人物で語る物理入門 (上) (岩波新書 新赤版 (980))
- 作者: 米沢富美子
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タイトルの通りコペルニクス、ケプラー、ニュートンなど人名を辿りながら現代までの物理学の歴史を追うのであるが、上巻でなんとアインシュタインの特殊相対性理論まで行ってしまう。
下巻は一般相対性理論(アインシュタインはここでも顔を出す)や量子論から、核物理、物性、クォーク理論までの、一般にはあまり名前を知られていないのではないかと思われる人名まで含めて、各分野のパイオニアたちの名前が登場する。
上巻で私にとって印象深かったのは、エントロピーの発見者として有名な熱力学のボルツマンかな。彼の運命は本書の登場人物の中でも際立って悲劇的である。ボルツマンの業績は「原子論」(=原子の実在を前提とする立場)に立って成し遂げられたのだが、彼の活躍した十九世紀後半になっても、原子論は「状況的証拠はあるが直接証拠がないから仮説に過ぎないので受け入れられない」という強固な反対論者があり、ボルツマンは反対論者たちとの過酷な論争を余儀なくされ、ついには自死に至るのである。
下巻ではキュリー母子やリーゼ・マイトナーら女流物理学者は、二十世紀前半に至ってもアカデミズムの世界に頑強にはびこっていた性差別・女性蔑視と闘わなければならなかったという。
「近代」の歴史は、意外なほどに浅い。
追記:はてなキーワードの「リーゼ・マイトナー」の項が間違っている。略歴が彼女の共同研究者オットー・ハーンのものと入れ違っている。