暫定目次 各「その1」のみ クリックで詳細表示
(13) 第3景【鎌倉編】馬借・欠七(1/2)
(15) 第4景【現代編】個室病棟にて(1/2)
(17) 第5景【鎌倉編】ボクの無双(1/2)
(19) 第6景【鎌倉編】被差別集落(1/4)
(23) 第7景【鎌倉編】霊感商法(1/5)
(28) 第8景【現代編】ボクシング
(29) 第9景【鎌倉編】地頭・稲田(1/2)
(31) 第10景【現代編】哲学者
(32) 第11景【鎌倉編】心霊教ふたたび
(33) 第12景【現代編】裵〔ペ〕デスク
(34) 第13景【鎌倉編】刺客(本稿)
新着お目汚しを避けるため、日付をさかのぼって公開しています。体裁にこだわらず頭の中にあるものをダンブしている、という意味です。 あとからどんどん手を入れる予定です。前回はこちら。
(主人公「ボク」による語り)
マメ「直江津には、船乗りたちの相手をさせる置屋が何軒もあります。私にそこに行かせようとしているのです」
繰り返しになるが、直江津には大きな港があり、またこの時代の越後国府が置かれていた。
ボク「心霊教の教祖の鶴御前は "これが最後だ" と言ったじゃありませんか!」
マメ「私が悪魔の左袒〔さたん〕である坊主を連れてきたため、父の魂は別の地獄に堕ちることになった、というのです」
そんなアホな! 言ったことを平気で反故にすることといい、"他責" すなわち他人のせいにすることといい、21世紀の政治家じゃないんだから。
ボク「もう一度イネさんに会わせてもらえませんか。なんとか説得を試みます」
マメ「それが、心霊教の人たちがぴったり母についていて、私もなかなか話をさせてもらえないのです」
現代だったら強要罪じゃないか。
なんとかする方法がないか、稲村地頭しか頼る人が思いつかなかった。
ちょうど只丸くんが地頭館に帰る時間だった。少し夜遅いが、マメさんにいっしょに行ってもらって稲村地頭にも話を聞いてもらえないかと考えた。この時代でも、なんらかの罪に相当するといいのだが。
ボクは只丸くんを呼び、事情を手みじかに伝えてマメさんを地頭館に連れて行くよう依頼した。マメさんにも、稲村地頭に今の話をするよう伝えた。
ボク「私もあとから地頭館に行きます。後片付けが残っていますし、私と話をしたがっている人は他にもいるようです」
マメ・只丸「わかりました」
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夜遅くなったが、約束通りボクも地頭館に向かった。
折悪しく、雨が降りはじめていた。そろそろ梅雨が近いのだろうか。
ボクは高田の里に来たときにかぶっていた菅笠をかぶり、熊野の衆が寄進してくれた藁蓑をまとった。蓑は、辞退したが強いてと言われて受け取ったものだ。
まっくらな夜道、後ろに人の気配を感じた。気配どころではない、乱暴な足音だった。
振り返った。3人の男が、ボクを追ってきた。
うち2人は、先日の荒事師たちだ。(27)第7景【鎌倉編】霊感商法(5/5) 参照。
今度は手に手に抜き身の短刀を持っている!
悪い予感が的中した。やはりタダでは済まなかったのだ。
そして、もう1人は知らない男だ。
大刀を携えている!
こいつがいちばんヤバそうだ。直感がボクにそう伝えた。
走って逃げようとした。だが濡れた蓑がまとわりついて、うまく走れない。
3人の男たちは、濡れるに任せていた。
その差だろうか、ボクは取り囲まれてしまった。
荒事師の一人が言った「ジョウさま、よろしくお願いします」
ジョウと呼ばれた40がらみの男は、無言でゆっくりと太刀を抜いた。
そして、上段に構えた。
これが殺気か? ボクは全身の肌に電流が走ったような感覚に襲われた。
正面にジョウと呼ばれた男、背後に2人の荒事師。三角形の真ん中の位置に、ボクはいた。
とにかく逃げるしかない。真後ろというわけにいかないから、ジョウと荒事師の間をすり抜けるしかない。
だが少しでも動いたら、彼らの刃も動くことがわかる。
とはいえ、ずっとこのままでいることもできない。
ジョウが、ものすごく嫌らしい笑みを浮かべた。
そして、彼の方から踏み込んできた。
かわせない!
秘書インコの声が聞こえた「第1条2項、危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはなら
インコの声はそこで中断し、強烈な金属音が聞こえた。
アシモフの3原則! 秘書インコは全速力で自分から白刃にぶつかったのだ!
ボクは全力でダッシュした。
それでもジョウの刀は、ボクの体に少し当たった。
だが秘書インコに乱された太刀筋は、雨に濡れた藁蓑の表面をなでるように滑っただけだった。ボクは無傷で済んだ。
ボクは蓑と笠を脱ぎ捨て、大急ぎで地頭館に向かった。
ジョウと荒事師たちは、なにごとがあったのか追ってこなかった。
走りながら、ものすごい喪失感を感じた。秘書インコは、もう戻っては来られまい。これまでのように何かあるたびに検索することは、もうできない。ボクのこの時代における唯一といっていい特権が、失われたのだ。
かろうじてボクは、地頭館に転がり込むことができた。
ずぶ濡れになり、衝撃に打ちのめされたボクの姿に、稲村地頭、マメさん、只丸くんはたいへん驚いたようだった。
乾いた布をもらい、白湯をもらい、かろうじて人心地ついたボクは、刺客に襲われた経緯を稲村地頭らに話した。
稲村地頭の意見は「尉〔じょう〕⋯食い詰めた平家の残党ではないかと思います」とのことだった。
そして続けた「事ここに至っては、高田の里から逃げ出すしかないんじゃないでしょうか。ちょうどマメさんにも、そんな話をしていたところです。お母さんを連れて」
マメさんが言葉をついだ「母は今、洗脳状態にあります。なんとか洗脳を脱して、逃げることに同意させなければならないのですが…」
稲村「ところで今こんなことを言うのはなんですが、高田の里の主だった者たち全員に、郡司の後藤左官から、明日、郡衙に来るようにとのお触れがありました」
ボク「えっ、後藤郡司から?」
稲村「そうです。私も、善信坊どのも、行かなければならないようです」
(この項つづく)
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