目次 各「その1」のみ クリックで詳細表示
(13) 第3景【鎌倉編】馬借・欠七(1/2)
(15) 第4景【現代編】個室病棟にて(1/2)
(17) 第5景【鎌倉編】ボクの無双(1/2)
(19) 第6景【鎌倉編】被差別集落(1/4)
(23) 第7景【鎌倉編】霊感商法(1/5)
(28) 第8景【現代編】ボクシング
(29) 第9景【鎌倉編】地頭・稲田(1/2)
(31) 第10景【現代編】哲学者
(32) 第11景【鎌倉編】心霊教ふたたび
(33) 第12景【現代編】裵〔ペ〕デスク
(34) 第13景【鎌倉編】刺客
(35) 第14景【現代編】守衛
(36) 第15景【鎌倉編】大団円(1/4)
(40) 第16景 鎌倉編の後始末
(41) 終景 現代編の後始末(1/3)
新着お目汚しを避けるため、日付をさかのぼって公開しています。前回はこちら。
真琴「このさい英文学専攻をひけらかせてもらうと、異世界転生は reincarnation ではなく transmigration ですね。 reincarnation は生まれ変わって赤ちゃんからやり直すイメージですけど、transmigration はもともと "移住" という意味で、成人の登場人物が記憶を保ったまま異世界に来ることは、こちらで表現されるようです」
裵「英語の単語力というか解像度というかは、すさまじいといつも思う。私なんか、この年になっても洋書を開くと知らない単語だらけで情けなくなる」
真琴「私だって変わりませんよ。だからさっきのサキのように、初見の場合は日本語の方がまだまだ楽なんです。日本語は、未知の単語があっても見当をつけることができますし」
裵「ところで今さらだが、奥さんを巻き込んでしまってご迷惑じゃなかったかな?」
道大「ボクに訊いてください」
真琴、道大を無視して「いえいえ、タブレットで読書中というか、空き時間には原書に目を慣らす習慣づけをしていただけなので、いつでも構いませんでした」
道大「刊行済みのクリスティを、ぜんぶ原書で5回通読するんだそうです」
裵「そりゃすごいな」
真琴「いつの話してんのよ? むかし卒業論文を書くときに1回はぜんぶ通読したと思ったけど、あとですぐぜんぜん足りなかったことに気づいて、そんな目標を立てたことがあったんです。今はあまりこだわってなくて、これは『パディントン発4時50分』だけど、大好きだから何べん読み返したか数えていません」
裵「ますますすごい。ただ者じゃないとは思っていたが」
道大「ただのヘンな奴です」
真琴「ヘンな奴にヘンな奴って言われたくないわ」
裵「今の目標は、アカデミズムか教育の世界でまとまった業績を?」
真琴「それが、非常勤とはいえ大学に職が得られたのはラッキーだったんですけど、その後、無期転換をめぐって大学側と揉めに揉めて、首尾よく無期転換は勝ち取れたものの、ダメージからまだ立ち直り切れていない状態なんです」
道大「真面目な話、日本の教育行政はアカデミズムを破壊したいんじゃないかとしか思えない部分があるんです。それを間近で見てきたボクには、文筆業として、それを記録に残す義務があるんじゃないかとさえ…今すぐには無理でも、ほとぼりが冷めた頃にでも」
裵「うちの部門で本にするのは無理だが、私にも業界のネットワークというものがある。力になれるかも知れないから、原稿ができたら相談してくれ」
真琴・道大「ありがとうございます」
真琴「今は "誰も読んだことのない物語を書いてみたい" という私の夢が、二人の夢になったところかな?」
道大「それはもともとボクの夢だ!」
真琴「結果は一緒じゃん」
裵「奇遇だな。誰も読んだことのない物語を世の中に送り出すことは、私の夢というより使命でもある」
真琴「三銃士みたいでカッコイイですね」
道大「書くのはボクだーっ!」
裵、道大を無視する形になって「物語のパターンは旧約聖書の時代にすでに出尽していると言われる。まったく新しい物語を作り出すことは、難中の至難これに過ぐるはない。しかし、驚くべきことにミステリが誕生したのは通説では19世紀、SFが誕生したのもまた通説は19世紀」
道大「アーキタイプと言われるものは、それぞれ多数ありますけどね。それからラノベも異世界転生ものも、誕生は20世紀と言われます。ボクの場合、一つのジャンルを開拓するのは、そりゃもちろんできることであればやってみたいですけど…」
真琴「原色が有限でも中間色に限りがないように、物語の基本パターンは出尽していても、それらの組み合わせの中から見たことのないものが出てくるかも知れない…何べんも聞かされたよ」
裵「うん、私もいつも聞いている」
道大「また二人していじめる」
裵「猪飼くんの才能には期待してるんだ」
真琴「あなた天才だもんね」
道大「とって付けたようにフォローしなくてもいいですよ」
(この項つづく)
※ リアル作者注:
「日本の教育行政はアカデミズムを破壊する気か?」というのは残念ながら現実で、その断片はこの拙過去記事をさかのぼると、ある程度垣間見られるのではないかと思います。経緯を原稿にまとめるというのは、やってみたい気もしますが関係者が現在も在籍しているので難しいです。
追記:
続きです。
