- 作者: 阿満利麿
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1996/10/01
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著者の主張によれば、宗教には「創唱〔そうしょう〕宗教」と「自然宗教」があるという(p11〜)。「創唱宗教」とは特定の教祖と経典がありそれを信じる信者がいる宗教のことで、キリスト教、仏教、イスラム教から新興宗教までが含まれる。一方、自然宗教とは、いつ、誰によって始められたのかを明確にすることができない、自然発生的な宗教のことだという。正月には初詣に行き、彼岸や盆には墓参りを欠かさず、クリスマスも祝う平均的日本人は、「自然宗教」の熱心な信者と言える。それに比べて「創唱宗教」に対しては冷淡であるかまたは警戒心を抱く日本人が多い。
なぜそうなのかということに関して、著者は明治維新による影響が大きいと論じ、明治政府が国民に強制した「天皇崇拝」は、間違いなく一種の「創唱宗教」であったと述べる(第3章)。
このあたり、個人的には以前に読んだ『神々の明治維新―神仏分離と廃仏毀釈 (岩波新書 黄版 103)』を思い出すところが多く、例えば西本願寺の僧である島地黙雷に言及した部分(本書p87〜、『神々の…』p181〜)は、少し時間をとって読み比べてみようと思う。
大逆事件に巻き込まれて獄死した真宗大谷派の僧・高木顕明に関する記述も印象的である(p116〜)。
なお、日本人の「創唱宗教」への冷淡あるいは無関心には、明治維新と並んで敗戦(=天皇の権威の失墜)の影響も大きかったのではないかと思うのだが、それについては本書は言及していない。また他国との比較がもっと欲しいとも感じた。ぱっと思いつくところでは、欧州ではプロテスタントv.s.カトリックの対立が近代の幕を開けるきっかけの一つになったこともあり、両者合い競うことがキリスト教の求心力を高める結果につながったのだろうか?米国は、ピルグリム・ファーザーズを持ち出すまでもなく、建国の段階から宗教の果たした役割が大きい。中東に関しては、『イラクは食べる―革命と日常の風景 (岩波新書)』p229〜に、50年代から60年代に、アラブ世界の多くで世俗的なナショナリスト政党が政権をとり、それらのナショナリスト政党はかつてはたいてい社会主義的政策をとり労働者や農民の組織化に努めていたが、政権が長期化し独裁化してゆくなかで貧困層の代弁者たりえなくなってゆき、行き場を失った大衆の支持がイスラーム政党に流れていったという記述があったのを思い出した。
きっちり調べ始めたら本が書けるな。むろん私の手には余るけど(^^;
神々の明治維新―神仏分離と廃仏毀釈 (岩波新書 黄版 103)
- 作者: 安丸良夫
- 出版社/メーカー: 岩波書店
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