🍉しいたげられたしいたけ

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氷室冴子のエッセイを二冊

別の本のレビューを書こうと思ってグズグズしているうちに、違う本を二冊読んでしまった。
『冴子の東京物語』(集英社文庫)

冴子の東京物語 (集英社文庫)

冴子の東京物語 (集英社文庫)

『いっぱしの女』(ちくま文庫)
いっぱしの女 (ちくま文庫)

いっぱしの女 (ちくま文庫)

ダンボールに入った積ん読を仕分けしていたら、出てきた。氷室冴子のエッセイは『冴子の母娘草 (集英社文庫)』がめちゃめちゃ面白かったので、同じ著者の本ということで買い込んで、そのままになっていたのだ。
物を書く人に対する追悼としては、その人の書いたものを読むにしくはないと思っているので、ページを開いてみた。
一気に読んでしまった。
『東京物語』は初版が'90年。高校時代からの友人三人の話が印象的。ウィキペによれば『雑居時代』や『恋する女たち』は彼女たちとの共同生活がモデルとか。また『少女小説家は死なない!』の主人公の貧乏体験も、当時の生活を反映しているとのこと。もっと早く読んで読み比べればよかった。
『いっぱしの女』は初版が'95年。『母子草』と同じ時期のことを扱っている。著者の母上がテレビ番組で占い師に著者の結婚が遅いという悩みを相談し、激怒した著者が母上に義絶を迫る(義絶って親から子に対してするものじゃないのか?)という騒ぎに発展するエピソードは、本書にも少し出てくる。
それにしても、すごい才能の持ち主だったと、改めて思う。
かつて集英社コバルト文庫に収録されたいくつかの作品を読んで、一つの事件を複数の登場人物の異なる視点から描くことのできる著者の力量に驚愕したが、そうした能力を培ったのが、上掲の両書に描かれているような、魅力的な友人たちとの交流であったり、またケータイなどのない時代に平気で8時間を越えたという長電話癖であったりしたのだろうかと、なんとなく創作の秘密の一端を垣間見させてもらったような気分になった。
冴子の母娘草 (集英社文庫)

冴子の母娘草 (集英社文庫)