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関根眞一『となりのクレーマー―「苦情を言う人」との交渉術』(中公新書ラクレ)

となりのクレーマー―「苦情を言う人」との交渉術 (中公新書ラクレ)

となりのクレーマー―「苦情を言う人」との交渉術 (中公新書ラクレ)

すみません、正直「蜜の味」的なものを期待して読み始めました。著者は元西武デパートの「お客様相談室」の責任者。現在は独立して、歯医者さんなどを相手にクレーム対応のコンサルタントをしている人。
目次の順に内容を並べると、結婚指輪の発注トラブルから「結婚できなくなる」とねじ込む女性客、水を入れて使うコンロを水を入れないで使ってテーブルを焦がし「誠意を見せろ」と主張する年配の男性客、ダイヤのネックレスを洗浄したところ留め金が壊れ「質入れする予定だったのにできなくなった」とすごむ暴力団員、などなど…
著者は、これらの事例をいずれも丸く収めてしまうのである!
決して魔法を使ったわけではない。夥しいエネルギーと数ヶ月単位の長い時間をかけてであるが、いずれも、あくまで話し合いによって解決してしまうのである。
秘密のエッセンスは、p156〜157に書かれていることだと思う。「お客様相談室」は誰の立場に立つのか?ズバリ「お客様の立場」が正解なのだそうだ。著者は「お客様相談室」に配属されて、一年経って「ようやく店側でも顧客側でもない、中立の立場になれたと自覚でき」るようになったそうだが、それでは不完全で、二年目には「困っているのは、一刻も早く問題を解決したいお客様なのだ。お客様の苦痛を早くやわらげるには、お客様の立場になることだ」と悟ったという。
しかし、三年経つと、ほぼ顧客側の立場に立てるようになり、そうすると不思議なことに八割は電話だけで、残りの二割も店内で調査して後日連絡することで解決できるようになったという。
いや、わかるような気がする、私の拙い経験の中でも「ここで意地を張ったら失敗するな、自分を通そうとしたら失敗するな」と頭の中で声が聞こえていながら、意地を張ったり自分を通そうとして、何度痛い目に遭ったことか。「苦情処理は『勝ったら負け』」(p179)なのだ。これは、学ばねば。