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【創作】転生したら親鸞だった?(8)第2景【鎌倉編】車借・捨六(2/6)

目次 各「その1」のみ クリックで詳細表示

(1) 第1景【現代編】猪飼家のマンションにて(1/6)

(7) 第2景【鎌倉編】車借・捨六(1/6)

(13) 第3景【鎌倉編】馬借・欠七(1/2)

(15) 第4景【現代編】個室病棟にて(1/2)

(17) 第5景【鎌倉編】ボクの無双(1/2)

(19) 第6景【鎌倉編】被差別集落(1/4)

(23) 第7景【鎌倉編】霊感商法(1/5)

(28) 第8景【現代編】ボクシング

(29) 第9景【鎌倉編】地頭・稲田(1/2)

(31) 第10景【現代編】哲学者

(32) 第11景【鎌倉編】心霊教ふたたび

(33) 第12景【現代編】裵〔ペ〕デスク

(34) 第13景【鎌倉編】刺客

(35) 第14景【現代編】守衛

(36) 第15景【鎌倉編】大団円(1/4)

(40) 第16景 鎌倉編の後始末

(41) 終景 現代編の後始末(1/3)

新着お目汚しを避けるため、日付をさかのぼって公開しています。登場人物の生死にかかわる展開や、排泄関係を含む劣悪な衛生状態に関する記述が頻出するので、閲覧注意です。

前回はこちら。

watto.hatenablog.com

 

(主人公のナレーション) つまりボクは転生したようだ。それもリインカーネーション (reincarnation) ではなくトランスミグレーション (transmigration) というわけか。

最初に心配したのは、息子の聡己と娘の結衣のことだった。だが妻の真琴がいるし、ボクの両親も妻の母すなわち義母の伊佐子さんも、まったくのぜんぜん健在だし、なんとかなるだろうと思うことにした。妻の収入もあるし、これまでのボクの著作の印税もある。それに事故の加害者が無保険でさえなければ、それなりの保険金が下りるはずだ。

次に考えたのは、どうせ転生するのならリインカーネートさせてくれよ、つまり赤ん坊からやり直させてくれよ、ということだったが、そうすると聡己のことも結衣のことも、真琴のことも思い出せなくなるのか。

逆にこの世界の30代半ばの中年男性として、これまでどういう人生を送ってきたのか、ボクは自分(?)のことをまったく知らないことになる。記憶喪失みたいなものだ。いや、記憶喪失そのものだ!

元の世界の記憶を維持したまま、この世界の記憶を何一つ持たないまま、なんとかこの世界に適合することを試みる以外の選択肢はないのか。かなりキツいな。

 

まずはボクが今いるこの世界のことを、少しでも知らなければならない。話しかける相手はこの捨六という人物しかいないのだから、彼からできるだけ多くの情報を引き出そうと思った。

灌木に挟まれた小道を歩きながら、尋ねてみた。

「ボクはどんな罪を犯したのでしょう?」

「私にはわかりません。我々の役目は、検非違使に代わってあなたを流刑地まで送り届けることです。正確には次の駅まで送れば、そこから別の者が引き継ぎます。馬借車借の仲間です」

「検非違使! 今はいったい何年なんですか?」

「承元元年、丁卯〔ひのとう〕です」

「…わからない」

笈を背負っていなければ、頭を抱えたいところだった。

 

と、その笈の上から、甲高い声が聞こえた。

「西暦1207年です」

えっ? と思って立ち止まり、背中から笈を下ろした。

笈のいちばん上の横木に、小鳥が止まっていた。丸い目が3つある、奇妙な鳥である。

「秘書インコ!」

「お久しぶりです。『学校なくなっちゃった』以来、約1年ぶりです」

「ビスケットバッグとみじかいりゅうは?」

「残念ながら、今回ご一緒できるのは私だけです」

 

捨六さんが、目を丸くしていた「たまげた! しゃべる鳥はいるが、こんなに滑らかに会話できる鳥がいるなんて」

ボクだけに見えるとか、ボクとだけ会話できるとかじゃ、ないんだ。

とりあえず紹介しようと思った。何か差し障りがありそうな気がしないでもなかったが、どんな支障があるかはとっさには思いつかなかったので。

「これは "秘書インコ" 。言っちゃうと正体はスマホです…んー、スマホ、通じないよね。そういえば…」

と、秘書インコに向かって

「通信機能なんか、ないよね」

「残念ながら中継局がないので、通信・通話はできません。ただし2025年のデータベースはだいたいキャッシュしていますので、その範囲でしたら対話型AIにより応答できます」

「なんだかすごいな。膨大なデータ量になりそうだけど」

「そのあたりは、深く追求しないでください」

「バッテリーはどうするの?」

「木の実草の芽や昆虫を食べて自給しますので、問題ありません。ご心配なく」

「そりゃまたありがたいや!」

傍で聞いていた捨六さん「何を言っているのか、さっぱりわかりません」

「ごめんね、勘弁してください」

 

「ボクがこの世界で、これまでどんな人生を送ってきたかなんて、わからないよね」

「21世紀の "猪飼道大" でしたらウィキペディアにも項目がありますが、この時代の庶民のことは、わかりません」

「そりゃそうか」

タイトルで思いっきりネタバレしている通り、あとで考えたら "善信〔ぜんしん〕" と"承元" で検索するだけでも、ある程度のことはわかったのだけど、この時は思いつかなかった。

だが秘書インコがいてくれるだけでも大助かりだ。まずは今が鎌倉時代だということがわかった。昔は「いいくに (1192) 作ろう」すなわち源頼朝が征夷大将軍に就任した年、今は「いいハコ (1185) 作ろう」すなわち頼朝が全国に守護・地頭を設置する権利を得た年をもって、鎌倉幕府の成立としている。今っていつだ?

(この項続く)

※ リアル作者注:

ウィキペディアに "猪飼道大" という項目はありません。念のため。

追記:

続きです。

watto.hatenablog.com

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