目次 各「その1」のみ クリックで詳細表示
(13) 第3景【鎌倉編】馬借・欠七(1/2)
(15) 第4景【現代編】個室病棟にて(1/2)
(17) 第5景【鎌倉編】ボクの無双(1/2)
(19) 第6景【鎌倉編】被差別集落(1/4)
(23) 第7景【鎌倉編】霊感商法(1/5)
(28) 第8景【現代編】ボクシング
(29) 第9景【鎌倉編】地頭・稲田(1/2)
(31) 第10景【現代編】哲学者
(32) 第11景【鎌倉編】心霊教ふたたび
(33) 第12景【現代編】裵〔ペ〕デスク
(34) 第13景【鎌倉編】刺客
(35) 第14景【現代編】守衛
(36) 第15景【鎌倉編】大団円(1/4)
(40) 第16景 鎌倉編の後始末
(41) 終景 現代編の後始末(1/3)
新着お目汚しを避けるため、日付をさかのぼって公開しています。体裁にこだわらず頭の中にあるものをダンブしている、という意味です。 あとからどんどん手を入れる予定です。前回はこちら。
(主人公「ボク」による語り)
ボク「想像も容易でないほどの、はるかな昔のことだ。
一人の修行僧がいた。名を法蔵菩薩といった。
元は国王だった。歴世の積徳の果報を得て、王家に生まれついた。
だが彼は、それに満足しなかった。
生老病死、おびただしい苦悩に苛まれる衆生を救いたい、救わずにはいられないと願い、国を投げ打ち王位を捨て、一介の修行僧となったのだ。
法蔵菩薩は、すばらしい師に出会った。
世自在王如来という仏である。
インドのヒンドゥー教ではシヴァ神である。最終破壊神だ。この世のすべてに終焉をもたらす、万能の神である。その名の通り、世界の一切を自在にできる仏である。
法蔵菩薩は、あえてこの仏に仕えることを選んだ。
法蔵菩薩は、世自在王如来に願った "どうか私に、この宇宙のすべての真実を見せてください、すべての秘密を明かしてください"
世自在王如来は言った "お前の精神と肉体は、それに耐えられるのか? もし耐えられなければ、お前は完全な無になってしまうかも知れない。あるいは、逃れることのできない永劫の責め苦の中に沈むかも知れない。それでもいいのか?"
"構いません!" 法蔵菩薩の決意は固かった。
世自在王如来は、多元宇宙の隅から隅までの情報を、法蔵菩薩の頭脳と肉体に直接注ぎ込んだ。
圧倒的な情報量! しかしそのほとんど大部分は虚無だった。あるいは無意味だった。
その中に、かろうじて意味を見出せる秩序もあった。しかしそれらの多くは、地獄、餓鬼、畜生と呼ばれる、果てしない互いへの憎しみと苦しみだけのある世界だった。
確かにこれでは耐え切れない! 法蔵菩薩は考えた。ならば、よい宇宙、すばらしい世界、美しい秩序だけを探すのだ! よいものだけに集中するのだ!
ある宇宙は、すべてが透明で清浄な水晶で構築されていた。
ある宇宙は、美しい音楽で満たされていた。
ある宇宙は隅々まで芳香が漂い、住民たちは香りによって会話していた。
…
法蔵菩薩は、すでにあるそれらすべてのよい宇宙の、さらにそのよい部分だけを選び取って、あらたな宇宙を創造し、その宇宙に一切の衆生を受け入れることを決意した。
地上に戻り、力尽きて倒れ伏す法蔵菩薩を、世自在王如来は叱咤した。
世自在王如来は、ついに法蔵菩薩を認めたのだ!
"起きろ、法蔵! 立ち上がれ!"
