しいたげられたしいたけ

空気を読まない。他人に空気を読むことを要求しない

吉田太郎『世界がキューバ医療を手本にするわけ』(築地書館)

世界がキューバ医療を手本にするわけ

世界がキューバ医療を手本にするわけ

いろいろな本を読むと、アメリカ医療のとてつもない高コスト体質が見えてくる。それと対蹠的なのが、基本無料のキューバ医療で、結果、キューバの乳児死亡率はアメリカのそれより低いそうだ(アメリカ1000人当たり7人、キューバ1000人当たり6.2人、2005年。p16〜17)。
キューバは2005年現在、2万4950人の医師を世界68カ国に派遣しているという(p155)。またハバナラテンアメリカ医科大学は27カ国から1万661人の留学生を受け入れているという(p160)。授業料と生活費など経費は一切キューバ政府持ちだそうだ。驚くべきことに、その中には88人のアメリカ人が含まれているという!その多くの部分を占めるのがマイノリティや女性で、アメリカで医療サービスのカバーが薄い層に対応しているそうだ(p167)。
さらにスケールが大きいのが「奇跡の治療」と名づけられたプロジェクトで、これはラテンアメリカカリブ海諸国を中心に、2005年から10年をかけて白内障などによる視力障害に苦しむ450万人(!)に無料の治療を施す眼科治療プロジェクトである(p174〜)。
これらのキューバの国策は、言うまでもなく超大国アメリカを敵に回して生き残るための国際戦略である。
本書には書かれていないが、キューバが一人の医師を外国に派遣する費用は、アメリカがイラクアフガニスタンで爆撃機を一回出撃させる費用より少ないだろう。アメリカが爆撃を一回行うと、反米主義者が世界で数十人から数百人増えるだろう。キューバが無料診療所を一箇所開設すると、増える親キューバ主義者は数百人から数千人単位ではないだろうか。
オバマ新大統領は就任演説で「理想主義と現実主義は両立しないという考えを拒否する」という意味のことを語っているはずだ(念のために検索したところ、正確には「安全か理想かという二者択一は間違いであると拒否する」だそうです)。アメリカの新政権には、ぜひともキューバの国際戦略を見習って欲しい。