。茶色っぽい煙が天井にのぼり、細くあけたガラス戸のあいだから逃げていった。
「あ、焼かずに警察へ渡せばよかったかな。しかし、そしたら大石先生がひっぱられるな。ま、とにかく、われわれは忠君愛国でいこう」
教頭のことばが聞こえなかったように、大石先生はだまって煙のゆくえを見ていた。
翌日の新聞は、稲川先生のことを大きな見出しで「純真なる魂を蝕む赤い教師」と報じていた。それは田舎の人びとの頭を玄翁でどやしたほどのおどろきであった。生徒の信望を集めていたという稲川先生は、一朝にして国賊に転落させられたのである。
このすぐあとに、小林多喜二の名が何度か出てくる。
治安維持法の恐怖は、一般庶民にもぜんぜん他人事ではなかった。無制限の権力を手にした人間には、どうしてもそれを行使しないではいられないタイプがいる。史実として、「共産主義から国体を守る」というお題目はあっという間に有名無実化したのだ。喩えるなら日本国民全員が大河原化工機の関係者にされたようなものだろう。
『この世界の片隅に』における特高警察の描き方が「甘い」と批判されたことも、思い出した (それでも私は『この世界…』を高く評価するのだけど
参政党に関しては、今後もエントリーを書くかもしれない。いや、参政党ではなく排外主義、外国人敵視にテーマを絞るべきか。あれには明らかなウソが多く含まれており、そして日本人を不幸にする。必ず今以上に不幸にする。
