しいたげられたしいたけ

空気を読まない 他人に空気を読むことを要求しない

浅田次郎『憑神』(新潮文庫)

憑神 (新潮文庫)

憑神 (新潮文庫)

幕末の江戸、主人公は貧乏御家人の次男坊。ある日、小さな祠に手を合わせたところ、なんと現れたのは神は神でも貧乏神だった…
まず著者のこの時代に関する造詣の深さに驚かされた。武士が俸禄で生活していたことは誰でも知っているが、その仕切りが「蔵宿〔くらやど〕」と呼ばれる商人に任されていたことや、江戸末期には多くの武家がその蔵宿に対して借金を重ね頭が上がらなくなっていたことは、本書で初めて知った。また江戸時代の相撲興行の実態も興味深く読んだ。武士・商人・相撲取り・少年少女などのファッションも詳しい描写があるが、古今を問わずファッションというものにまるでうとい私には、猫に小判でまったくイメージが湧かなかったのは残念。
コメディタッチの前半に比べ、幕府が瓦解への道の歩みを速め、主人公が「義に殉じ」滅び行く幕府と運命を共にする決意を固めるに至る後半は、トーンががらりと変わる。夜鳴き蕎麦代の小遣いにも事欠いていた前半のさえないイメージはどこへやら、まさに「男子三日会わざれば刮目して見よ」である。
だけど、何となく私は感動できなかったな。確かに主人公が身を捨てて立てようとした「武士の義」は、文句のつけようのない立派なものだったかも知れない。しかし敵対する官軍には官軍の「義」が当然あるわけで、正義の反対はまた別の正義、両者を相対化した上でなおかつ自分の立場を「選択」するのだというような柔軟性を、もうちょっと前面に出してもらってもよかったんじゃないかという気がする。
なんでこんなことを言うかと言うと、昨今ネット上に氾濫する手前勝手で多くの場合事実誤認に基づく「正義」に、辟易しているからである。
「はてな」の「最近の人気記事」でいうと、これとか。
http://alfalfa.livedoor.biz/archives/51516373.html
解毒剤。
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色々と誤解やミスリードがあるので、簡単に書いておきます。
1.最高裁の判断について
裁判で争ったのは退去強制処分という「行政処分」の違法性で、 裁判所の判断は残留孤児の一家に「退去強制令書を執行せよ(強制送還しろ)」と命じているわけではありません。
法律にある在留特別許可という制度は、 最高裁で負けた段階での一家に在留資格を与えても与えなくても法律の枠内です。
2.法務大臣の裁量について
基本的に、どこの国も在留資格のない外国人(不法滞在者、非正規滞在者などと呼ばれています)は全て帰国させるという事はしておらず、国が定めた条件を満たした外国人には在留資格を認めるという事をやっています。