しいたげられたしいたけ

弊ブログでいう「知的」云々は「体を動かさない」程の意味で「知能の優劣」のような含意は一切ない

社会保険をめぐる「106万円の壁」「130万円の壁」は当然ながら女性だけの問題ではないことに迂闊ながら気づいたこと

毎度、他の方の記事を枕に使わせてもらっています。今回はマスクド・ニシオカ (id:maskednishioka)さんのリンクを貼らせていただきます。

www.maskednishioka.com

極めて大雑把に要約すると、国民年金の免除申請に行ったところ却下されて、却下の理由を問い合わせたところ、奥さん(配偶者)の勤務先経由で加入する「3号被保険者」になることを勧められたという内容です(マスクド・ニシオカ さんの場合は、短期間で「3号」を離れて自営業者などが加入する「1号」に戻るという特殊事情もあります。正確なところはリンク先を参照願います)。

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ちょうど昨晩、車で移動中にNHK第一の「先読み! 夕方ニュース」という番組を聞くともなしに聞いていた。この10月1日から制度改定された、社会保険をめぐる、いわゆる「106万円の壁」がテーマだった。

ここ何年かのNHKの特徴で、ゲスト解説者の説明が、明らかに政府寄りだったのが気になった。キャスターの「働く女性にとって不利になったのでは?」との問いに対して、曰く「不利になった点もあれば、有利になった点もある」「内容をよく理解しないで騒いでいる面もある」。

前者は「年金など社会保険の財源を安定化させるため」というのが大意で、巡り巡って受給者の利益になることを否定しないが、直接的には有利なことは何もなく、もっばら厚労省の都合じゃないか。

後者は「(1)週20時間以上、(2)月額賃金8.8万円以上(年収106万円以上)、(3)勤務期間1年以上見込み、(4)学生は適用除外、(5)従業員 501人以上の企業」の条件をすべてに当てはまっている者だけが該当という意味のようだ。

だから当てはまらない者までが騒いでいる、と言いたかったらしい。しかし(5)の企業サイズは、今後引き下げられる可能性があるとのことで、だったら該当者じゃなくても不安に感じるのが正常な反応ではないか!

また、「内容をよく理解しない」の中には、「130万円の壁」がなくなって「106万円」になったという誤解も含まれているとのこと。「130万円」は上記5条件を満たさなくても社会保険への加入が義務付けられる水準ということで、なくなるわけがない。だから誤解っちゃ誤解だけど、だからと言って有利なことは何一つないのだ。

案の定、聴取者から寄せられた意見は、ネット語でいうところの「フルボッコ」状態だった。当事者としては負担増は暮らしに直結する問題で、美辞麗句でカムフラージュできる性質のものではないのだ。

それに対する解説者の弁明が「制度変更などの小手先の議論をするのではなく、もっと女性が働きやすい社会を作るという大局的な視点が必要」という、ポイントのずれたものだった。さすがにこれは司会者もまずいと感じたのか「セクハラ、マタハラなどのない、男性目線中心ではない社会ということですね」という苦しいフォローをしていた。いやだから制度の話をしてる番組なんでしょ?

なんか変だぞNHK

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制度がたいへん複雑で、ラジオを聞いただけじゃ理解できなかったので、後で検索した。「FP OFFICE 海援隊 ブログ」さんの次の記事がわかりやすかったので、リンクを貼らせていただきます。

fp-office-kaientai.hatenablog.com

これもばっさり要約させていただくと…

「100万円の壁」・・・住民税が発生

「103万円の壁」・・・所得税が発生

「106万円の壁」・・・5条件を満たすとき社会保険加入義務が発生 ※10/1より

「130万円の壁」・・・(5条件を満たさなくても)社会保険加入義務が発生

「141万円の壁」・・・配偶者特別控除がなくなる

仮に年収が130万円を超えたとき、元の収入を上回るためにはいくらの収入が必要になるかというグラフもわかりやすかったので、転載させてください。怒られたら消します。

f:id:watto:20160322103822j:plain

上掲記事より。

この約155万円、すなわち約25万円余計に稼ぐ必要があるという数字は、NHKのラジオ番組でも取り上げられていた。政府の謳い文句である「女性が活躍する社会」を実現するためには、解説者は「もっと多く働くという手もあるんですよ」みたいなことを言っていた。当然ながら聴取者からは「25万円分よけいに働くというのが、どれだけ大変なことか」「働こうと思っても働けない事情がある」という声が寄せられていた。

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で、最初の マスクド・ニシオカ さんの記事の話に戻る。NHKの番組も、「FP OFFICE 海援隊 ブログ」さんの記事も、「なんとかの壁」が問題になるのは女性だという前提がある(ように思われる)。現実はそうじゃないんだ、ということが言いたかったのだ。無茶振りして悪いけど、人気ブロガーでは かるび (id:hisatsugu79)さんが休職中で奥さんが働いておられることは、「はてな」住人の多くが知るところだと思う。世帯によって事情は多様だろうから、よろしかったら かるび さんも社会保険の件で何か書いてください(毒を食らわば皿まで無茶振り)。

多様化して当然だ。そういう時代なのだ。今回のエントリーは主に男性に関してだが、社会の制度を知らないことにより、あるいは「配偶者のことだから自分は関係ない」とばかり無関心でいることにより、思わぬ損をしかねないケースというのは、様々な局面で発生しうると思う。しかし制度というのはどんどん複雑化する一方なので、専門家ならぬ大多数の人間にいつでも不足のない知識を常に保有していろというのも、現実味を感じないほど大変だとも思う。

社会保障のコストがどんどん高騰しているという事情は、理解しているつもりだ。しかし制度がとめどなく複雑化し、一方で豊洲新市場問題や東京五輪コスト三兆円問題みたいなことがあると、負担者の側に「騙されてるんじゃないか」という感情が沸き上がることも、無理ないと思うぞ(実際そのような書き込みをどこかのブコメで見た記憶があるが、後から探そうとすると探しきれない)。そこにもし「社会保障費と箱物の建設費は管轄官庁が違うから別枠だ」みたいな言い訳をされると、「大元が国民負担なのは一緒だろう!」と火に油を注ぐことにしかならない。

このような形で国民と行政の間で不信が高まったとしたら、それこそ誰の利益にもならないと思うぞ。