読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

しいたげられたしいたけ

人権を守るには人権を守るしかない。人権以外の何かを守ることによって人権を守ろうとする試みは経験的に全て失敗している

丹羽敏雄『数学は世界を解明できるか―カオスと予定調和』(中公新書)

数学は世界を解明できるか―カオスと予定調和 (中公新書)

数学は世界を解明できるか―カオスと予定調和 (中公新書)

扱っている素材はすごく面白そうなのに、「数式を一切使わない」という縛りのために、なんだかもったいないことになってしまっているように思う、というのが私の印象。
「二 システムとモデル化」では、現在、春分から秋分の日までがほぼ186日*1秋分から春分の日までが179日であるという事実が紹介される(p20)。気づかなかった!春分から秋分の日までと秋分から春分の日までが等しくないのは、地球の公転軌道が真円じゃなく楕円だからで、こうした天文のように、人間の興味をかき立てる程度には単純じゃないけど人間の手に負えないほど複雑じゃない自然現象が、近代の科学の誕生をもたらした旨が説明される。
面白そうでしょ?
でも「三 単純な法則と美しい現象」以降で、数式で示される物理現象を普通の言葉で説明しようという試みが多くなると、途端にページをめくる速度が遅くなる。
例えばバネの単振動を説明したくだり。

いま変動する量として、重りの釣合いの位置からのずれと重りの速度の二つを考える。正確にいうと、ずれは、釣合いの位置からさらに下がっているばあいは正の数値で、上がっているばあいは負の数値で表す。この重りのずれを表す数値の瞬間変化率は、もちろん定義から重りの速度に等しい。そして、速度の瞬間変化率、つまり加速度は、力学の基本原理から重りに働いている力に比例する。一方、その力は重りのずれに比例する。結局、重りの速度の瞬間変化率は重りのずれの大きさに比例することになる。ただし、比例定数は負である。なぜなら、ずれが正のばあいは、速度を小さくする方向に、負のばあいは速度を大きくする方向に力が働いているからである。こうして、重りのずれと速度の二つの量の瞬間変化率がいま述べた形でそれらの量によって定められる。この関係により、重りの釣合いの位置からのずれを表す数値と、重りの速度を表す数値の二つが、相互に絡み合いながら変化していくことになる。

(p34〜35)
これは結局、次の一行の微分方程式のことを言っているのである。

   d2x    
 M  ―  - kx
   dt2    

x:重りの釣合いの位置からのずれ、M:重りの質量、k:比例定数
元の微分方程式が思いついた場合はまだいい。後の章で、流体力学微分方程式を説明しているとおぼしきくだりなどは、本当に何度読んでも何度読んでも私にはイメージがつかめませんでした。多分、元の微分方程式を知らないか思い浮かべられないからです。すみません(とりあえず謝っとく)。
「六 生態学モデル」の、ウサギとキツネの個体数の変動を示すモデルは周期解を持つ(p109)のに、草食動物二種の競争モデルではどちらかが絶滅する(p113)という紹介なんか、とても面白そうだったんだけど。
弊ブログではしばしば漏らしているが、読むなら「数式のある本」を読むべきだろうなと再確認。
かんけ〜ないけどついでなので「英語について日本語で書かれた本」ではなく「英語の本」を読むべきだということも、ときどき書いてはいるが、こちらもしばらく果たしていない。

*1:'08年はうるう年なので187日