しいたげられたしいたけ

自助してない奴はいない!

筒井康隆を二冊

『ロートレック荘事件 』(新潮文庫)

ロートレック荘事件 (新潮文庫)

ロートレック荘事件 (新潮文庫)

叙述トリック叙述トリック言うなぁ〜っ!(T_T)←自分でも言っとる
叙述トリックの名作として名高い本書だが、未読だったので読んでみた。
なぜだ?開巻早々の「第二章 起」で、メイントリックがわかってしまったのは、なぜだ?車に乗っているシーンでわかってしまったのは、なぜだ?
今回はネタバレサイトを読んだからではなく、どうも思い返すと、2chミステリ板の「モナギコ蜘蛛の会」という創作推理クイズのスレッドに本作のパロディとおぼしき問題があったのだと思う。で、その内容だけを憶えていたのだと思う(断言できないのはスレを特定できないため)。
先入観なしでこの手の本とめぐり会えた読者は、本当にラッキーだと思う。ネタバレがNGなのはもちろんだが、「叙述トリック」なら「叙述トリック」というカテゴリ分けだけでも、場合によっては風味を損なう恐れがある(←だから自分でも言っとるて)。
ただし、メイントリックを知っていたというだけでは、作者が周到に廻らせた罠の全体像を見抜くことはできず、「第十七章 解」「第十八章 結」の種明かしに従ってもう一度最初から読み直すことになったのは、本書の書評をブログに上げている大方の読者と同じ。
それにしても、ミステリばっかり読んでいると、殺人があって、人が人を殺すに足る動機が語られるのを読むことが、フィクションとはわかっていてもだんだん苦痛になってくる。

『魚籃観音記』(新潮文庫)

魚籃観音記 (新潮文庫)

魚籃観音記 (新潮文庫)

こちらはSF短編集。表題作は、観世音菩薩が孫悟空と性交してしまうという、とんでもね〜作品。著者には「弁天さま」という短編もあって、神も仏も恐れぬ豪胆さがいっそ快い(^▽^;
本作品には善財童子というのが登場したり、観音さまが「南海の普陀落伽〔ふだらか〕山」というところに住んでいたりと、これは仏教トリビアでは「華厳系」の仏教ワールドということになる。善財童子というのは『華厳経入法界品』の主人公。また『華厳経』では観音さまは普陀落伽山に住んでいることになっているが、浄土系経典(および『法華経』のサンスクリット原本)では観音さまは阿弥陀如来とともに極楽浄土にいることになっている。
つか本作品は『西遊記』をかなり丁寧に下敷きにしていることが伺えるが、『西遊記』がさらに『華厳経』を踏まえていることには気づかなかった!私は『西遊記』はかなり以前に今はなき現代教養文庫で読んだのだが、あの頃はまだ仏教かぶれを発症していなかった。『華厳経』も、いつかは目を通したいと思っているのだが、なにせ原典で六十巻ないし八十巻。文庫本に換算すると30冊近い分量である。いつのことになりますやら。
本書には表題作を含む10本の短編が収められている。著者お得意のメタフィクションが多い。例の「断筆」前後で作風がちょっと変わったかなと思っていたが、断筆以前の作風を思い出させる作品がいくつかあり懐かしかった。