タイトルはわざとやってます。つかシリーズ化しちゃってます ⇒ 『今のどこが面白かったかというと…』
この『スーとお花ばたけ』という童話(のようなもの)は、「三島由紀夫はなぜ『卵』を好んだか?」を書いた直後に思いついて、パソコン通信の同じフォーラムに投稿したものの再話です(再話というのはオリジナルで書いたものがサルベージできなかったので)。
「収集癖」というタグを作っているくらいで、妙なものを集める癖がいくつかあります。上記エントリーに書いた『ちびくろサンボ』と三島由紀夫の短編『卵』以外にも、物語のオチがそっくりな作品を、いくつか集めたことがあります。微妙にネタバレになりかねないので閲覧注意ですが…
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80年代の映画『アマデウス』と、ジェフリー・アーチャーの小説を原作としたやはり80年代のTVドラマ『ケインとアベル』は、オチがほぼ同じです。ヘミングウェイの中編『老人と海 (新潮文庫)』と、北杜夫の短編集『夜と霧の隅で (新潮文庫)』に収録されている短編『谿間にて』は、オチだけでなく経緯までそっくりです。昔の職場の同僚に『水滸伝』と『ロビン・フッド』に共通点が多いことを指摘する奴がいました。
「はてなダイアリー」では、『桃太郎』と『オズの魔法使い』の類似点を指摘したエントリーを読んだことがあります。勝手にリンク貼ってすみません。
それではネタばらしを行います。
『スーとお花ばたけ』は、『ちびくろサンボ』(『卵』でもいいのですが)を換骨奪胎したものです。もっとはっきり言うとパクリです。
すなわち…
<主人公>
賢い女の子(スー)← あまり賢そうでない男の子(サンボ)
<主人公の冒険>
刺繍の道具を持って花を摘みに行くこと ← 新しい服を着て散歩に出かけること
<危険な敵>
イモムシ ← 虎
<逆転>
イモムシを布地にしてしまうこと ← 虎をバターにしてしまうこと
<戦利品>
軽すぎて空に浮いてしまうドレス ← 虎バターで作ったありえない量のホットケーキ
見抜けましたでしょうか?
もしこのような過去の名作の改変が許されるのであれば、フィクションはいくらでも作れるんじゃないかと妄想する一方、しばしば言われることですが、フィクションのあらすじはとっくの昔に出尽くして、現在進行形で発表されているのは、過去の名作のバリエーションにすぎないのではないかという気もします。仮にそれが、意識してパクっているのでないとしても。
『ちびくろサンボ』の物語だって、例えば旧約聖書『士師記』に登場するサムソンの物語を改変したものかも知れません。
サムソンの物語というのは次のようなものです。ある日サムソンが歩いていると、ライオンが襲いかかってきました。怪力のサムソンは一撃でライオンを返り討ちに撃ち殺しました。後日サムソンが同じ場所を通りかかると、ライオンの死骸には蜂が巣をつくっていて甘い蜂蜜がたっぷり採れました。サムソンは「食べようとするものから食べものが出て、強いものから甘いものが出た。何か?」というクイズを作りましたが、誰もそれに答えられなかったということです。ちなみにサムソンの作ったクイズは、ヘブライ語の原文では韻を踏んでいるそうです。
旧約聖書中のサムソンの物語はもう少し長くもう少し複雑ですが、これ以上は踏み込まないことにします。
長い物語と言えば、ある長い物語の一部に別の物語が取り込まれることもあるでしょう。「謎解き日本のヒーロー・中国のヒーロー(追加ヒーロー4・完結)」の「追記」で述べたように『るろうに剣心』の折れた逆刃刀の代わりを求めるエピソードが、『眉間尺』の物語に似ているのが、その一例です。
ちなみに著作権法は、表現を守る法律でアイデアを守るものではないそうです。文章が一字一句たがわぬコピペであれば著作権侵害ですが、「アイデアが偶然一致した」ということであれば著作権法には抵触しないそうです。
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