しいたげられたしいたけ

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橋本省二『質量はどのように生まれるのか―素粒子物理最大のミステリーに迫る』(講談社ブルーバックス)

質量はどのように生まれるのか―素粒子物理最大のミステリーに迫る (ブルーバックス)

質量はどのように生まれるのか―素粒子物理最大のミステリーに迫る (ブルーバックス)

ヒッグス粒子のことを知りたいと思って『重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る (幻冬舎新書)』に続いて読んだ二冊目。どっちかというと私としてはこっち推しかな。ただしどちらも相当に難解であることには変わりないが。
また『重力とは何か』でもヒッグス粒子の名前が出てきたのは後半のほうだったが、本書でもヒッグス粒子が登場するのは巻も残り少なくなった最終章の第9章。それもそのはず、本書によると、質量は「南部陽一郎が考えた自発的対称性の破れ」(p262)あるいは「量子色力学」で98%が説明できてしまい、残りの2%すなわち「自発的対称性」あるいは「カイラル対称性」が「始めから少しだけ壊れている」ことを説明するために導入されたのが、ヒッグス粒子のもとになっている「ヒッグス機構」という理論なんだそうだ。「カイラル対称性の小さな破れ」とは「クォークがもともともっている小さな質量」(p263)のことなんだそうだ。
書き写している当人の私にもよくわかっていないが(ぜんぜんわかっていないが)、ようするに「質量」を説明するために「質量」が必要になったということらしい。それが2%という数字の表すもののようだ。科学の最先端では、こういう「ウロボロス現象」とでも言うべきことがときどきあるよね。ジャンルは全然違うけど脳科学における「ホマンキュラス」とか。つまり「意識」を説明するために「意識」を持ち出すというアレ。
なお本書はヒッグス粒子発見のニュース以前に書かれたものだが、本書によると物理学者はヒッグス粒子が見つかること自体に関しては全然心配していなかったらしい。本書p288には、LHC*1の運転が始まればほどなくヒッグス粒子発見のニュースが世界に流されることになるだろうという予言があり、これはまさしくその通りになった。専門家が心配していたのはむしろ「ヒッグス粒子だけしか見つからないという退屈な結果になること」(p288)すなわち次の研究のステップへの手がかりとなるものが何も見つからないことなんだそうで、これは現実にはどうなっているのか専門家ならぬ身の私にはわからない。

*1:欧州原子核研究機構(CERN)の大型ハドロン衝突加速器