🍉しいたげられたしいたけ

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「誰が主人公を助けるか」(その2:トリックスター編)

やはり2か月ほど前の東京都知事選で、ほぼ無名から2位につけた石丸伸二氏が話題をまいた。

石丸氏を扱った記事の一つに、同氏を小泉純一郎氏、橋下徹氏と並べ「トリックスター」と形容した箇所があった。

toyokeizai.net

彼らをトリックスターと形容するのは、どうだろう? 彼らに似たキャラは大阪府知事の吉村洋文氏、兵庫県知事の斎藤元彦氏、自民党総裁候補の小泉進次郎氏や小林鷹之氏など、次々と登場しているではないか。いずれも(少なくとも登場時点では)若くて2枚目で、輝かしい経歴を持ち、新自由主義的で強権的という共通点がある。すなわち「人気政治家」の大道を歩んでいるのではなかろうか?

言わなくてもいいことを言いたがる悪癖は重々自覚しているといえ、一言だけ。今の年老いて力が弱った日本に、新自由主義路線は適切な政策だろうか? 私はそうは思わない。

民営化一つとっても、NTT(旧電電公社)をほとんど唯一の例外的成功例として、あとはみんな失敗してないか? 少なくとも弊害が目立ってないか?

 

そもそもトリックスターとは何だったっけ。安易と思いつつ、いつもウィキペディアに頼ってしまう。

トリックスター - Wikipedia

典型的なトリックスターとして、シェイクスピア『夏の夜の夢』の妖精パックや、北欧神話のロキの名が挙がっている。

『夏の夜の夢』は未読、北欧神話は、辛うじてブルフィンチ『ギリシア・ローマ神話』に付録のようにまとめられていた章を読んだことがあるが、ロキに関する記述は記憶に残っていない。

大昔の学生時代に海鳴社MONAD BOOK『トリックスター』というブックレットを読んだことはあるが、手元に残っていない。また版元品切れのようだ。印象もあまり残っていない。

筒井康隆『ジーザス・クライスト・トリックスター』も読んだことあるが、参考にはなるまい。同作のジーザズ・クライストは、ただの変な奴だった。

私の読書量たいしたことないにしても、読んでも読んでも未読の本はなくならないなぁ…と何度でもの嘆き。

 

拙稿ではマイ定義として「主人公と敵役の対立軸の外側にいる登場人物」というのを掲げさせていただく。対立軸とは平たく言えば善と悪であるが、今どき純然たる勧善懲悪モノは少なくなったように思われるので、このように形容した。

トリックスターは多くの場合「道化役」という属性を合わせ持つが、道化役が必ずしもトリックスターとは限らない。シェイクスピア『リア王』には「道化(fool)」という重要なキャラクターが登場するが、彼をトリックスターとは誰も言うまい。道化は常にリア王の側である。

 

前回拙記事で鳥山明『ドラゴンボール』のミスター・サタンをトリックスターに分類したのは、悟空とその敵対者の間に割って入るだけの戦闘力を持っていないことが理由である。

もっとトリックスターという語に当てはまりそうなキャラとして、水木しげる『ゲゲゲの鬼太郎』の「ねずみ男」が思い浮かぶ。鬼太郎は人間の味方として人間に害をなす妖怪と戦うが、ねずみ男はそういうことには興味がなく、ただ金や欲に突き動かされて行動している。だが鬼太郎に対しては友情か義侠心のようなものを持っているらしく、ときに鬼太郎の危機を救ったりする。

ただし原作マンガを読むと、ねずみ男はただひょうきんなだけの奴ではなく、かなり危険な雰囲気も帯びている。年上ということで鬼太郎に対し優位に立とうとし、ときに「ビビビ」と平手打ちをくらわせたりする。

作者の水木しげるは、学校の先輩・同級生や軍隊の上官からの容赦ない暴力にさらされた世代だったから、自然とねずみ男にもそういう属性が与えられたのだろう。

このあたりの特徴づけは初期のアニメには引き継がれていたはずだが、時代が下るにつれ薄められ軽薄さばかりが強調されるようになってゆく。

そんなでミスター・サタン同様、ねずみ男も私は個人的にはちょっと苦手である。魅力あるキャラ、少なくとも使いやすいキャラであることは、よくわかるにせよ。

 

あと付けで「エピソード4/新たなる希望」とサブタイトルされた『スター・ウォーズ』第1作(1977年) において、ハン・ソロとチューバッカは、帝国軍と同盟軍のいずれにも属さない密輸業者だったが、同作ラストにおいて主人公ルーク・スカイウォーカーの危機を救う。

ただしハン・ソロはその後、同盟軍の指導者の一人レイア姫と親密になり、明確に同盟軍に与する。すなわち物語世界の主要キャラの一人になり、トリックスターではなくなる。そういうことも、あるんだ。

 

『スター・ウォーズ』世界では、ワトー(watto)が好きだなぁ。私のハンドルは本名のもじりではるか昔から使っているから後被りだよ、というのは以前も書いたことあるはず。

こいつも帝国軍と同盟軍の抗争とは無関係である。エピソード1~3(第4・5・6作)の主人公であるアナキン(とその母親)を奴隷として所有していた主であるが、この世界では奴隷の所有は合法だったのだろう。そして初登場の『エピソード1/ファントム・メナス』で賭けに負けたことにより、所有権を手放しアナキンを自由にする。

「利益に基づいて行動し、約束を守るから信用できる」とも書いたことがある。

ただし続く『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』では、ちょい役として没落した姿を見せる。商売人として成功するには、平気で約束を反故にするくらいのあくどさは必要なのかも知れない。そうするとスター・ウォーズ・ワールドそのものが成立しなくなるけど。

 

荒野の七人』(1960年)という怪作が、わりと好きである。

言わずと知れた黒澤明『七人の侍』(1954年) の翻案で、「勝四郎と菊千代を合体させるとはナニゴト!」はじめ突っ込みどころは数限りなかろう。

『荒野…』のほうで、ハリーというキャラが気になっている。黒澤『七人…』には、いなかったキャラである。

『荒野…』のガンマンたちは、義侠心からあるいは同情から、わずかな礼金を代償に盗賊の略奪にさらされる村を守ろうとする。だがハリーだけは礼金が少額であることを信じようとせず、実は莫大な謝礼があると信じて、最終決戦において主人公グループに加勢するのである。

怪作と言いつつ『荒野…』は1966~72年の間に3作まで続編が制作され、2016年にはリメイクが『マグニフィセント・セブン』という邦題で公開されているところを見ると、無視すべからざる人気を博しているシリーズなのであろう。私はいずれも未見。私はたいした映画好きの部類ではないにせよ、未見の映画もなくなることはないのだ。

荒野の七人

荒野の七人

  • ユル・ブリンナー
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本稿も収集癖の発露なので、結論やオチはありません。

また思いつき次第、ダラダラと追記する予定です。

思いつきと言えば、もし何か共通項を思いついたら「その3」をやるかも知れません。今のところ何も思いついていませんが。

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