しいたげられたしいたけ

選択的夫婦別姓の早期実現を求める

小長谷有紀(編)『「大きなかぶ」はなぜ抜けた?』(講談社新書)

「大きなかぶ」はなぜ抜けた? (講談社現代新書)

「大きなかぶ」はなぜ抜けた? (講談社現代新書)

中央アジア・カザフスタンの民話。イスラームの聖者が巡礼の旅の途中、泉のほとりで休んでいると、三羽の白鳥がやってきて、羽毛の衣服を脱いで娘に姿を変え、沐浴を始めた。聖者は彼女らの衣を盗む(どんな聖者だ?)。娘たちは衣を返すように頼むが、聖者は受け入れない。やむなく彼女らのうち一人が聖者の妻となることで合意するが、彼女の頭と足と胸は決して見てはならないという条件をつけられる。この手の条件というのは破られるためにあるもので、お約束通りある日聖者は禁を破って妻の頭を見てしまうのだが、頭からは脳味噌が見えていた。足跡は鳥の足跡のようであり、胸にはぽっかり穴があいていた。約束を破られた妻は白鳥に戻って飛び去るが、彼女は妊娠しており、その子が長じてエディゲという名のカザフの英雄となる…(p110〜111)
日本の三保の松原の天女伝説にそっくりだが、日本のものと比べると驚くほどグロテスクである。英雄エディゲの出生譚は本書には計5種類のバリエーションが紹介されている。
16人の共著者による世界の民話の集成で、著者グループの専攻はモンゴル、ロシア、イラン、ドイツ、イギリス、インド、朝鮮、スペイン、ラテンアメリカ、日本と、世界中をくまなく覆う。いやー、すごいわ。世界には、これまでに一度も聞いたことがないような物語が、まだまだこんなにあるんだね。
ただしタイトルは例によってアイキャッチャーという感じで、表題に関しては一応の説明こそ提示されているが、明快な謎解きがあるわけではない。謎解きと言えば文化人類学の立場から書かれた『タブーの謎を解く―食と性の文化学 (ちくま新書)』という名作があって、実はその手の内容を少々期待したのだが、その意味ではぶっちゃけタイトルに騙された。いや、本書を手に取ったことをかけらも後悔してはいないのだが。
タブーの謎を解く―食と性の文化学 (ちくま新書)

タブーの謎を解く―食と性の文化学 (ちくま新書)