しいたげられたしいたけ

空気を読まない 他人に空気を読むことを要求しない

浅田次郎『プリズンホテル〈2〉秋』(集英社文庫)

プリズンホテル〈2〉秋 (集英社文庫)

プリズンホテル〈2〉秋 (集英社文庫)

今回の「あじさいホテル」への投宿者は、酒癖最悪という警察署の慰安団体と、ヤクザ御一行、それにマスコミを賑わす指名手配犯に、落ち目の元アイドル歌手とそのマネージャー…この面子が巻のちょうど半ば辺りで勢ぞろいして大立ち回りを演じるというサービス満点の構成である。小物の使い方も、うまいの一言。ミッキーマウスの縫いぐるみと、それともう一品…
しかし…やっぱり例によって私にはそこはかとない違和感が払拭しきれず、心から楽しめたとは言えない。一点だけ挙げれば、暴力団を美化しすぎなんじゃないかな?現実の暴力団がどういう存在かは、交差点で止まっているベンツの尻にでも突っ込んでみればよくわかる。とは言うものの暴力団に関する私の知識も、やはり書物から得たものばかりであるが、例えば安部譲二のエッセイとか、マンガだけど『代紋TAKEⅡ』とか、それから宝島社ムックの『ヤクザという生き方』シリーズとか、『ヤクザが店にやってきた―暴力団と闘い続けた飲食店経営者の怒濤の日々 (朝日文庫)』とかに、よりリアリティを感じる。簡単に言えば「上には絶対服従、下にはやりたい放題」を暴力という手段を用いて実現した完全なタテ社会で、しかも生産手段を持たぬため経済的には「ピラミッド型に上が下を徹底的に収奪・搾取する」構造という。そしてそうしたシステムに反逆を企てると、破門とか回状廻しとかにより徹底的に弾圧される…言ってみればこれはカタギの社会の鏡像にほかならないし、興味深いとも感じられるのだが、係わり合いになりたいとは決して思わない。
仲蔵オーナーにしろ大曽根親分にしろ故・相良総長にしろ、本書に登場するヤクザの大物たちはそのような現実的側面はきれいに捨象されている。
ヤクザが店にやってきた―暴力団と闘い続けた飲食店経営者の怒濤の日々 (朝日文庫)

ヤクザが店にやってきた―暴力団と闘い続けた飲食店経営者の怒濤の日々 (朝日文庫)