しいたげられたしいたけ

空気を読まない、他人に空気を読むことを求めない

速水健朗『自分探しが止まらない』(ソフトバンク新書)

自分探しが止まらない (SB新書)

自分探しが止まらない (SB新書)

平行して読んでいると、どうしてもアクの強い方の本に印象が引っぱられる傾向がある。いや、この本はこの本ですごい本だとは思うのだが。なにせ本文で引用される参考文献だけで50冊以上、さらに言及されているテレビ番組・ヒット曲・webサイトを数え上げると、どのくらいの数になるか計り知れない「考現学」の書なのだが。
著者は、雨宮処凛『プレカリアート―デジタル日雇い世代の不安な生き方 (新書y)』を引いて「フリーターが増える理由は新自由主義」(p106〜)とする説を紹介したり、1940年代に、それまで有色人種を排除していたMLBに、ジャッキー・ロビンソンという初の黒人メジャーリーガーが誕生したことにより、多くの黒人少年が学業に充てるべき時間を野球という夢を追うのに費やしたため、「ひとにぎりの成功者と圧倒的多数の敗者を生み出すという構図を拡大した」すなわち「若者が夢を追うと格差が生まれる」(p132〜)と結論づけたりしている。
日本のいわゆる「改革」は、どの程度の検討を加えた上でかは知らないが、アメリカ型自由競争社会をモデルとしていると思われるフシがあるのだが、もしかしたらその上にアメリカのような軍事志向国家を目指そうとするベクトルもあるのではないかという気がして仕方がない。そう考えるとジグソーのピースのようにことんと腑に落ちるのだ。『若者を見殺しにする国 (朝日文庫)』で「希望は戦争」と主張した赤木智弘には、本書ではp201でわずかに三行言及され、著者は「もちろんそのような個人的な都合で戦争なんぞ起こらない」と切って捨てているのだが、堤未果を読むと、アメリカの産業構造には、軍需産業のみならず人材派遣業のような業種まで戦争利権を享受する構図があるようだし、戦争に「希望」を幻視するのは個人にはとどまらないのだ。
プレカリアート―デジタル日雇い世代の不安な生き方 (新書y)

プレカリアート―デジタル日雇い世代の不安な生き方 (新書y)

若者を見殺しにする国 (朝日文庫)

若者を見殺しにする国 (朝日文庫)