💙💛しいたげられたしいたけ

нет войне! NO WAR! 戦争反対!

中国のアンゴラなどアフリカ諸国への援助額・投資額を少し拾ってみた

はてなブロガー 電脳藻屑(id:nou_yunyun)さんが、先週1/13付で次の記事を公開された。言及失礼します。

nou-yunyun.hatenablog.com

右派のツイッタラーが「中国人が帯広市の市営住宅を占拠し生活保護を受けている」というデマをツイートし、当の帯広市が公式HPにそのような事実はないと否定するページまで設けていることを起点に、デマの源流を追跡したエントリーだった。

www.city.obihiro.hokkaido.jp

電脳藻屑 さん記事に貼られているスクリーンショットには「帯広市に1000人の中国人が移住、市営住宅入居率20%、生活保護受給率8%」などと妙に具体的な数字が挙げられていた。

電脳藻屑 さん自らが自治体に問い合わせをされて、こうした数字が根も葉もないことを確認されていることは、率直に評価したいと存じます。

 

1月10日付 および 1月11日付 拙記事で取り上げた佐藤正久参院議員の武蔵野市中国人8万人移住説もそうだったけど、経済的合理性をちょっと考えたら中国に限らずどこの国だってそんな無駄なことするるわけないと、わかろうものだが。

例によって1人月≒100万円のざっくり計算をすると、1,000人を移住させるには1ヶ月あたり10億円のコストがかかるのだが、それで8%が生活保護を受給できたとして割に合うのか?

これまたざっくり生活保護費を月額15万円として計算すると 1,000 × 0.08 × 150,000 = 12,000,000。計算間違いしてないよね? 月々1千2百万円の利益を得るために10億円を投資するなんてコストパフォーマンスの悪いことを、誰がやるってんだ?!

 

いや、コスパ度外視、採算度外視で多額の海外投資をする機関が、ないわけではない。やはり1月11日付拙記事では、故中村哲医師主催のペシャワール会の2020年度年間予算が約5億7千万円であることを紹介した。月額ではなく年額である。

確認のつもりで、さらに2年遡って予算規模を調べてみた。

ベシヤワール会報No.144('20年8月5日)P9によると、'19年度予算規模は約5億1千6百万円…

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/w/watto/20220122/20220122123745.jpg

 

同会報No.140('19年7月3日付)P13 によると、'18年の予算規模は約4億6百万円とのことだった。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/w/watto/20220122/20220122123741.jpg

 

ペシャワール会のパキスタン・アフガニスタン現地法人であるPMSの活動成果は、ペシャワール会報に大量の詳報が掲載されており要約は容易ではないが、一部は ペシャワール会 公式HP中の「現地活動の紹介」にも公開されているので、ご興味を持たれた方はご覧いただけたら幸いです。

「灌漑事業」から、ごくごく一部のみ。

2019å¹´
2月 ガンベリ西部にシギ排水路工事着工。カマⅠ・Ⅱ堰第4次改修完了。PMS方式取水堰の標準設計が確立。
6月 ジャララバード北部穀倉地帯16500ヘクタール、65万人の安定灌漑を達成。

灌漑事業|ペシャワール会 より

 

だが1月11日付拙記事には、NPOではなく国家間プロジェクトや国際ビジネスであれば、PSMはもとより帯広市や武蔵野市に関する虚妄を、はるかにしのぐ予算が投入されているだろうとも書いた。帯広市のことは書いてないか。

それらは具体的にどのくらいの額か、調べられないかと思った。

簡単に見つかった。そして二重の意味でそら恐ろしくなった。

一つ目は、中国がアフリカに効率のいい投資を行って巨額の資源権益と貿易利益を享受しているという事実がゴロゴロと見つかったことに対して、二つ目は、日本のネトウヨがそうした現実を認識せず根拠のないデマを触れ回っていることに対してである。透けて見えるんだよね、帯広市のほうは生活保護を叩きたい、武蔵野市のほうは非自公の首長を叩きたいという本音が。

