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白井恭弘『外国語学習の科学―第二言語習得論とは何か』 (岩波新書)

外国語学習の科学―第二言語習得論とは何か (岩波新書)

外国語学習の科学―第二言語習得論とは何か (岩波新書)

前回のエントリーで「英語について日本語で書かれた本」ではなく「英語の本」を読むべきだと書きながら、その舌の根も乾かぬうちに、こんな本を読んでしまった。日本語の「どう思いますか」のつもりで「*How do you think ?」という人が多いが正しくは「What do you think?」であるとか(P16)、新たな発見はやっぱりあったんだけど(知らんかった!恥ずかしながらΣ(゚Д゚;
タイトルの「科学」というのは、ほぼ「実証」という意味である。
例えば「第2章 なぜ子どもはことばが習得できるのか」では、ヘッドターンという方法により、赤ちゃんの音を区別する能力が、生後6ヶ月〜1年の間に急速に低下することを実証する。
ヘッドターン法というのは、次のようなテクニックである。例えば日本人の赤ちゃんに「ra、ra、ra」という音を聞かせ、それを「la、la、la」という音に変え、その直後に赤ちゃんの右か左からおもちゃを出す。生後6ヶ月くらいの赤ちゃんは、音が変わるとおもちゃが出てくることに気づいて、音が変わった途端におもちゃの出てくる方向に顔を向けるようになる(ヘッドターン)。
ところが満1歳を過ぎた赤ちゃんは、音が変わったのに気づかず、おもちゃが出てきた後でしか顔をそちらの方向に向けなくなる。
本書p43に、この実験の様子を示したyoutubeのURLが載っていた。打ち込んだら観れたので貼っておこう。

Pat Kuhl
しかし満1歳を過ぎた赤ちゃんにも、わりと簡単に音の区別を獲得させるテクニックが見出されている(p44)が、長くなるのでこのへんで。
こうした研究者の種々の試みは、大いに参考になるというか、「科学」とか「アカデミズム」というものはこういう積み重ねなのだと改めて蒙を啓いてくれるものだ(「科学」という言葉から漠然とイメージされるものと、いかに異なることか!)。ただしじゃあどうしたらいいかというと、最終章「第6章 効果的外国語学習法」に具体的な提言がいくつかまとめられているが、言っちゃ悪いけどどれも「いまさら」感がただよっている。
これも一つだけ例を挙げると、「コミュニケーション・ストラテジー」と銘打ってp169に紹介されている「たとえば、次に言うことを考えているときに、英語ならばwell... um..., you know..., what do you call it...,Let's see, let me seeなどのつなぎことばを使って時間を稼ぐことができます」というくだりなんか、「分裂君勘違い劇場」の最近のhotentry
d.hatena.ne.jp
のほうが面白いじゃないかと、つい思ってしまう。もちろん「分裂君勘違い劇場」の方は学問的実証の裏づけを(多分)欠いているだろうけど。
詰まるところ我々のなすべきことは、p149に引用されている松本亨の「Listen more, speak less. Read more write less.」という言葉で尽きているような気がするのである。
読みかけの洋書読もうっと(。。;
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