🍉しいたげられたしいたけ

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ミステリ2冊

樋口有介『ピース』(中公文庫)

朝日の書評で興味をそそられた。
http://book.asahi.com/reviews/column/2011110600007.html

■殺人事件の真相に重い衝撃
 ミステリーに「ミッシング・リンクもの」と呼ばれるパターンがある。連続殺人事件が起きるが、被害者の間の関係がまったく見えてこない。一体、複数の事件をつなぐ「失われた環(わ)」とは何か?というもの。樋口有介の『ピース』は、このパターンの傑作である。
<中略>
 ところで、評者が読み終えた後で、あっと叫んで非常に感心してしまったのは、実は本の中身だけではなかったのだが……それはもちろん、書くわけにはいかない。読んだ人にだけわかることである。

そしたら直後に行きつけの本屋に、一目で畑中純の画とわかるこの表紙が平積みになっているのを見つけて、即買いしてしまった。畑中純の絵って、いいよね。
読んでみた。はあ…なるほど、評者が「あっと叫んで非常に感心してしまった」というのは、そういうことだったのか!しかし「それはもちろん、書くわけにはいかない」というのも、よくわかる。ミステリでネタバレはご法度中のご法度なのだ。私事ながら他人のブログを読んで綾辻行人を一冊台無しにされた怒りは忘れられないし、犯人を書いちゃうのは論外としても、筒井康隆の某名作について「叙述トリック」と形容するだけでも十分ネタバレになってるんじゃないかと、以前に弊ブログで愚痴ったことがある。
つまりミステリの感想を書くのは難しいのだ…と思っていたら、今朝の新聞広告。

大反響!30万部突破!!
ピース 樋口雄介
この表紙、よ──く覚えておいてください。
あなたはゾッとするはずです。

出版社自らが書いとるやないかー!ヾ(`Д´)ノ゙
表紙が微妙にネタバレになってると言えば…

北村薫『鷺と雪』(文春文庫)

弊ブログでたびたび愚痴っているように、個人的には文春文庫は文庫大手の中では一番ダメダメだと思っているから、この程度のことでは驚かないけどね。
あとamazonの書評に、次のようなものがあった。

××××年の×月になんの事件がおきるのか・・・。
歴史に通暁している読者ならば、その年号ですぐぴんときてしまうのだろう。
だが、あまり詳しくはないわたしにとって、このラストは後ろから串刺しにされたも同然のショック。

(日付は伏字に変えました)
あの〜、「歴史に通暁」どころか、日本国民として常識の範疇だと思うんですけど。amazonの書評ってのも概して酷いよね。
だがネタバレと言うのもネタバレ。これだけでは、両作品とも未読の読者の楽しみ奪うことは決してないはずだ、と思いたい。
『ピース』は連続殺人、三篇の中編から成る『鷺と雪』は失踪事件が一件と事件というほどではない奇妙な出来事が二件だが、背景に隠された真のストーリーを徐々に浮かび上がらせるという趣向が共通していて、一言で言えば「ウミガメ」すなわち私の大好きなジャンルなのだ。文章の細部に仕込んだ伏線を拾い集めて消去法なんかも駆使して読者に犯人捜しのための犯人捜しをさせようというミステリは、はっきり言って好きじゃない。
また『ピース』に関しては、地方のスナックを舞台に交わされる酒や料理や古いスタンダードナンバーに関するウンチク、『鷺と雪』に関しては、昭和初頭の帝都の描写という、謎ときの本筋とは関係ない部分の文章を楽しむというのも、それぞれの作者の意にかなった読み方なんじゃないだろうか。
うーん、ミステリの書評は難しいわ、やっぱし(-_-;
追記:
「この表紙、よ──く覚えておいてください」というコピーは、書店のpopが発祥らしい。
「この表紙、よ──く覚えておいてください」でぐぐったら、もっと酷いネタバレを見つけてしまった。
あぶないあぶない。ミステリとネットは相性が悪いのだ、多分。
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