しいたげられたしいたけ

空気を読まない 他人に空気を読むことを求めない

小川洋子『博士の愛した数式』(新潮文庫)

博士の愛した数式 (新潮文庫)

博士の愛した数式 (新潮文庫)

話題のベストセラー、遅ればせながらやっと読みました。話題になるだけの事はあるわ。私的にも五つ星。
映画化されたりして、あらすじはよく知られていると思うので、思いついたことを順不同で。登場人物に誰一人として名前がないんだよね。「私」「博士」「ルート(私の息子)」「未亡人(博士の義姉)」…実在の人物は、江夏豊やオイラー(と言ってもこいつ→(ν・▽)νじゃない)はじめ実名で次々と登場するのに。唐突だが『サイカノ』を想起したぞ。「取り返しのつかない」感というか「終わってしまった」感というかを演出するのに、名前をあげないというのは、よい手段なのかも知れない。
数式というのが、オイラーのアレ(こっち→(ν・▽)νじゃなくて…しつこい)だというのは、予想通りでした。だけど他にもいろんな仕掛けがあちこちにちりばめられていて、一読しただけでは気付かずに通り過ぎてしまったものも少なくないかも知れない。「あっ」と思った仕掛けの一つは、1992年という時代設定で、ネタバレになるかもだから例によってフォントの色を白にしときます。
阪神タイガースがシーズンの最後まで首位を争った年であり、翌93年にはイギリスの数学者ワイルズがフェルマーの最終定理を証明した(蛇足ながら後に不備が見つかり、完全証明は95年)。
なおハイになって、「双子素数が無数に存在するかは未解明だが、三つ子素数は存在しない証明」などというものを某所に書いたが、あれは間違いでした。3・5・7という反例が厳然として存在します。
追記:
登場人物に名前がなくて「取り返しのつかない感」「終わってしまった感」の濃厚な物語の元祖は、夏目漱石の『こころ』じゃないのか!?とこれも唐突に思いついたので、書いときます。