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【創作】転生したら親鸞だった?(23)第7景【鎌倉編】霊感商法(その1)

暫定目次 各「その1」のみ クリックで詳細表示

(1) 第1景【現代編】猪飼家のマンションにて(1/6)

(7) 第2景【鎌倉編】車借・捨六(1/6)

(13) 第3景【鎌倉編】馬借・欠七(1/2)

(15) 第4景【現代編】個室病棟にて(1/2)

(17) 第5景【鎌倉編】ボクの無双(1/2)

(19) 第6景【鎌倉編】被差別集落(1/4)

(23) 第7景【鎌倉編】霊感商法(1: 本稿)

新着お目汚しを避けるため、日付をさかのぼって公開しています。体裁にこだわらず頭の中にあるものをダンブしている、という意味です。 あとからどんどん手を入れる予定です。前回はこちら。

watto.hatenablog.com

 

(主人公「ボク」による語り)

真琴!?

紫雲寺を訪ねてきた娘の顔を見て、驚いた。質素な着物を着、化粧っけのない顔をしていたが、妻の真琴にそっくりだった。いや、真琴より10以上、若い。今から、鎌倉時代に転生する直前という意味だが、15年ほど前に大学のキャンパスで初めて出会った時と、ほぼ同じ年ごろのようだ。

この村の住人で、名前をマメと名乗った。

マメ「お坊さま! お坊さまの昨夜のお話によると、お釈迦さまは国王でも卑賎の者でも区別せず相談を受けたとのことでした。お坊さまは、私のようなものの相談でも、聞いてくださいますか?」

前回の『園丁散華』の話を、紫雲寺で聞いてくれた一人だったのだ。

ボク「私は釈尊の足元にも及ばぬ者です。お力になれるかどうかわかりませんが、ご相談でしたらどなたでも伺います」

マメ「ありがとうございます。実は、母が、おかしくなってしまったのです」

 

ボク「それはおだやかでありませんね。どうか順を追って、ゆっくり話していただけませんか?」

マメ「はい。ことの起こりは、2年前に父が亡くなったことです」

ボク「お悔やみを申し上げます」

マメ「夫婦仲のよかった母は、たいへん悲しみました。それでも日々が過ぎるうちに、少しずつ落ち着いたように見えました」

ボク「…」

マメ「ところが母のところへ、世界統一家族心霊教と名乗る宗教団体の人たちが来るようになって、母はすっかり人が変わってしまったのです」

ボク「何ですってそれは? せかいとういつ…??」

マメ「世界統一家族心霊教です。"世界は一家" だとか。長いので心霊教とだけ呼ばせてください。彼女らは…やってくる人に女の人が多いものですから…父の霊が成仏できずに苦しんでいると言ってきたです」

ボク「…」

マメ「そして父の霊を救うためには、教団に献金したり高価な壺を買ったりしなければならないと言って、多額のお金を何度も払わせました」

ボク「霊感商法だ…」

マメ「おかげで、もともと豊かでなかった我が家は、ほとんど無一文になってしまいました。それでも心霊教の人たちは引き下がらず、とうとう "小作権を売り渡して献金しろ" とまで言い出しているのです」

ボク「小作権ですって!?」

マメ「そうです。荘園で地主の土地を耕作させてもらう権利です。もしもそれを手放したら、うちはもう百姓が続けられなくなります」

小作権! 耕作権!

21世紀と比較したこの時代の貧しさを語るのは、あまりに酷いから自重しなければとは思うのだが、ここでまた打ちひしがれたような気持ちになった。

耕作権の不安定さも歴史上長くあとを引いた問題の一つで、あとで検索したところによると、大正期に頻発した小作争議は、小作料の引き下げと並んで耕作権の確保が争われたとのこと、耕作権が法律で定められたのは戦後の1952 (昭和27) 年制定の農地法によるとのことだった。

 

ボクに何かできるか、まったく自信がなかった。だが、放っておくわけにもいかなそうだった。マメさんが妻の真琴にそっくりということをさし措いても。

ボク「微力ですが、まずはお母さんと会ってお話をさせていただけませんか?」

マメ「ありがとうございます!」

(この項つづく)

追記:

つづきです。

watto.hatenablog.com

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