しいたげられたしいたけ

人権を守るには人権を守るしかない。人権以外の何かを守ることにより人権を守ろうとする試みは歴史的に全て失敗した

戸田山和久『科学哲学の冒険』(NHKブックス)

自然科学の扱う対象が、果たして本当に「存在」するのか、という疑義に対して明確に肯定的な答えを出すことがいかに難しいかを、自然科学の最も基本的な方法である「演繹」と「帰納」のうち「帰納」の不確かさを入り口に、さまざまな論者の主張を紹介しながら説いてゆく。
実は私は、目に見えない電子というものの実在を疑おうと思えばいくらでも疑えることには、けっこう早くから気づいていたように思う。私が個人的に電子の実在を確信したのは、たぶん大学2年のときに履修した物理学実験によってである。詳しいことは忘れたが、たしか光電効果の実験だったと思う。こういうのは「操作可能性による理論」(p206)に該当するらしい。
逆に言えば「目に見えるものばかりが実在するわけではない」という考えを我々はしっかりと受け入れているように見えて、実は目に見えないものの実在を客観的真実として受け入れることは、大変に困難なことのようだ。言い換えれば「実在」が「目に見えること」といかに強く結びついているかということを再認識するべきだということであろうか。