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松浦友久『漢詩―美の在りか』(岩波新書)

以前、中国史にハマっていた時期がある。ここ何年かは、仏教仏教と騒いでいる。漢文が読みこなせたらいいなと思うことが多い。
実は、漢詩にも興味がある。とは言っても知識は高校古文程度だが。しかし、例えば駒田信二訳の『水滸伝』を読むと、漢詩がいっぱい挿入されていて驚いたりする。ちょうど『源氏物語』に短歌がちりばめられているようなものだ。あるいは仏教の経典には偈〔げ〕と呼ばれる詩文が挿入されているものが少なくない。
新書の一冊も手にとっておこうかという気になって、読んでみた。
鑑賞の手引き的な本である。第一章は、陶淵明、李白、杜甫、白居易(楽天)といった、唐代の代表的な詩人の紹介。第二章は、漢詩の代表的なテーマとして、「友情」「戦乱」「懐古」「飲酒」がよく取り上げられることの説明。第三章は、律詩と絶句、古体詩と近対詩、五言と七言といった分類に基づく詩型の説明(ちなみに偈は本書ではp161の分類表に一度出ているのみだな)。第四章は詩に詠われた名跡の紹介に充てられている。
引用されている詩文は、原文と読み下し文、それに、きわめてわかりやすい現代語の訳文が付されている。これはありがたい。
ただし、前述の通り本書はあくまで鑑賞の手引き的なもので、平仄の合わせ方とか韻の押し方とかについては書いてない。本書の第五章は『「文語自由詩*1」としての訓読漢詩』と題して、日本の漢詩人と日本人の作った漢詩についてページが割かれているのだが。
漢詩の作り方に関しては、別の本を読めってことか。
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*1:「自由詩」に傍点あり