🍉しいたげられたしいたけ

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外山軍治『則天武后―女性と権力』(中公新書)

女性の身でありながら世界に冠たる大唐帝国を簒奪(=さんだつ この語はこう使うのが正しい)して中国史上唯一の女帝となった則天武后の伝記。その半生は、まあ、権謀術数のオンパレードである。たとえば則天がまだ唐の高宗皇帝の側室であった時代、皇后を失脚させるために、自分が生んだ女児を扼殺してその罪を皇后に着せたと言われる(p29〜)。とは言うもののこれは証拠が残っているわけがないし、現代人の我々は「乳児突然死」というものがあるということを知っている。則天は唯一の女帝ということで目立つのでことさら悪く言われがちな傾向があるだろうが、専制時代の権力周辺にいた人間は誰も大同小異であろう。むしろ私が「やだな〜」と感じたのは、サラリーマン社会のような狭い小さい人間集団の中でも、陰で徒党を組んだり早い話が「政治」をしたがる人種が確実に存在したことを思い出させられたことである。「んなことしてないで仕事せいよ!」と言いたいところだが、上司と呼ばれる連中の中にも妙にその「根回し」だとか「ご注進」だとかに弱いのがいるから、話がややこしくなるのだ。つまり「政治」にはそれなりに実効性があるから、蟹は甲羅に似せて穴を掘るじゃないけど、人間は貴賤を問わずその置かれた環境で「政治」をしないではいられない存在なのだろうか?
なお坊主憎けりゃじゃないけど、なんとなくこの著者のセンスは好きになれない点が目に付く。例えば即位後の則天の寵愛を一時期一身に集めた妖僧・薛懐義(せつかいぎ)が粛清されるさまを「少々変わっていて愉快である」「おもしろい」(p135)と表現したり…ボディガード用の力の強い女性を数十人集めて殺させたというのは、確かに「おもしろい」のかも知れないけど、人が死ぬのを「おもしろい」はないでしょう??
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