1テーマで1エントリーを起こすほどではなく、さりとて自分のために記録しておきたい「言葉」の小ネタ集です。直近の何日かは小ネタ集ばかりやっており、小ネタ集を始めると小ネタ集しか書けなくなる傾向があるというのは以前も書いたことがあるが、でもやはりエントリーにしておきたいかな。
何人かの方にIDコールが飛びます。お騒がせ失礼します。
目次
スポンサーリンク
「ザカルパッチャ」「ザバイカル」
5月16日付拙エントリー に、服部・原田編著『ウクライナを知るための65章』(明石書店) からウクライナ西部のザカルパッチャ州について少し抜き書きした。第一次世界大戦と第二次の戦間期にはチェコスロバキアの一部となったが、歴史的にはハンガリーの支配下にあった時期が長く、一時チェコスロバキアに帰属したのは自治権を与えられる約束があったからという内容だった。
その記事に b:id:Tetrapost さんから次のブックマークコメントをいただきました。ありがとうございました。
《ロシアのウクライナ侵略に抗議します》スタンディング&キャンドルナイト@栄ヒサヤオオドオリパーク - 💙💛しいたげられたしいたけ
地理によって必ずしも国境線が引かれず「大陸に分布する民族、言語、文化には、グラデーションが存在する」ことを表す例としてのザカルパッチャ州(越カルパート地域)。山脈を越えてウクライナ人が多く住む地域。
2022/05/16 21:29
そうそう、ウクライナ主要部から見てカルパート山脈を越えた地方だから「ザカルパッチャ」だということは、拙記事本文のどこかに書いておくべきだったと少し後悔しました。
追記しようかとも思ったけど、収まりが悪かったので見送った。
その後、岩波新書『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』の著者である大木毅氏の、次のウェブ記事を読んでいたところ…
「ザバイカル」という言葉がしばしば出てくることに反応した。「越バイカル」すなわち旧ソ連で人口がいちばん密集していた地域から見て、バイカル湖より遠くにある地域という意味だろう。
「ザ」という接頭辞は、英語だと「トランス」に相当するのかな。一例だが中東ヨルダン王国の英国から独立した当初の旧名トランスヨルダンは、「ヨルダン川東岸」という意味だそうで、ヨーロッパに近い地中海から見ると遠い側にある。
ところでこの記事で書いていることは、上っ面だけというか、書籍『ウクライナを知るための65章』や『独ソ戦』はもちろん、大木氏のウェブ記事とも比較にならないごく薄っぺらいものでしかないことをお断りしておきます。
戦略ー作戦ー戦術
『独ソ戦』と言えば、4月25日付拙記事 に同書から「作戦術」について説明している部分を引用した。スヴェーチン、トリアンダフィーロフ、トゥハチェフスキーら旧ソ連の将校たちによって構築された、戦略すなわち戦争そのものに勝つことと、戦術すなわち個々の戦闘に勝つことの中間に存在する次元とのことだ。
ただし私がこの概念をきちんと理解できていないことは、同拙記事中で述べた通り。「戦略」と「戦術」の違いなら、素人なりにわかる(ように思う)。戦国時代の小牧長久手の戦いで、徳川家康は長久手の戦いという戦術的局面では勝利したが、戦全体という戦略的局面では豊臣秀吉に屈服した、とか。あと田中芳樹『銀河英雄伝説』の最初のほうで、ヤン司令が敵軍の戦力を「戦略的に半分にし、戦術的にさらに半分にした」と描くくだりがなかったっけ(未確認
「作戦術」に関しては、私はこんな例が引けない。
ところで2021年4月公開の vice さんの記事を、ツイッターのTLにリンクが流れてきたことをきっかけに読んだ。
前段にあたる「自衛隊の危機 01―なぜ、ネトウヨの浸透を許しているのかー」ともどもとんでもねー内容で深い憂慮を催させる記事なのだが、それはそれで別に論じなければなるまい。
繰り返すが今回の拙稿は、言葉という上っ面を撫でることだけが目的である。
軍隊の運用能力は、およそ3つの段階で議論される。それが〈戦略/作戦/戦術〉である。たとえば、仮に、中国(軍)が尖閣諸島を急襲し、占拠してしまった場合――。〈戦略〉は、以下の3つの場面で必要とされる。
≪中略≫
そして、その戦略を担保するために、尖閣を奪還する具体的な計画が〈作戦〉で、その作戦を成立せしめるパーツを〈戦術〉という。
自衛隊の危機 02―彼らは〈戦争〉を始めようとしているのか?― より
「作戦」は、スポーツやゲームでプレイ中の相談のことを「作戦会議」と称することがあるように日常用語としても使われるが、軍事用語としても実用されているのかと改めて思った。
そんな言葉は他にあるかな? とっさに思いついたのは「大将」で、日常用語では「店主」や「親分」の意で使われるが、軍隊の階級を示す言葉でもあり組織内の役割などが厳密に定義されている。
もう一言。「作戦術」は元はロシア語だが『独ソ戦』P154によると英語では "operational art" とのこと。戦略が "strategy"、戦術が "tactics" であることに比べ、やはり日常的な言葉が充てられていることが興味を引く。
それで思い出した。小松左京に「サテライト・オペレーション」という短編があり、短編集のタイトルにもなっている。"operation" には「作戦」の他に「運転」「手術」などの意味もあり、ラストまで読むとタイトルは鮮やかなダブルミーニングであることが判明する。
「くちくなる」とは言うけれど
話はがらっと変わって、今月の上旬に「日本語人工言語説」というのを冗談交じりに何度かネタにした。根拠の一つは、日本語の活用に例外が極めて少ないという特徴だった。
この特徴は私だけが言っていることではなく、例えば民族学者の梅棹忠夫は『実戦・世界言語紀行』(岩波新書) P204に、日本語の動詞は二三の例外を除きほとんどすべてが規則動詞であり、また人称変化や名詞の性・複数形もないことから、外国人にとって決してむつかしい言語ではないだろうと書いている。
ところで故梅棹氏は言語学者ではないが、専門の民族学の研究の必要上きわめて多くの外国語を学ばれかつ実際に使われてきたようで、『実戦・世界言語紀行』の見出しからざっと拾って数えただけでも学ばれた外国語の数は30を下らない。まさに驚きである!
