しいたげられたしいたけ

空気を読まない、他人に空気を読むことを求めない

鎌田茂雄『華厳の思想』(講談社学術文庫)

華厳の思想 (講談社学術文庫)

華厳の思想 (講談社学術文庫)

「華厳経」を読んでみたいと思うのだが、なにせ60巻ないし80巻の大部。現代語訳はamazonで調べると『口語全訳 華厳経 全2巻』というのがあるが値段が45,875円!おいそれとは手が出ない。そうすると、ついつい手が伸びるのは一般向け概説書の類である。いつもながら軟弱。
で、本書を読んでみた。期待していたのとは少し違った。「華厳経」自体の解説は第一章だけで、あとは「華厳経」に基づいて成立・展開した「華厳宗」という宗派の歴史や思想の概観である。日本では天台宗と日蓮宗が「法華経」を最重要経典に位置づけているのをはじめ概して「法華経」の影響が色濃いが、中国や朝鮮半島では「華厳経」が優勢で、特に朝鮮半島においては「新羅の建国と発展は『華厳経』によったといってもいいすぎであるまい」(P26)というくらい影響力が強かったらしい。
第三章が「華厳思想の核心」と題されているが、これが難解だった。
華厳宗では、まず仏教全体を小乗教・大乗始教・大乗終教・大乗頓教・大乗円教の5つに分類する(p145)。
この5分類の中で最上と位置づけられている大乗円教においては、あらゆる現象の事物を十種の立場から見る方法ということで「十玄縁起無礙法門」略して「十玄門」というのが出てくる。「十玄門」には「古十玄」と「新十玄」の二種類があるが、一応「新十玄」の方だけを書き写すと…
(1)同時具足相応門
(2)広狭自在無礙門
(3)一多相容不同門
(4)諸法相即自在門
(5)隠密顕了具成門
(6)微細相容安立門
(7)因陀羅網法界門
(8)託事顕法生解門
(9)十世隔法異成門
(10)主伴円妙具徳門
とのことである(p172)。
また華厳思想では真理の領域を「法界」と呼ぶが、これをまた「(1)事法界」「(2)理法界」「(3)理事無礙法界」「(4)事事無礙法界」の4つに分類する(p184)。
これら全ての用語に一応の説明はついているのだが、何度か読み直してもよくわからない。また、何のためにこのような分類を行うのか、このような分類を行った結果何が解決するのかを、著者は語ってくれていない。
ひょっとしたら修行とか宗教的実践を行った心的な成果を、分類・整理したものかも知れない。
本書では、日本における華厳の実践者として、高山寺の明恵上人高弁の名前がよく出てくる。華厳と密教を結合したので「厳密の始祖」と呼ばれているという(p243)。私は最初この人の名前を、法然の浄土宗に対する批判者として知ったのだが、いやはや、お坊さんになるために生まれてきたような人だと思う。求道のために自ら片耳をそぎ落としたエピソード(p230)は『法然対明恵 (講談社選書メチエ)』にも出てきた。
機会があればもっと詳しく知りたい人物の一人である。
口語全訳 華厳経 全2巻

口語全訳 華厳経 全2巻

法然対明恵 (講談社選書メチエ)

法然対明恵 (講談社選書メチエ)