しいたげられたしいたけ

建築家は外装の失敗をツタで隠し、料理人は味付の失敗をマヨネーズで隠し、政治家は内政の失敗を戦争で隠す

川合光『はじめての“超ひも理論”―宇宙・力・時間の謎を解く』(講談社現代新書)

はじめての〈超ひも理論〉 (講談社現代新書)

はじめての〈超ひも理論〉 (講談社現代新書)

理論物理学の世界では、超ひも理論が熱いらしい。『超ひも理論とはなにか―究極の理論が描く物質・重力・宇宙 (ブルーバックス)』の著者の肩書きはサイエンスライターとのことだったが、本書は現役バリバリの研究者による一般向け解説書である。そう言えば本書にも名前が登場する(p98〜、p170〜)「ゲージ対象性の自発的な破れ」「ハドロンのひもモデル」の南部陽一郎氏も、ブルーバックスの方に著書がある。
しかし、難しいわぁ、この本。専門家が数式を使って記述する代わりに普通の言葉を使って記述してくれるのはいいけど、物理学を普通の言葉で記述すると、ややもすると「おとぎばなし」になりがちなのである。物理学のすごいところは、自然を数式で記述し、その結果得られた数式から未知の事実を引き出す、すなわち「予言をする」ところにある、ということは、わかる。だが私の場合、マクスウェル方程式の対称性から電磁波が予言され、黒体放射を表すプランクの式の分母のマイナス1が、数学的に言うと無限級数の和を表し量子論への入り口となったというあたりまでなら、なんとなくだけど理解できるような気がするが、一般相対性理論重力場方程式のシュバルツシスト解がブラックホールの予言となり、ディラック方程式陽電子の存在の予言となり…あたりになると、もうお手上げというレベルなのである。
本書《付録》に記された、超ひも理論の示すまさに驚くべき宇宙像については、「はぁ、そうなんですか」と言うしかありません。ただしこの宇宙像を本文ではなくわざわざ《付録》に持っていったということは、まだ学問的に広く受け入れられた「定説」ではない、ということなのだろうか…