目次 各「その1」のみ クリックで詳細表示
(13) 第3景【鎌倉編】馬借・欠七(1/2)
(15) 第4景【現代編】個室病棟にて(1/2)
(17) 第5景【鎌倉編】ボクの無双(1/2)
(19) 第6景【鎌倉編】被差別集落(1/4)
(23) 第7景【鎌倉編】霊感商法(1/5)
(28) 第8景【現代編】ボクシング
(29) 第9景【鎌倉編】地頭・稲田(1/2)
(31) 第10景【現代編】哲学者
(32) 第11景【鎌倉編】心霊教ふたたび
(33) 第12景【現代編】裵〔ペ〕デスク
(34) 第13景【鎌倉編】刺客
(35) 第14景【現代編】守衛
(36) 第15景【鎌倉編】大団円(1/4)
(40) 第16景 鎌倉編の後始末
(41) 終景 現代編の後始末(1/3)
新着お目汚しを避けるため、日付をさかのぼって公開しています。体裁にこだわらず頭の中にあるものをダンブしている、という意味です。 あとからどんどん手を入れる予定です。前回はこちら。
(主人公「ボク」による語り)
ボク「脱・洗脳!」
ボクは自分の顔に、自然に笑みが浮かぶのを感じた「洗脳解除、成功だ!」
いっぽう鶴御前やカメさん、心霊教の人たちは、あきらかに動揺していた。
ボク「イネさん、それでいいんです。信じなくてもいいんです。逃げましょう!」
鶴御前「なにを言うサタン!」イネさんに「こんな奴の言うことを聞いてはいけない!」
ボク「マメさんと一緒に逃げましょう。稲田地頭さまの本家のほうで、面倒を見てくれると話はついています。きっと、なんとかなります」
本当はそこまで詰めた話はまだしていなかったのだが、稲田地頭もとっさには否定できまい。ボクにはずるいところがある。
困ったときには相談する、逃げる。これが鉄則! 大事なことだから何度でも繰り返す。
マメ「お母さん、逃げて!」
イネさんは、縁側から飛び降りた。心霊教の人たちは止めようとするそぶりを見せたが、間に合わなかった。そしてマメさんのところに来ると、二人はひしと抱き合った。
鶴御前、怒り心頭という表情を見せつつ「おのれ、こんなことをしてどうなるか、わかっているのか…」一呼吸おいて、ボクたちの後方に視線を移し「おお、尉〔じょう〕どの!」
えっ!?
ボクは後ろを振り返った。またしても刺客の尉がいた。
抜き身の太刀を掲げていた。そしてまたしても、ただならぬ殺気を漂わせていた。
尉「雌剣は使い物にならなくなった。大きな刃こぼれができ、いくら研いでも元に戻せなくなった。これは雄剣だ」
雌剣、雄剣って『るろうに剣心・京都大火編』の逆刃刀かっ? その元ネタの可能性がある中国の怪奇譚『眉間尺』かっ? 魯迅『剣を鍛える話』かっ?
尉「雄刀を抜いた以上、俺はどうしてもお前を斬らねばならない」
絶対殺すマンかっ?
とにかく逃げなきゃと思ったボクの鼻先に、記憶のあるケモノの臭いが強く匂った。
ボクと尉の間に、大柄な男が割って入った。
ボク「捨六さん!」
捨六さんは、両手に鉄の棒のようなものを持っていた。脇差ほどの長さだ。
捨六さんは、その棒を✖〔バツ〕の字に持って、尉の刀を受け止めた。
尉の刀は、あっけなく折れた。
ぼうぜんとする尉の脳天に、捨六さんは鉄の棒を打ち込んだ。
尉は、その場に転倒した。
なんでボクを助けてくれるんだ?
鶴御前は、真っ青になったり真っ赤になったりしながら、絶叫した「皆の者、出会え!」信号機か?
おなじみの大柄な男、小柄な男の凸凹コンビはじめ、十数人の荒事師たちが駆け込んできた。今度は手に手に大刀の抜き身を持っていた。いらんわそんなおなじみ!
真っ先にかかってきた大柄な男の大刀を、捨六さんは鉄棒で受け止めた。
大の男同士だったら双方とも両腕で鍔ぜり合いをしなければならないはずが、人並み以上の腕力であろう大柄な男の刀を、片手で受け止めたのだ!
そして自由なもう片手で、相手の脇腹に強烈な打撃を加えた。
肋骨、何本も折れたぞ! 大柄な男は横に倒れ込んだ。
凸凹コンビの小柄な方が、正眼の構えで飛び込んできた。
捨六さんは今度は、二本の鉄棒を揃えて、小柄な男の刀に水平回転で打ち込んだ。
小柄な男は、刀ごと真後ろに吹っ飛ばされた。両足が地面から離れていたぞ!
