学者の中沢氏が何を読んでいても驚かないけど、太田氏がジョン・ダワー『敗北を抱きしめて』(p54)とか、シオドーラ・クローバー『イシ 北米最後の野生インディアン』(p69)とかいった本を読んでいるのには、驚いた(クローバー博士の娘がル=グウィンだそうです。知らなかった)。
だが私は、著者らの「憲法九条が珍品だから、稀少品だから、理想だから」といった理由で日本国憲法第九条を守ろうという論理には、直ちには同意しない。
私の立場もまた、日本国憲法第九条は守るべきだというものであるが、その理由は、日本という国家が生き残っていく上において、日本国憲法第九条の示す道こそが最も(どころか多分ほとんど唯一の)合理的かつ有効な戦略だと認識しているからである。
私がそう考える根拠の、エッセンスだけを今は記すと、2005-09-17に示した「囚人のジレンマ」の表を再掲するが、戦力による安全保障を選択することは、このような構造を持つゲームにおいて、常に「裏切り」を選択することを意味する。
協調 裏切り | |||||
協調 裏切り |
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しかし、だからと言って大田氏や中沢氏にシンパシーを感じないというつもりは全くなくむしろ逆で、例えば次のようなくだりは、純粋に読んでいて楽しいと感じた。中沢氏の発言から。出典は安楽庵策伝という人の『醒睡笑』という本だそうです(これも知らんかった_| ̄|○)。
京都に日蓮宗の寺と浄土宗の寺が道をはさんで向かい合わせにあった。この寺同士がものすごく仲が悪くて、お互いに悪口を言い合っている。悪口を言うだけでは気がすまなくなって、日蓮宗のお坊さんたちは、法然と名づけた犬を飼っていじめた。「法然のバカ」とか言って、みんなでこづき回す。それを見ていた浄土宗の寺のお坊さんが、何くそと日蓮と名づけた犬を飼っていじめ始めた。ところがある日、日蓮という犬と法然という犬が道でばったり出くわして、大ゲンカを始めたわけです。そうしたら、日蓮宗のお坊さんたちが「法然頑張れ」、浄土宗のほうは「日蓮頑張れ」と応援しちゃった(笑)。そのうち、はっと気がついて、お互い反目をやめたというお話。
(p111)
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