まず初めに、ロシアのウクライナ侵攻に対して強く抗議します。
今回の事変に対しては、現地からの情報や専門的知見を有する人の解説が多数発信されているから、素人が個人ブログに何か書くことはノイズにしかならない。
しかしSNSの相互さんから「世界大戦が始まっちゃうんでしょうか?」という質問を受けたことがあった。同様の不安を抱いている人がいるかも知れないから、個人の見解ではあるが相互さんへの返信を自ブログのエントリーとしてまとめてみる。
未来を予測することは極めて困難だが、歴史に類例を探してその行く末を予想することなら可能かもしれない。
結論を先に書くと、私は世界大戦が始まることはないと思う。
ロシアの暴挙に関しては、ツイッターの私のタイムラインでは旧日本軍による満州事変と「満州国」建国との類似を指摘している人が多かった。私事だがちょうど保阪正康[編著]『太平洋戦争への道 1931-1941』(NHK出版新書) という本を読んでいるところでもあって、当初、私もそう思った。
この本はこの本で、極めて興味深いと思う。例えば満州事変一つとっても、暴走した現地責任者たちと追認した東京政権の首班の、それぞれの名をきちんと記している。責任の所在のあいまいさは、現在の日本との相似を強く感じさせる。だがそれに関しては別にエントリーを起こすべきであろう。
むしろ歴史に類例を探すとしたら、旧ソ連による…
1956年 ハンガリー動乱
1969年 プラハの春(チェコ事件)
1978年 アフガニスタン侵攻
等のほうが、未来予測と日本への影響をはかる上においては適切ではないだろうかと思った。
ロシアの最終目的は、ウクライナに自国寄りの政権を強制的に打ち立てることだと衆目が一致している。これらの事変も、そうした性質のものだった。
また政策の決定に強権的な独裁者が介在していることも、集団的無責任体制と言われた戦前日本よりは相似性を強く感じさせる。
ヨーロッパや米国のウォッチャーたちは、真っ先にこれらの事件を思い出したのではないだろうか。そして当のロシア人たちも。
ウクライナの情勢が今後どう動くかはわからないが、これらの国々において旧ソ連が自国に都合のよい政権を打ち立てるという目論見は、短期的には成功したと言えなくもない。だが長期的には失敗だった。
1989年のベルリンの壁の崩壊に始まる東欧革命で、旧東側陣営の諸国は一斉に旧ソ連の支配下から脱し、旧ソ連もそれから3年後の1991年に崩壊、解体された。
ハンガリーもチェコも、今はNATO加盟国だ。
武力で他国民を思い通りにさせることは、ズバリ不可能だったのだ。
失敗したという点においては「満州国」も全く同じではあるが。
ハンガリー動乱やチェコ事件のときの旧ソ連のサイズに比べ、現在のロシアは小さくなった。またウクライナの人口と面積は、ハンガリーや旧チェコスロバキアよりずっと大きい。さらに旧東側陣営の諸国(ワルシャワ条約機構加盟国)も派兵を強いられたが、今回ロシアと軍事的に協力している国はベラルーシただ一国である。
未来を予測することは困難だがagain、ロシアの目論見は必ず失敗すると私は見ている。
もし首都キエフの占拠に成功したとしても、十年単位の長期的視点で見ればロシアが軍事侵攻に割いた労力は徒労に帰すこと確実であろう。
もし占拠に失敗したらそれがプーチン政権の終焉に直結するであろうということは、何人もの人が指摘している。
というよりプーチン始めロシアの現指導者たちは、前述の歴史的変動を直接に体験しその結末を知らないはずないのに、また詳細に関する知識も私なんぞよりはるかに多いはずなのに、なぜこんな暴挙に出たのかどうしても理解できない。
何のためにロシア、ウクライナ双方で多くの人命が失われなければならないのか? 多くの人が傷つかなければならないのか? 何のために多くのウクライナ人が住み慣れた土地を離れなければならないのか?
最初の質問への回答に戻るが、過去のハンガリー動乱、プラハの春、アフガニスタン侵攻に際して、日本国内への影響は決して軽微だったとは言えないが武力紛争に巻き込まれるほどに深刻なものではなかった。今回も過剰に心配することはないと私は考える。
ただし…
戦争反対!
ロシアはウクライナからただちに手を引け!
ということは、微力極まりないが発信し続けなければならないと思っている。
SNS相互さんには、だいたいそんなことを伝えた。それで安心してもらえたかどうかはわからない。
もう一言、相互さんはガソリン価格の高騰が続くことを心配しておられた。
小麦価格が高騰するであろうというニュースも伝えられている。検索すると2021/22年の数字でロシアは小麦輸出量世界1位、ウクライナは世界6位だそうだ。
ロシアに対する制裁として、国際的な金融決済手段であるSWIFTからの締め出しが検討されているという。「経済制裁の最終兵器」とまで言われる強力な制裁ではあるが、SWIFTに参加している日本を含む諸国もまた取引停止による影響を受けざるを得ないという。
つまり日本も、まったく無傷というわけにはいかないようだ。
追記:
プーチンは、自らを大統領に押し上げたチェチェン紛争における成功体験に突き動かされたのだろうか? だとしても、あまりにも愚かな…「成功体験に拘泥することは破滅への道」というのは、言い尽くされたことなのに。
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