著者の自衛隊出身という経歴は世によく知られるところであるが、それ以外にも波乱万丈の人生を送ってこられた方で、本書によると楽譜の初見ができギターで弾き語りの流しをやって稼いでいた時期もあるという(p280〜)。すごい!
中島らも氏とか景山民夫氏とか、エッセイの名手には流しの経験のある人が何人も思い浮かぶが、文才と音感には相関関係があるのだろうか?
初出は1994〜1995年の『週刊現代』連載で、当時著者はまだ今ほど売れてはいず、講談社の編集者がなぜ自分のような無名の小説家に目をつけてくれたのかいぶかる記述も見られる。『鉄道員〔ぽっぽや〕』によるブレークは目前だった。編集者の慧眼と言うべきであろう。
そう言えば1995年というと、あの阪神大震災とオウム事件の年ではないか。この時期著者は名作『蒼穹の昴』執筆中であったという。
このブログで取り上げた本の中には、1995年前後に執筆・出版されたものがけっこう多いような気がする。単なる偶然にすぎないかも知れないし、またあれだけのことがあった年なのだからその都度印象に残るのが当然なのかも知れないが。
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