目次 各「その1」のみ クリックで詳細表示
(13) 第3景【鎌倉編】馬借・欠七(1/2)
(15) 第4景【現代編】個室病棟にて(1/2)
(17) 第5景【鎌倉編】ボクの無双(1/2)
(19) 第6景【鎌倉編】被差別集落(1/4)
(23) 第7景【鎌倉編】霊感商法(1/5)
(28) 第8景【現代編】ボクシング
(29) 第9景【鎌倉編】地頭・稲田(1/2)
(31) 第10景【現代編】哲学者
(32) 第11景【鎌倉編】心霊教ふたたび
(33) 第12景【現代編】裵〔ペ〕デスク
(34) 第13景【鎌倉編】刺客
(35) 第14景【現代編】守衛
(36) 第15景【鎌倉編】大団円(1/4:本稿)
(40) 第16景 鎌倉編の後始末
(41) 終景 現代編の後始末(1/3)
新着お目汚しを避けるため、日付をさかのぼって公開しています。体裁にこだわらず頭の中にあるものをダンブしている、という意味です。 あとからどんどん手を入れる予定です。前回はこちら。
(主人公「ボク」による語り)
ボクと稲田地頭、それからついて来たマメさんは、郡衙の中庭に通された。以前、通された前庭よりずっと広かった。だが前庭同様、目ぼしいものは何もない殺風景な空間だった。(14)第3景 参照。
マメさんは呼ばれなかったはずだが、特段とがめだてもなく中に入れてくれた。只丸くんも一緒に来たがったが、留守番するように説得した。何があるかわからない。危ない目に遭わせたくなかった。
中庭には、ほかに10人ちかくの村人がいた。荘園主や富農たちだ。そのうち何人かはボクの "法話" を聞きに来てくれていたので、顔を見知っている。
少し遅れて、西明住職もやってきた。
西明「おお、善信どの」
ボク「住職も呼ばれたのですね。何があるのでしょう?」
西明「私もわからない」
さらにややあって、中庭に面した屋敷の縁側に、意外な人物が姿を現した。
ボク「鶴御前!」
鶴御前は、例によって何人かの女性たちを従えていた。
その中に、イネさんの姿もあった!
マメ「お母さん!」
応答はなかった。
鶴御前「後藤国司さまは今、恐れ多くも勅使の応対中だ。もうしばらくお待ちなさい」
"勅使" 、朝廷の使者だ。庭にいる人たちは、一斉にざわめき立った。
ボクは、ざわめきにかき消されないよう大声を上げた「なんであなたが、こんなところにいるのですか?」
鶴御前は、ようやくボクたちに気づいた「左袒〔さたん〕、外国宗教の手先。お前こそ、なんでここにいるのだ? 勅使応対の場が汚れる! 立ち去れ」
売り言葉に買い言葉だ。ボクは応じた「勅使だかツクシだか知ったことじゃない! あなたこそイネさんをたぶらかすのはやめなさい! イネさんを解放しなさい」
勅使にツクシか。あとでもうちょっと気の利いた返しは思いつかなかったかと後悔したが、とっさだったから仕方がない。
鶴御前「イネどのの夫君の魂は、お前のような汚れた左袒が近づいたせいで、救われる寸前でまたしても別の地獄に堕ちたのだ」
イネさんは鶴御前の後ろで、青ざめた顔をして黙っている。
ボク「またそうやって出まかせのウソを吐く! 公約違反に他責! 令和の日本の政治家かってんだ!」
後半は通じないだろうけど、勢いというものだ。
鶴御前「ウソではない。そこはどのような地獄かというと、鬼が罪人をつかまえてきて灼熱の鉄の大地に寝かせ、熱した鉄でできた墨縄で、罪人の体に縦と横に墨の筋をつけ、そこを熱した鉄の斧で切り裂いていくのだ。あるいは鋸で切り、あるいは刀でずたずたにして、あちこちに撒き散らしてしまうのだ!」
イネさんが、悲痛な表情を浮かべる。
ボク「筋金入りのオタクを舐めるんじゃない! それもまた源信僧都の『往生要集』のパクリだ。"等活地獄" につづく "黒縄地獄" の記述そのまんまじゃないか」
オタク云々もまた通じないだろうけど、どうでもよかった。
ボク「そして、こう続くんだっけ。さらに熱した鉄の黒縄がぶら下がり互いに無限に交錯していて、この地獄に落ちた罪人がこの中に追い込まれると、恐ろしい風がものすごい勢いで吹き荒れ、その縄が罪人の体に蔦のようにまとわりつく。すると熱した鉄の縄だから肉は焼かれ骨は焦げて、その苦しみはたとえようがないと。だけどこれは作り話だ! あなたたちが "外国の宗教" と言ってさげすむ仏典からのパクリにすぎない」
鶴御前は絶句して、わなわなと震えた。
後ろから取り巻きの一人であるカメさんが、口を出した。
カメ「この坊主は、いつも人の言うことの批判ばかりしている。批判ほどたやすいことはない。それでは死んだ者がどうなるか、お前にわかるのか? わかるのだったら言ってみなさい」
鶴御前が引き継いだ「そうだ、お前が説明しなさい」
ボク「いいだろう、説明してやる。耳の穴かっぽじって、よく聞け!」
(この項つづく)
※リアル作者注
黒縄地獄の記述は、石上善應『往生要集: 地獄のすがた・念仏の系譜』(NHKライブラリー) P44を参照しました。
追記:
続きです。
弊ブログはアフィリエイト広告を利用しています