短く言えば、「合理的な敵」は恐ろしい。「非合理的な味方」はもっと恐ろしい。

 

十年ほど前に、アフリカの成長が著しいと伝えられたことに興味を持って新書本など一般向け書籍を何冊か読んだことがあったのだった。10年以上にわたって10%近い経済成長率を維持している国が、アフリカ大陸には少なくないそうだ。

そのうち何冊かはマイ書評と称して自ブログの過去記事にアップしたが、平野克己『経済大陸アフリカ』 (中公新書) という本も持っていて、この本は自ブログ検索したところまだ記事にしていなかった。

2013年初版でもはや新刊とは言えず、記載されているデータは2000年代のものが多いが、それでも wikipedia:アンゴラ に載っているデータと鮮度はさほど変わらないように見える。なんでアンゴラかというと、これからアンゴラの話をします。詳しさはウィキペとは雲泥の差である。よく言われることだがウィキペに頼りすぎはよくないと改めて反省した。

 

『経済大陸アフリカ』は第1章が「中国のアフリカ攻勢」と題されてまるまる中国のアフリカ諸国への関与が論じられている。

具体的な数字が載っている部分を、抜き出してみた。

≪前略≫中国輸銀のアフリカむけ融資が最初に世界の耳目を集めたのは、二〇〇四年に締結された対アンゴラ二〇億ドル融資契約だろう。当時のアンゴラのGDPは一六〇億ドルにすぎなかったから、これはたいへんな額だった。

≪中略≫

その後中国輸銀の融資枠は四五億ドルに拡大され、中国開銀からも二二億ドルの資金が提供された。内戦時代のアンゴラはソ連の支援をうけていたので当時の中国は国交をもたなかったが、いまやこの国は中国にとって不可欠の原油調達先になっている。

『経済大陸アフリカ』 P20 より

アンゴラも、経済的飛躍をとげたアフリカ諸国のうちの一つである。

 

2004年当時のドル-円レートは検索すると1ドル≒106円ほどのようだがこれも簡単のため1ドル100円と近似すると、20億ドルというのはPMS年間活動費の約400倍である。

いらんことだが 1月11日付拙記事 にて冗談で計算した中国人8万人を武蔵野市に3ヶ月間駐在させるコストと、奇妙に一致する。もちろんただの偶然である。

広さの単位としての東京ドーム、税金ムダ遣いの単位としてのアベノマスクみたいなもので、PMS活動費を比較対象とすると単なる数字だけよりがぜんイメージが広がるような気がするのは私だけ?

追記:

そういえばアベノマスクに費やされた予算はいくらだったかと思って検索した。

未使用分だけで TBSによると8000万枚以上、約112億円分、NHKによると8130万枚、113億円相当 との由。保管料はいずれも年間約6億円としていた。

未使用分相当額だけでペシャワール会22年分以上の活動費をまかなえ、保管料はペシャワール会年予算を上回る。1月11日付拙記事に書いた通りペシャワール会現地法人が灌漑事業を始めたのは2003年からだから、過去から未来までの事業費を満額まかなってお釣りが出る。

冗談言ってる場合じゃなくて、真剣に腹が立ってきた。

追記おわり

 

もちろんこうした投資は、1年限りのものではない。このような先行投資の結果、中国がどのような利益を享受するに至ったかは、次のwebページが詳しかった。霞が関会というのは、外務省および在外公館の在職者とOB・OGの親睦団体だそうだ。

www.kasumigasekikai.or.jp

同ページ中に示された円グラフによると、2020年の原油輸出総額約183億ドルのうち全体の約71%が中国向け、同年の輸入総額約95億ドルのうち約15%が中国から、2021年上半期時点での公的対外債務残高約505億ドルのうち対中国が約43%とのことだった。

ところで原油だけの輸出総額が約183億ドルで輸入総額が約95億ドルって、貿易収支めっちゃ良くない?