捨六さんは力がべらぼうに強いだけでなく、体の使い方が合理的なのだ。まるで野球のバッターがホームランを打った時のように、腰が回転し、両手の鉄棒が体の横に美しく流れた。二刀流って、そういうことか?
ところで捨六さんの武器の鉄棒は、金剛杵〔こんごうしょ〕という密教の法具ではないかと思った。元はインドの武器だったはずだ。握りの上に、鍔のような刃止めの出っぱりがある。
正面からでは敵わないと思った荒事師たちは、捨六さんの背後に回り込むことを試みた。
そこへ、前方宙返りで割り込んだ男がいた。欠七さんだ! 前方宙返りする必然性あったの?
欠七さんは素手だった。刀を "突き" に構えて突っ込んできた荒事師をあざやかにかわし、合気道の要領で投げ飛ばす…のかと思ったら、体を後ろ向きに一回転させて、かかとで相手の胴に強烈な回し蹴りを食らわせた。
プロレス技のローリング・ソバットじゃないか!
膝関節が曲がる方向と打撃方向が同じで、かかとが相手を打撃するため、どこも衝撃を緩和するところがないからメチャメチャ痛いはずだ。果たして回し蹴りを食った相手は立ち上がれなかった。
後ろから、荒事師がもう一人、大上段で切り込んできた。欠七さんは着地すると、その場で再びジャンプし相手の後頭部に足の甲でハイキックをかませた。
延髄斬り! またしてもプロレス技!
ちなみにボクシングでは、後頭部への攻撃は "ラビットパンチ" といって禁止されている。
すてさん…かけさん…
すけさん…かくさん…
ひょっとしてこれは『水戸黄門』なのか? 黄門さま一行に助けられる側から見たデウス・エクス・マキナなのか?
中庭に、もうひとグループ、駆け込んできた男たちがいた。
先頭に只丸くんがいた「地頭館の衛士さんたちです」
ありがたい、味方だ!
衛士は4、5人と人数は多くなかったが、イネさん、マメさんと村人たちを庭の片隅に集め、その外側を取り囲んで刀を構え、守ってくれた。稲田地頭も自分の太刀を抜いて、護衛に加わった。
ボク「只丸くん、ありがとう。でも、どうしてここへ?」
只丸「秘書インコが知らせてくれたんです」
ボク「秘書インコ? 壊れたはずでは?」
只丸「阿弥陀さまが、機種変更してくれたんです」
えっ、えっ、この子は何を言ってるの? "あみださまが きしゅへんこう してくれた"? 何のことだか、まったくわからなーい!!
乱闘はまだ続いている。荒事師たちはだいたい片付いたはずだが、今度は捕物用の長い棒を携えた男たちが入ってきた。郡衙側の衛士だろう。だが、なんで郡衙の衛士が心霊教の味方をするんだ?
捨六さんと欠七さんは、かまわず格闘を続けた。
捨六さんも素手になった。金剛杵を帯に挟んだのだ。そして衛士の棒を手でつかみ、こともなしに捻って相手を回転させる。
欠七さんは、相変わらずキック主体だ。うわっ、こんどはオーバーヘッドキックだ! 格闘技にオーバーヘッドキックを使う奴、いたっけ?
二人とも、息を切らしたようにも見えない。汗すらかいてないみたいだ。そんなことって、あるの?
デウス・エクス・マキナで、ボクの脳裏に、もう一つ思い浮かんだことがあった。
ボクは、叫んだ「やめろーっ! この人たちは、たぶん人間じゃない」
ボクの叫びは届かなかった。だけど、叫ぶしかなかった「やめろーっ、お前たちのために言っているんだ! お前たちの敵う相手じゃないんだったら!」
地頭館の衛士の一人が言った「危ないです! お下がりください」
果たして郡衙側の衛士が、捕物棒で打ち込んできた…と思ったら「痛っ」と言って腕を押さえ、棒を取り落とした。
殺陣で痛がる奴は珍しい、というのは措いといて、手裏剣のような飛来物が飛んできたのだ!
飛来物が飛んできた方を見ると、金老人が、何人かの熊野衆に囲まれて立っていた。木の杖をついている。杖のトップはコブになっている。
たぶん熊野衆の中に ”風車の弥七" か "かげろうお銀/疾風のお娟" か "柘植の飛猿" のような、ゲストキャラには姿を見せない隠密キャラがいるのだろう。ってボクはゲストキャラかーいっ!?
でもそんな隠密キャラがいたのなら、ゆうべ刺客に襲われたときに守ってくれればよかったのに。いや、刺客と荒事師が深追いしてこなかったのは、隠密キャラが邪魔をしてくれたからだろうか?
(この項つづく)
追記:
続きです。

