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行列式と逆行列の計算
大学初年度の線形代数学レベルであれば、Microsoft Mathematics の行列機能は、まず満足のゆくものではないだろうか。
リボンの「挿入」タブをクリックすると「行列」ボタンがある。
「行列」をクリックすると、行数と列数を訊ねるウィンドウが開く。下図の例は2×2を指定したところ。
ウィンドウ下部の「OK」ボタンをクリックすると、入力ペインに2×2のプレースホルダを含むカッコが表示される。
行列式の計算は「det」コマンドで、逆行列の計算は「-1」を乗ずるか「inverse」コマンドで行う。
ただしコマンドは忘れちゃうから、行列のプレースホルダに数値を入力したら、一旦「Enter」で入力して、出力ペインの「次の値を計算します:」の青文字をクリックして教えてもらった方がいいように思う。
「行列式」という青文字をクリックしたところ。出力ペインに「det」コマンドが表示されている。
「逆数」をクリックしたところ。「inverse」コマンドを使用していることがわかる。
ただしここは微妙な訳語の宝庫で、「逆数」が「逆行列」のことだというのは、まだわかるとして、「移項」は「転置」、「大きさ」は「行数と列数」のことらしい。「変換」は、何をやっているのかよくわからない。
行列の固有方程式と対角化
しかし最初に述べた通り、大学初年度レベルの難易度であれば、機能そのものには不満を感じない。
なぜか手元に『高校数学でわかる線形代数―行列の基礎から固有値まで (ブルーバックス)』という本がある。この本のP134の数値例を使わせてもらって、固有値問題を解いてみる。
固有値問題とは何かという説明は、どの線形代数学の教科書にも載っているはずなので、そちらをご参照ください。
という式の等号が常に成立するようなスカラーλ を求めるには…
という行列式を、λ の方程式と見なして解けばよい。
これは、Microsoft Mathematics を使えば一発で解けるのである。λ などギリシャ文字は「行列」ボタンの右隣の「変数」ボタンから入力することもできるが、 ちょっとだけ面倒なので変数は x を使った。
入力ペインの「Enter」ボタンをクリックすれば、λ = 2, 3 が得られた。
次に、これらの固有値に対応する固有ベクトルというのを求める作業がある。上掲書ではp136~137に載っているが、これもどの線形代数の教科書にも載っているはずである。
結論だけ書くと、λ = 2 に対応する固有ベクトルの一つとして [1, 1/2] が、λ = 3 に対応する固有ベクトルとして [1, 1] が得られる。
これらを列方向に並べた行列をP と書く。すなわち…
とする。また、元の行列をAと書く。すなわち…
すると、P とP の逆行列を用いて…
により「行列の対角化」ができる。ただし λ1 = 3、λ2 = 2 である(上掲書P139)。
ホントにそうなるか、試しにまずP の逆行列を計算させてみる。「inverse」コマンドではなく「^-1」を使っている。
これがP の逆行列。
P の逆行列、A、P の積を計算させてみる。
理屈通りに対角行列が求まっている。
念のため次式を使って、対角行列から元の行列A を復元してみる。
復元できた!
「何を当たり前のことを」と思われるかもしれないが、私は凄絶に計算間違いの多い体質なので、こういうことを手計算でやると、一発で計算が合うことはまずないのだ。
だから、キカイの力を借りられることは、限りなくありがたいのである。
高校数学でわかる線形代数―行列の基礎から固有値まで (ブルーバックス)
- 作者: 竹内淳
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/11/19
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リンク集(随時追加)
Microsoft Mathematics 私家版順不同リファレンス
行列式、逆行列、固有方程式、対角化 (この記事)
Microsoft Mathematicsを使ってみたら賢いのかアホの子なのかよくわからないが多分WordやExcelの補完ツールとして使うのが適切なのかなと思った