この半月ほどの間に、高齢者を中心に巨額の被害を与えた業者が逮捕されたというニュースが相次いだ。
もちろん業者が悪いに決まっているが、こういうときネットで必ず出てくるのが「自己責任論」すなわち「騙される側にも責任がある」という論理である。
果たして「自分は絶対に悪徳業者の被害に遭わない」と自信を持って言える人が、どれほどいるものだろうか? 私は業者の手口を知れば知るほど、自分がなにかのはずみでコロっと騙されてしまうことがないとは言えなくなる。特にもしメンタル弱っている時に狙われたとしたら…
「はてなブロガー」でもある ロバート・熊(id:robakuma)さんが、こんな本を出版されるとのことだったので、さっそく予約した。
あやしい催眠商法 だましの全手口 身近な人を守るために知っておくべきこと
- 作者: ロバート・熊,にゃんとまた旅/ねこまき
- 出版社/メーカー: 自由国民社
- 発売日: 2018/11/02
- メディア: 単行本
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そうしたら何日かして、こんなメールが来た。品薄になっているのだろうか?
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ロバート・熊 "あやしい催眠商法 だましの全手口 身近な人を守るために知っておくべきこと"
お届け予定日: 2018-11-28 - 2019-01-07
実際には11月下旬まで待たされるということはなく、先週半ばに届いた。
開封。
裏表紙。
表紙。
ただし先週末は遠出していたりしたので、通読したのは今週にずれ込んだ。
内容は全5章だった。ほか巻頭にかわいい絵柄の8Pのマンガが載っており、巻末に「おわりに 催眠商法で働く人間の心理」と題された3Pのあとがきがあった。
第1章 なぜ催眠商法はなくならないのか?
第2章「宣伝会場」では何が行われているのか? 前編
第3章「宣伝会場」では何が行われているのか? 後編
第4章 なぜ通いつづけ、大金を出して買ってしまうのか?
第5章 被害にあわないための対処法
第1章には、はじめ宣伝会場で安いお土産品を配って人を集めることなどが書かれているが、P37~38 にはそうしたお土産品は催眠商法向けの卸の会社があり、そこのカタログから選んでいたと書かれている。
特殊詐欺と同様、催眠商法も産業システムみたいなものができているのか。ということは、それだけ騙される客がコンスタントに出続けているということなのか…?
第2章で、さまざまな「騙しのテクニック」が紹介される。たとえばP89~90、マイナスイオンが出ているという布を見せ、会場に来た客にカレーせんべいをまずそのまま食べさせ、次に布であおいだものを食べさせる。そして「布であおいだ方がマイルドな味になりましたよね」。
セクション末の「だまされないためのポイント」によれば、人間の味覚は後で食べた方をマイルドな味に感じるという簡単なトリックとのことだが、とっさに騙されないことはできるだろうか…?
やはり第2章のP104~105には、客にこんなことをもちかける若い社員が登場する「40万円で10箱も買うのは大変だよね。実は僕も自分の母親に買ってあげようと思ったけど、僕の給料では40万はきついんだよね。だけど半分だけなら買えるから、僕とお母さん(客のこと)で組んで(5箱ずつ)買ってほしいの」。
「だまされないポイント」によると、その若者が本当に半分買うわけではない。そうすると、つまりは「お母さん」が20万円で5箱買ったというだけである…
第3章では、さらにさまざまな騙しの口上が紹介される。
それが純粋に、面白いのである。
例えば P129「毛細血管は、全身にある60兆個の細胞に血液を送り届けています。/とても大事な役割をしているのですが、20歳のころよりも、60歳で40%、80歳で50%の毛細血管が減少することが最近の研究で分かってきました。」
P131~132「霊芝は、約1800年前の中国最古の医薬書に、副作用のない上薬のなかの上薬として別格に位置付けられているのです。/梅の古木の3万本に1本しか見つからない、貴重なものです。/かつては、見つけた人は皇帝に献上することが義務付けられていたほどです。」
P135「全身の血管の99%を占める毛細血管は、年を重ねるとどんどん減っていきます。/霊芝は、失われた毛細血管を修復させる力が最も高いことが分かったのです。/世界の最先端医療で、特に注目をされているのが毛細血管です。/体の中で一番大きな臓器は胃でもなく、腸でもなく毛細血管です。」
それぞれセクション末の「だまされないポイント」で、眉唾な点がきちんと指摘してあるのだが、私は影響されやすいのでトークの部分だけを読んでいて、霊芝が買いたくなったぞ!
えらく大量の文章を引用しているようですが、どれも元の書籍で1ページにも満たない分量です。
本書中で私が最も印象に残ったのは、第4章に登場するふたりの客である。著者も「思い出す度に胸が痛くなる思い出」と書いている。だがその詳細を弊ブログに書くのは差し控える。
代わりにと言うのもおかしいが、第5章 P218~219 で紹介されているクーリングオフの書面は、国民生活センターのHPが出典だから、そのリンクを弊ブログにも貼る。
また P221 で「怪しい」と思ったときには、消費生活センターへの相談が勧められている。以前も弊ブログで紹介したことがあるが、消費者ホットライン電話番号「188(いやや!)」というのの紹介ページへのリンクも貼る。
COLUMN2 消費者ホットライン「188(いやや!)」スタート|消費者庁
追記:
巻頭のマンガは8P中5Pが「ダ・ヴィンチニュース」さんに引用されていましたので、参考までに記事へのリンクを貼ります。でもこんなに引用していいの?(おまゆう>自分
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