法蔵菩薩は、世自在王如来に励まされて目を覚まし、そして立ち上がった。
"法蔵、胸を張れ! 獅子のように咆哮せよ! すべての人々に、よき知らせを伝えるのだ! すべての人々に、喜びを与えるのだ"
法蔵菩薩は言った "如来よ、お聞きください。私はすでにある、あらゆるよい宇宙から、さらによいところを選び抜いた宇宙を創造することを誓います。
その宇宙には、地獄、餓鬼、畜生のような存在はありません。また未来永劫、そのような存在が現れることもありません。
その宇宙に住む人々は、みな黄金のように光り輝いています。優劣、美醜の差異はありません。
その宇宙に住む人々は、もし願うなら過去永劫の記憶を保持し思い出すことができます。
またもし願うなら、万億の宇宙を超えて、どこでも自在に移動することができます。
またもし願うなら、見たいと思うものを自在に見、聞きたいと思うものを自在に聞き、対話したいと思う相手と言葉を超えて直接心と心でつながることができます。
つまり私の宇宙に転生した人々は、他人の運命を変えたり他人を操ったりすることを除いて、ほぼほぼすべての願いを叶えることができるのです。
その願いの中には、食べたいものを食べることも、着たい服を着ることも、望まぬ性の肉体を受けることがないことまでも含まれています。
そして私の創造する宇宙には、定員というものはありません。私の創造する宇宙に生を受けたいと願う人は、無量・無辺・不可思議の大数であろうと、必ず受け入れましょう。
また私の宇宙の住人たちの寿命には、限りというものがありません。私の宇宙に住まうものは、それ以上生まれ変わりを重ねることなく、はるか遠い未来に、必ずニルヴァーナ、涅槃寂静、すなわち永遠にして完全なる心の平安の境地に到達することができます。
そう、私の創造する宇宙においても、究極の目的はそこに生まれることではありません。究極の目的は、涅槃寂静の境地に到達することなのです。
ただし一つ、例外があります。他人の運命を変えることはできませんが、もし過去に生を受けた他の宇宙で縁のあった人を思い起こし、その人の魂を救うために請願の鎧のような決意に心を固め、その人とともに私の宇宙に戻ってくる目的でその人の傍らに生まれ変わることを望むのであれば、私の宇宙においての自らの寿命を縮めることができるのです"
これら法蔵菩薩の誓いは、48項目に及んだ。
その中で最も重要な誓いは、次のものだ!
"すべての人々は、一切の衆生は、このよき知らせを受け取り、生涯に私の名をただの1度、念のため10度唱えて私の宇宙に転生することを願ったなら、その臨終の場に私自らが迎えに行き、必ず私の宇宙に転生させることを誓います"
そして5劫という気の遠くなるような時間を経て、法蔵菩薩の誓いは成就した。
法蔵菩薩は、新たな宇宙の創造に成功したのだ!
その宇宙の名を "極楽浄土" という。
その宇宙では、法蔵菩薩は新たな名前を名乗った。
"阿弥陀如来" という。
"南無阿弥陀仏"
私たちが、やらなければならないことは、これだけだ!
"南無阿弥陀仏" と10回、唱えればいいのだ」
鶴御前は言った「はん、なんだそれは? 荒唐無稽な」
ボクは応じた「荒唐無稽ではない。お釈迦さまの言葉をまとめた『無量寿経』という経典に、ちゃんと書かれている! 中国は唐の高僧・善導大師が "これこそが釈迦出世の本懐" として、万巻の仏典から選びとった教えだ! そして、わが師である法然坊源空上人が、世界の片隅にある本邦の、一切の善人も悪人も区別ない凡夫人に救いをもたらそうと、生涯をかけて広めようとされている教えなのだ」
ついに法然上人って言っちゃった。構うもんか。
「極重の悪人よ、ただ仏の御名を称えなさい!
私もまた、その例外ではない。
煩悩に遮られて目には見えなくても、
阿弥陀如来の大いなる慈悲は、一瞬も途切れることなく我らの身を照らしている!
仏典には、確かにそう書いてあるんだ!!」
ボクはさらに言った「おかしいじゃないか! なぜ "よい知らせ" が信じられなくて "悪い知らせ" ばかりが信じられるのか?
なぜ救済者の存在が信じられず、サタンの存在が信じられるのか?
なぜ "高畑勲は、清太と節子の魂を救っている” と信じられず、”清太と節子の魂は救われずにさまよっている” というネットロアが信じられるのか?
なぜ何段階もの校閲を経由して発信されている "オールドメディア" が信じられず、発信者の正体もわからぬあからさまに怪しい動画やSNSを信じてしまうのか?」
後半はヤケクソだ! 言いたかったことを言っている。
ボクは、イネさんに迫った「イネさん! 心霊教の連中が言う地獄を信じますか? それとも阿弥陀如来の極楽浄土を信じますか? どっちですか?」
しばしの沈黙ののち、イネさんは答えた「…どちらも、どちらも信じられません」
(この項つづく)
※ リアル作者注:
岩波文庫『浄土三部経 上: 無量寿経』梵文和訳 註P252に、次のような記述があります。
ローケーシヴァラ・ラージャ― Lokeśvararāja. 「世自在王仏〔せじざいおうぶつ〕」と訳され、無量寿仏の師として重要である。<中略>しかしローケーシヴァラとはヒンドゥー教ではシヴァ神の別名であるから、この点で何らかの連絡があるのかも知れない。
高畑勲が清太と節子の魂を救っていると私が考える根拠は、この過去記事中に書きました。
追記:
続きです。
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