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湯浅誠『反貧困―「すべり台社会」からの脱出』(岩波新書)

反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書)

反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書)

うわっ、ひょっとして今のところ今年ピカ一の収穫かもしれない。文句なしの自分的五つ星。
引用したいところだらけなんだけど、とりあえず二箇所。「水際作戦」とか称して、役所が生活保護申請者に対して申請書を渡さないといった行為が問題になった。役所側としては、生活保護の不正受給者を減らすためとか何とか言っているようだが、本書p28によると、実際に生活保護が必要な生活レベルで暮らす人たちのうち、どれだけの人たちが実際に生活保護を受けているかを示す指標に「捕捉率」というものがあるんだそうだけど、なんと政府はその捕捉率の調査を拒否しているのだそうで、学者の調査では日本の捕捉率は15〜20%に過ぎないのだそうだ。
一方、生活保護の不正受給率は、印象深かった4/25深夜の『朝まで生テレビ』のやりとりによると0.3%、とうてい捕捉率の低さと釣り合いが取れるものではない。「不正受給者がいるから生活保護の認定基準は厳しく」という主張は、明らかにデータの裏づけを欠いたものなのだ。
もう一箇所。著者は『ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)』に描かれた、「貧困による閉塞状況が若者たちを志願して軍隊に入隊させ、戦争に駆り出す効率的な手段として利用される」という現代アメリカのレポートを引用し、そうした状況は日本でも生まれ始めていると語る(p212)。ワーキングプアの若者たちに自衛隊の募集担当者からのアプローチがあり、野宿者の中にも少なからぬ数の自衛隊経験者がいるという。彼らが自衛隊に入隊した理由はただ一つ「食べていくため」だそうだ。
BUNTEN さんが最近のエントリーで…
http://bunten.cocolog-nifty.com/bunten/2008/05/post_4546.html

冒頭の劇でも徴兵制がどーのこーのというお決まりの話が出てきたが、現代日本で最も可能性が高いのは米国型の、貧困層をリクルートするパターンのよーな気もする

と書いているけど、同じようなことに気づいて警告を発している人が増えているような気がする。
追記:
上記の例として雨宮処凛氏の名前を挙げたけど、記憶違いだったようなので訂正します。
4/27のエントリーで引用したネットカフェに7年住んだという派遣労働者は、実は湯浅氏が対応した事例で、本書ではp88〜で言及されている。もちろん『プレカリアート―デジタル日雇い世代の不安な生き方 (新書y)』には雨宮氏自身が取材した事例もたくさん登場するのだけど」という部分は事実なので残します。

ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)

ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)

プレカリアート―デジタル日雇い世代の不安な生き方 (新書y)

プレカリアート―デジタル日雇い世代の不安な生き方 (新書y)