その数少ない例外に当たるのではないかと、5月6日付拙記事 では新語「萌え」「萎え」の未然形または連用形が終止形のように使われていることを挙げた。
他にないかとちょっと考えて、やや古めかしい言葉として「満腹になる」という意味の「(おなかが)くちくなる」というのを思いついた。
weblio辞書 には"形容詞「くちい」の連用形" と書かれていたが「くちい」なんて使われるだろうか?
5月4日付拙記事 には形容詞「いい」には未然形、連用形、仮定形がないとするweb記事を貼った。「うい」「すい」もやはり未然形、連用形、仮定形はないかまたは不自然だとも書いた。それにならって「くちい」は連用形以外がないか不自然とすることができるかも知れない。
むしろ「くちくなる」全体をラ行五段活用の動詞と考えたほうが自然のような気もするが、どんなものだろうか。
「くちくなる」も一連の拙記事のどれかに追記しようかと考えたが、例によってどこも収まりが悪くできなかった。よってこの小ネタ集に収録する。
追記:
b:id:mugi-yama さんから驚愕のブコメをいただきました。ええっ! そうなんですか??
「言葉」に関する小ネタ集(言及多め) - 💙💛しいたげられたしいたけ
- [コトバ]
うちの奥さんお腹いっぱいになると「くちいくちい」って言いますよ。さすがに珍しい言い方なので聞いてみたら、おばあちゃんの影響とのこと。
2022/05/29 03:46
これでこの節の論旨が完全に崩壊してしまいました。さりとて訂正するにしてもまるまる削除する外なさそうなので、追記して元の文章は残すことにします。
追記おわり
多かれ少なかれ、大なり小なり、良し悪し
活用については、ツイッターのFFさんでもある dk4130523(id:cj3029412)さんが、こんなツイートをされていました。
「多かれ少なかれ」は已然形(仮定形)
— nekohanahime (@nekohanahime) 2022年5月20日
「大なり小なり」は連用形
これ、だれか研究しないかな。
思わず反応して、こんなリプをつけました。
良し悪しは終止形。
— しいたけ💙💛しいたげられた (@wtnb4950) 2022年5月20日
こうした現象も「活用のイレギュラーさ」に当たるだろうか? 日本語を外国語として学ぶ人たちに対しては、どんな説明がなされているのだろうか? どの言語にもネイティブはやすやすと使いこなすが外国語として学ぶものにとっては習得が著しく困難な不規則性というものはあり、日本語もまた例外ではないのであろう。
追記:
今思いついた。「しろくろ」「あかあお」などは、活用語尾なしの語幹だけを並べている。
追記おわり
「おざなり」と「なおざり」って言うほど間違わなくない?
google:おざなり なおざり で検索すると多数のサイトがヒットするのだけど、web記事のどれかを読んでいたら確か「なおざり」の方が使われていて、何の問題もなく理解できると感じた。
何か書きたくなって、すみません、直後にたまたま id:h14862010 さんのこの記事を読んだので…
sukinakoto-happy.hatenablog.jp
次のブコメを投入しました。IDコールお騒がせします。
いじわる漢字Q(ミラクル9から)5月25日 - 好きなことを知っている人は、しあわせ
ここのブコメに投入するのは適切でないかもだけど、「おざなり(御座成り)」と「なおざり(猶去り)」を混同する人は言うほど多くなくてみんなきっちり使い分けているのは、漢字が頭に浮かぶからだろうか?
2022/05/27 10:13
連携ツイートへのセルフリプ。念のため。
おざなりはとにもかくにもできている
— しいたけ💙💛しいたげられた (@wtnb4950) 2022年5月27日
なおざりならばできてもいない
「なおざり」は「等閑」への熟字訓にも充てられる。
スポンサーリンク