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竹内薫『99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方』(光文社新書)

99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方 (光文社新書)

99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方 (光文社新書)

光文社新書、絶好調かな?この本も売れているみたいです。
「飛行機はなぜ飛ぶのか?実はよくわかっていない」というアイキャッチャー的な章に始まる、きわめて読みやすい科学エピソード集。というよりファイヤアーベント(p95)やポパー(p132)の名前が出てきたりするところを見ると、これは科学哲学の一般向け紹介書のつもりだろうか?
もし科哲の紹介書だとすると、ちょっと物足りない。デカルトの方法的懐疑「疑えるものはすべて疑う」を始めとする科哲の方法論は、たしかに世の中にもっと認知されてほしいとは思うのだが、この本で扱われる範囲がその「すべては疑いうる」というところで留まっている点が、私にはちょっと不満である。
例えば、ポパーの反証主義すなわち「科学は、すべて反証できるものである」(p132)は、確かに画期的だとは思うけど、これだけではいわゆる「強すぎる薬」であり、経済学・政治学など社会科学は片っ端から科学の名に値しないということになりかねないのである。
「すべてを疑う」ということは悪くないけど、それによってかえって不安を増やす読者もいるんじゃないのかな?以前にも本ブログに書いたことがあるが「すべてを疑わせる」というのは洗脳の基本的テクニックの一つにもなりうるくらいだし。だいたいこの本は明らかに「頭が固い」ことに悪いニュアンスを、「頭が柔らかい」ことに良いニュアンスを与えているけど、「頭が固い」=「悪い」、「頭が柔らかい」=「良い」という価値判断は、疑わなくていいのですか?
科哲はまだまだ発展途上のジャンルだけど、いくつかの条件の下で「ここまでは信じるに値する」ということを示すこともできるのだ。