追記:

「2020年原油輸出先国内訳」と「2020年輸入相手国内訳」の円グラフを引用させてもらおうかな。引用の4要件に配慮しているつもりだけど、怒られたら消します。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/w/watto/20220122/20220122194732.jpg

(中国特集)アンゴラから見た中国 – 一般社団法人 霞関会 より

追記おわり

 

『経済大陸アフリカ』に戻って、P33によると「二〇〇五年にロシアからの原油輸入を凌駕して以来アンゴラは、中国にとってサウジアラビアに次ぐ第二位の原油供給国でありつづけて」いるそうである。

 

巨大な人口を抱える中国が経済成長を続けるためには、石油のガブ飲み、資源のドカ食いが必要である。『経済大国アフリカ』第1章には、アンゴラともども南アフリカ共和国に関する記述も多い。

2011年に中国国務院報道弁公室が発表した『対外援助白書』によると…

≪前略≫総累計がおよそ三七七億ドル、対アフリカは一七二億ドルになる。ちなみに二〇一〇年における日本のODAディスパース(実際の支出)額は一八八億ドルで、うち一九億ドルがアフリカむけであった。またこの年の対アフリカODA世界総額は四七八億ドルで、最大ドナーはアメリカ(七八億ドル)である。

『経済大陸アフリカ』P22

投資については、商務部がだしている国外直接投資(FDI)統計によると、二〇〇八年の対アフリカ投資フローはおよそ五五億ドルであった。

同

アフリカのなかでは南アフリカが四八億ドルで突出しており、前年前々年にくらべて一〇倍以上にのびている。≪中略≫一方この年の対アフリカFDIの世界総額は七二二億ドルで、対南アフリカFDI総額が九〇億ドル、日本については対アフリカが一五億ドルで対南アフリカは六・五億ドルだった。

同 P22

マンガン鉱、クローム鉱、プラチナといった鉱産物では南アフリカに依存している。そのほかにもじつに多くの資源をアフリカにあおいでおり、アンゴラやザンビアの例がしめすように現地での生産にも中国は直接関与している。中国経済の成長を維持するための、まさに国益がかかった貿易関係である。

同 P33

ザンビアに関してはP10に「一九九九年には中国有色金属工業総公司がザンビアの銅鉱山に進出した」という記述がある。

同書第1章中には日本の名もチラ出し中国の1割を上回る投資額が見えるなど健闘しているようだが、それにしてはアフリカにおける日本のプレゼンスが目立たないのはなぜだろう?

 

いつも感じるのだが、書籍の情報量の多大さに比べてブログ記事それの貧弱さよ(私のだけ?)。

『経済大陸アフリカ』からは、これでもまだ2ページ分ほどしか引用していないが、ページをめくるたびに引用したい箇所が次々と出てくる。

P30「一九九九年にアフリカ全体で五万人といわれた中国人在住者は、二〇一〇年末には一〇〇万人に達したともいわれ、南アフリカだけでも三〇万人の中国人が生活していると推測されている」とか。

本気を出したらつか経済的利益があるとわかったら、現実は帯広市1,000人移住デマ、武蔵野市8万人移住虚妄どころの騒ぎではないのだ。逆に言えば、投資先として現在の日本にそれだけの魅力がないことを嘆くべきではないのか?

 

新しめの本として、1月11日付拙記事にブログカードを貼った 東洋経済オンライン記事「アフリカを侮る日本人が知らない超激変のリアル」のタネ本だという椿進『超加速経済アフリカ―LEAPFROGで変わる未来のビジネス地図』(東洋経済新報社) も読んでみたくなったし、アフリカ経済や中国とアフリカ諸国の関係については、息長く現状を知る情報収集を続けなければとの必要を感じる。

少なくともSNSで「中国が日本の土地を買い占めている」みたいな言舌を見かけたとき、解毒剤用のコピペに使えそうである。