しいたげられたしいたけ

空気を読まない 他人に空気を読むことを要求しない

香りのサービスが時としてとても嬉しいことってないですか?

 id:ecoplace さんのエントリーを読んでいて、突然書きたくなりました。言及失礼します。

www.ecoplace0.com

学生さんたちのLINEグループから「一緒に遊びませんか?」とお誘いを受けたことに始まる、「日常の謎」系掌編小説のようなエントリーでした。

たいへん楽しく読ませていただきましたが、個人的には特にラストの、次のくだりに惹かれるものを感じました。「心がほっこりした」というやつだと思います。

最後につけて頂いためちゃくちゃ良き香りのオイルを買ってきた。冬に向けて手や肌や髪に使えると聞いたので。しっかりアルコールチェックはしたょ😳また明日から楽しんで頑張ろうー!

 

そう、香りのサービスが時としてとても嬉しいことってないですか?

 

自分の具体例として思い出せるのは、もう何年も前のことになってしまう。奈良長谷寺の本尊である十一面観世音菩薩立像の特別拝観というのに行ったときのことだ。

www.watto.nagoya

受付で拝観料を支払うと、塗香〔ずこう〕を手から手へ塗り込んでくれ、五色の糸の輪を手首に結んでくれたのだった。

塗香は茶色っぽい粉末で、香木というのだろうか木の香料の香りがした。塗香を塗るのは、お清めということだと思う。本堂に入ると高さ10mを超えると言われる大観音像の足に触れることができるのだ。この仏像が学術研究や美術鑑賞だけでなく、現役で信仰の対象となっていることをうかがい知ることができたような気がした。

野暮なことを言うと、塗香に汚れを落としたり消毒したりする効果はないのだけど。そこがよけいに伝統的な信仰感あるのかな?

もう一つ野暮なことを言うと、コロナ禍により塗香を不特定多数の参拝客の手へ塗り込める慣習が失われているであろうことが、惜しく感じられた。実際には今どうなっているかはわからないけど。

www.hasedera.or.jp

 

まだあったはずだが他の例をなかなか思い出せなくて、大昔までさかのぼってしまった。たしか中学生時代に読んだ 北杜夫『どくとるマンボウ航海記』から。「パリの床屋教授どの」という章で、パリがその評判に反して「なんという煤けたうす汚ない都会だろう」という第一印象を開陳したうえで、気に入ったものとしてヴァレット街というところにある「実に汚ない床屋」というのを挙げていた。年老いた店主が一人でやっているところだが、店主はプロフェッソール(教授)を自称しあまつさえガラス戸にそう刷り込んでいたそうだ。

北自身はこの床屋に足を踏み入れなかったようだが、当時パリに住んでいた北の友人 T 夫妻がここを利用した際の様子を、T の手紙から長文で紹介している。店主の腕は年の衰えが現れているのか「あまり短く」と言ったにもかかわらず、左から右へ刈ってゆくと左右の長さが揃わず、今度は右から左へ刈ってゆくとやはり揃わず…を繰り返したそうである。

しかし手紙を締めくくる次のくだりに、なぜかとても心をくすぐられるものを感じだ。

刈り終ってからロクショウの生えた銅の容器で頭の上に香水をふりかけたが、これはただの水だった。水をふりかけて、それでも櫛でといてくれた。それから僕の女房に、ハンカチを出してごらんと言った。彼女がそれを出すと、今度はホンモノの香水を出してきて、ほれ、いい香りだろうと言って、二滴ほど落してくれた。この安物の香水はしばらく彼女のポケットの中で匂っていた。

北杜夫『どくとるマンボウ航海記 (中公文庫)』P153

ページは1973(S48)年初版の古いものなので改版により変わっている可能性があります。

 

なおこの T は、確か『どくとるマンボウ青春記』中で小説家の 辻邦夫 であることが明かされている。そうすると夫人は、美術史家で名古屋大学・奈良女子大学名誉教授の 辻佐保子 であろう。

 

つい台無しになるような余計なことを言いたがる悪癖がある。引用のため蔵書を読み返したところ、『航海記』中には海外買春を示唆する箇所が実に多いことに改めて気づいた。今日的な価値観からすると、遠洋航海員の性処理であるとか性産業従事者の人権であるとかは、きちんとした議論を踏まえるべきではないかという疑念が湧き、それではどうしたらいいのかと自己反論すると途方に暮れる感覚も同時に覚える。

『ゲド戦記』も『ハリー・ポッター』も『ズッコケ三人組』もまだ書架になかった時代のこと、『どくとるマンボウ』シリーズは学校図書として推奨されていたものの一つであった。

 

香りにまつわるほっこりした思い出、心くすぐられるものを覚える思い出を語ろうとしたつもりが、図らずも台無しになるようなことばかりつけ加えることになった。

だがもう一つ、どうしてもつけ加えておかなければならないことがあるのだった。

google:化学物質過敏症 というものがある。

検索すると、各自治体がHPを公開している。トップにサジェストされた新潟県のページが比較的詳しいようだったのでブログカードを貼ります。

www.pref.niigata.lg.jp

ごく少量の物質にでも過敏に反応し、頭痛、感覚異常、呼吸困難、疲労感などの症状を起こすケースがある。

 

ecoplace さんは香料には過敏ではないがアルコール過敏症をお持ちで、先の引用部中にもアルコールチェックをしたことを書かれいます。

またこちらのエントリーではレジのお客に突然消毒用アルコールスプレーを掛けられたため倒れた経緯を…

www.ecoplace0.com

 

こちらのエントリーでは地下鉄で隣に座った人がアルコール入りの制汗剤を使ったため意識を失った経緯を書かれていました。

www.ecoplace0.com

化学物質過敏症をお持ちの相互さんは、他にもいる。

追記:

かつてのmixiコミュニティのいわゆるマイミクさんがその一人で、化学物質過敏症に対する認知度を上げたいと参加されたデモを報じた新聞記事を、文字起こしして拙過去記事に上げたことがありました。

コメント欄にURLを記しましたが、本文中にもブログカードを追記します。

www.watto.nagoya

追記おわり

 

化学物質過敏症を引き起こす物質は多岐にわたるため、ひょっとしたら塗香や香水だって思わぬトラブルを起こす可能性がないとは言えないのだ。

どうしたらいいのだろう…?

「過敏症はありませんか」と一言尋ねる習慣が、社会に定着すればいいのだろうか? どうやって??

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