- 作者: 森護
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上巻では内紛ばかりを繰り返す王室を戴く辺境の王国というイメージだったイングランドが、上巻最後のエリザベス1世治下の繁栄と、その後を襲ったステュアート王家のジェイムズ1世によるスコットランドとの同君連合の成立あたりを転機に、みるみる世界帝国への道を歩みだす。
本朝の戦国大名の織田家が、信長の父・信秀の代の尾張統一あたりをきっかけにめきめきと頭角を現したことや、中国春秋時代の王朝・晋において、文公重耳の祖父・武公の代に翼と曲沃という二つの拠点都市を統合したことが、文公を春秋の覇者へと押し上げる道を開いた(このあたりの事情は宮城谷昌光の長編小説『重耳』に詳しい)ことなどを想起する。洋の東西を問わず歴史によく現れる現象なのだろうか。
しかしそのステュアート王家はというと、チャールズ1世は清教徒革命で首を刎ねられるわジェイムズ2世は名誉革命で国を追われるわ、ろくな目に遭っていない。この著者ではないが、イギリスのこの両「革命」は誤って市民革命と呼ばれるが内乱にほかならないという意味のことを言っている歴史家がいる。にわかに賛同はできないが、アメリカ独立革命→フランス大革命という世界史の流れに置かず、百年戦争→ばら戦争というイングランド史の視点から眺めるとむべなるかなと思わないでもない。まあrevolutionではなく日本語の「革命」の語源となった中国の「禅譲放伐易姓革命(よい王様に位を譲り悪い王様を追っ払い王様の姓を変え天命を改める)」という言葉を思い浮かべると、どっちゃでもいいというよりむしろそのものずばりではないかという感もなきにしもあらずなのだが。
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