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英語は年々変化するらしいが『日本人の英語』シリーズは読む価値あると思う

英会話教室でのエピソードを前振りに使います。直近のレッスンで、同じクラスの若い受講者が、映画『聲の形』を話題にした。のっけから話はズレるが、タイトルは英語で “The Shape of Voice” と言えばいいかなと思ったら、あとで検索したら “A Silent Voice” というのが公式な英語タイトルのようだった。

あらすじを説明するのに、「ヒロインには聴覚に “handicap” がある」と言ったところ、ネイティブの講師から「“handicap” はやや強い言葉だから現代のカナダでは避けられ “impairment” が用いられる」とダメ出しされた(講師はカナダ人)。 あとで Weblio で調べたところ「聴覚障害」は “impairment of hearing”  だそうだ。

“handicap” が配慮を含んだ語だと思っていたが、そうではなかったようだ。

 

昔からそうだったのか、最近変化したのかはわからない。根拠は薄いが、後者のような気がする。なぜそう思うかというと、例によってうろ覚えだがどこかで「20年前に留学経験があるのに現代英語が理解できない」「それは20年前と今では英語が変化しているからだ」のようなやり取りを読んだ記憶があるからだ。

もっと言うなら、聴覚に関しては、あえて記さないがもっと直截的というか歴史的というべきか “d” で始まる単語も知っている。現代では、この単語がなんらかの注釈を伴わずに使用されることはあるまい。これも、大くくりではあるが英語が変化している証拠の一つではあろう。

 

それで思い出したのだが、マーク・ピーターセン明治大学教授の大労作『日本人の英語』シリーズに関するあれこれである。まず断っておかなければならないのは、このタイトルはすでに何冊も出版されていることである。

日本人の英語 (岩波新書)』・・・1988年初版

続・日本人の英語 (岩波新書)』・・・1990年初版

心にとどく英語 (岩波新書)』・・・1999年初版

実践 日本人の英語 (岩波新書)』・・・2013年初版

出版社こそ違え、内容的に次の本も姉妹編と言っていいと考える。

英語の壁 文春新書 326』・・・2003年初版

無印の『日本人の英語』(以下『無印』と略記)の出版からは、はや30年近くが経過しているではないか! 私の手元にある1991年第23刷のカバー折り返しには、こんな文言がある。

「冷蔵庫に入れる」は put it in the freezer なのに「電子レンジに入れる」だと put it in my microwave oven となる。どういう論理や感覚がこの英語表現を支えているのか。 

太字・斜体は原文通り。以下同じ。

この解説は、本文P44~45にあるので引用する。

なぜ microwave oven の場合は her microwave と言うのに,冷凍庫の場合は her ではなく, the freezer というかは, 純然たる意識の問題である.具体的にいうと,冷凍庫というものは,どの家庭にでもあるというふうに意識されるが,電子レンジはまだそこまで普及していない.どの家にでも当然電子レンジがあるという意識は,近い将来にできるかもしれないが,今はまだない.その冷凍庫との意識の違いを her と the の使い分けで表現する. 

なぜ her なのかというと、引用の直前に she を主語とした例文が示されていたからだ。「冷蔵庫」じゃなくて「冷凍庫」なのかというのは、日米の、それこそ「意識の違い」というものであろう。

それに対して、3年前に出版された『実践 日本人の英語』(以下『実践』)のP25には、こんなふうに書かれている。

なぜ microwave oven の場合は her microwave というのに,冷蔵庫の場合は her ではなく, the freezer というかは, 純然たる「意識」の問題である,と説明した.あわせて,当時は「どの家庭にも当然電子レンジがあるという意識は,近い将来にできるかもしれないが,今はまだない」としたが,いうまでもなく,その「近い将来」はもうとっくに来ており,現在ではすっかり the microwave の時代となっている. 

時代による英語の変化が、こんなふうに文章として記録されているなんて、興味深くないですか?

では『無印』は古くて読む価値がないかというと、決してそうは思わない。英語学習者にとっては、示唆をうけるところはやはり多いと思う。ただし、これから『日本人の英語』シリーズを読もうかと考えている人に対しては、個人的には最新の『実践』から手に取ることをお勧めしたいと思う。『日本人の英語』シリーズでは、いくつかのテーマがシリーズを通してフーガのように繰り返されており、しかも、おそらくは著者が日本の大学での経験を反映して、表現はあとになるほどわかりやすくなっているように思われるからだ。

このテーマであと1、2回書けそうなので、一旦稿を改める。アイキャッチ画像にするため『実践』の書影を貼ります。 

実践 日本人の英語 (岩波新書)

実践 日本人の英語 (岩波新書)

 

追記:(10/18)

id:Hachi さんより言及をいただきました。感謝しつつリンクを貼ります。

b8270.hateblo.jp

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